日本時間の10月7日午前8時頃(欧州時間では真夜中!)、ポンドが突然に急落しました。直前には1ポンド=1.2613ドルだったのが、たった数分間で1ポンド=1.1491ドルまでの下落を見たのです。英国に何があったのか!? 刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が、歴史や政治のバランスを紐解きながら、ポンドの行方を分析します。
わずか数分間で6%以上の急落に衝撃
英ポンドに何があったのか!?
ポンドの下落が止まりません。10月7日に最安値1ポンド=1.149ドルを付けたあと瞬間的に反発を見せましたが、翌日以降も下落は止まらず、現在は1ポンド=1.22ドル付近で推移しています(10月14日12時現在)。これは1985年2月にレーガン大統領が「強いドル」政策を掲げ1ポンド=1.05ドルまで下落して以来、実に31年ぶりの安値水準です(ちなみにこの時は日本円も1ドル=260円台まで急落しました)。
10月2日にメイ首相は「2017年3月末までにEU離脱を正式に通告する」と表明しました。メイ首相は離脱交渉で移民制限策とEU市場に参加継続する「いいとこどり」を目論んでおり、対してフランスのオランド首相はEUの結束を強めるため厳しい対応を求めています。また、メイ首相は10月5日にイングランド銀行の超低金利政策について「悪い副作用がある」と述べました。
マスコミ等ではこうした出来事が今回のポンド安の原因と解説されていますが、7日の急落とはタイムラグがあり、いずれも「後講釈」にすぎません。直接のきっかけは誤発注・誤作動の類(たぐい)であった気がしますが、6月23日の国民投票でEU離脱が決定したときに「プラザ合意」以降30年間続いた大きなレンジを突き抜けており、こうした急落はいつ起きても不思議ではなかったのです。
メイ首相の言動で市場心理は売り加速
当面ポンドが上昇する気配はない
EU離脱の具体的方法論やスケジュールは内閣の管掌としても、メイ首相がイングランド銀行の金融政策に口を挟んだことは明らかに勇み足でした。少なくともこの発言でポンド安が一時的にも止まったようには見えず、市場心理をポンド安に傾けてしまったことは事実です。今後もヘッジファンドなど投機筋に(ポンド売りを)狙い撃ちされる恐れがあります。
思えば1992年9月のポンド急落も、当時のラモント蔵相の不用意な発言がきっかけでした。「100億ポンドでも買い支えるぞ」と言ってしまったため、ソロスなどにきっちりそれだけ売られてしまい、白旗となりました。口が災いするのは英国の伝統でしょうか。
さらに今回の急落で、日本のFX取引など短期的な投機ポジションは大怪我を負っています。この先しばらくは「ポンド買い」の投機ポジションが集まりにくく、ますますポンドが上昇しにくい環境が出来ています。チャート的にも1985年2月の1ポンド=1.05ドルまで全く抵抗ラインがなく、そう遠くない時期にそこに到達する可能性も出てきています。
対円ではまだレンジ内に収まっているが、
来年は1ポンド=100円に接近する可能性あり
日本円に対してはどうでしょうか。本原稿執筆時(10月14日12時現在)では1ポンド=127.11円となっています。ドル円は1ドル=103.90円なので長期的には円高とも円安とも言えない中で、ポンド円は1995年の超円高(1ドル=79.75円)時の安値1ポンド=128.21円よりもすでに円高ポンド安になっています。
逆に、その後に最円安(1ドル=125.86円)となった2015年6月のポンド高値は1ポンド=195.83円です。来年にかけて1ドル=90円台の円高が来るなら(時期はともかくそう考えています)ポンドもその下値を突破し、1ポンド=100円に接近する可能性があります。
英国はロンドン(シティ)の銀行・金融仲介・運用機能と、旧英国領のオフショア・金融センターの秘匿性が吸い寄せる国際通貨・ドルとユーロと(少しの円)が生み出す巨額収益で潤ってきた「他人の財布で稼ぐ国」です。欧州経済も不振でありポンド安でもインフレになる心配はなく、またポンド安となればドルやユーロが落とす収益がますます膨らみます。英国は容赦なくポンド安をEU離脱交渉の「有力な武器」として使うでしょう。
考えれば考えるほど、この先に見えるのは「もっとポンド安」なのです。
今後のポンド円の動向、またドル円の動向については、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』で配信していきます。
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