元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。
今回の放送では、中国発の格安AI、DeepSeekがアメリカのAI業界にもたらす影響を徹底議論! NVIDIA株は大きく下げたけれど、メタなど他のAI関連株はむしろ上昇しているところもあるとポールさんは指摘。DeepSeekの登場はアメリカにとっていい面もあるようなので、さっそくチェックしていこう。
DeepSeekの登場はアメリカにとって目覚ましとなり、緊急性を出すことになる
番組は、中国の格安AI、DeepSeekの登場で、1月27日(月)にアメリカのハイテク株関連株が売られたことをどう見ているのか、アシスタントの木村カレンさんがポールさんに質問するところから始まった。
DeepSeekは、アメリカのOpenAIが何十億ドルもかけて作ったAIを、600万ドルくらいで作ったとポールさん。それが本当なら、NVIDIAなどテクノロジー会社の設備投資のニーズが大きく下がりそうとの思惑から、NVIDIA株が大きく下がったようだ。
もっとも、AI関連株の中でもソフトウエアの会社はそこまで株価は下落せず、メタなどはむしろ上昇したそう。
これらのことから、NVIDIAのチップなどハードがそこまで必要なくなるのではということで、マーケットがパニックし始めたようだ。
すると、番組MCの渡部一実さんが、AIの話はすぐに結論が出る話ではないと前置きしたうえで、「DeepSeekは本当にブレイクスルーなのか、それともメタなどアメリカのAIのオープンソースを少し改良したものなのか、そのあたりはどう見ていますか?」と質問した。
DeepSeekはメタなどのオープンソースを改善して、安くいいものを作れたということで、AIの普及が早くなるという点ではいいことだし、実際にブレイクスルーはあったとポールさんは見ている。
その一方で、600万ドルと何十億ドルの差があまり大きすぎるため、DeepSeekに対してアメリカがどこまで後れを取ったかは少しクエスチョンマークだとも語った。
これに対し渡部さんも、これから始まるビッグテックの決算発表で、中国製の安いAIが出てきたからといって、アルファベットやマイクロソフトのCEOが、これまでの巨額のAI投資を見直すとは言わないのではと推測した。
ポールさんも同様の意見で、DeepSeekはアメリカとほぼ同じものを安く作れたが、アメリカがさらにいいもの作りたくなくなるわけでもないとコメント。
AIの発展はまだかなり初期段階で、これでストップするわけではないし、アメリカのエンジニアたちもDeepSeekのブレイクスルーを利用して、さらに強いモデルを作れる可能性もあるそう。
また、AIは質問を答える際、推理するのにGPUの処理能力を使うため、最新のハードの必要性は引き続きあるようだ。
そして、今までのテクノロジーの進化の中で、もっといいやり方ができたから、一番のパソコンはもう要らないという話は見たことがないとポールさん。
食べ物は1日3食、車は家に何台かあれば満足できるけど、テクノロジーや知能に関しては、新しいことができるようになれば、それによる新しい需要が出来てくるため、ある意味無限な需要が残っているとも言えるのだという。
「それでは、中国とアメリカのAI競争はこれから本格的に始まるという見方でいいですか?」と渡部さんが問うと、ポールさんは「アメリカは今、スプートニクショックのように例えられている」とコメント。
スプートニクショックとは、ソ連が1957年に人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げを成功したことで、アメリカを始めとする西側諸国が受けた衝撃や危機意識のこと。
人工衛星でソ連が先んじたからといって、当時のアメリカが人工衛星に投資しなくていいとはならなかったし、DeepSeekの登場はアメリカにとって目覚ましとなり、緊急性を出すことになるため、いいことだとポールさんは捉えている。
トランプはアメリカの強みをできるだけ生かしたい。AIは重要な分野で、中東より生産量が多い石油も強み
続いて、トランプ政権のスターゲイト計画の話題に。
トランプ米大統領がソフトバンク、オラクル、OpenAIによるスターゲイト計画を発表して、そこに入れてもらえなかったイーロンマスクが冷ややかな対応を見せているけれど、スターゲイト計画をポールさんはどう見ているか、渡部さんが質問した。
イーロンマスクは自身でAIのプロジェクトを行っており、スターゲイト計画に入れてもらえなかったのは、少しヤキモチだと思うとポールさん。
また、トランプはアメリカの強みをできるだけ生かしたいと考えており、AIを重要な分野として注目しているほか、石油の生産量が中東より大きいことも強みだと考えているとのこと。
トランプは石油を掘ってエネルギー価格を抑えることで、食品や工業全体のインフレも抑えることを狙っており、トランプ支持者が石油生産地域に多いことも、石油を掘りたい要因の1つとのこと。中長期の地球温暖化の問題はそこまで意識していないのだという。
トランプは急なことをやるため、人のマインドやセンチメントが不安定になる。ある程度分散投資する必要
最後は、今後のマーケットで注意しておくべきことの話題に。
ポールさん曰く、トランプは急なことをやるため、人のマインドやセンチメントが不安定になることから、ある程度分散投資する必要があるそう。
今回のDeepSeekの話でも、NVIDIAだけ下落して、メタなど他のAIのテーマの銘柄はむしろ上昇したところもあったし、ビッグテックの決算発表時に設備投資は減らさないと表明すれば、株価は戻ってくるだろうから、リスクも大きいかもしれないけれど、チャンスも同時にあるようだ。
現在の環境は投資家としては楽しい時代で、勉強もしなければいけない時期だと思うとポールさんは結論付けた。
ここまで、1月28日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年で100%近い上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。また、動画配信も予定しているので、こちらも注目だ。