日米の株式市場は低迷。米国は深刻で下げ過ぎ感ありも反発の兆し見えず
米国市場が冴えない。日本市場以上に不振に陥っている。中国の新興AI企業DeepSeekの台頭をきっかけに米国のAI開発投資に一巡感が出てきているとの見方から半導体株やハイテク株の下げが続いている。そして、トランプ関税発動による米国経済や世界経済への悪影響が日に日に警戒されつつある状況だ。NYダウは3月13日に4万813ドルを付けて高値4万5014ドルから9.3%安、S&Pは5521と高値から10.1%安、ナスダックは1万7303ポイントと高値から14.3%の下落率を記録。「AI株ブーム」の不透明感と「トランプ関税」への警戒感。短期的には「下げ過ぎ」の感はあるものの、反発力はいまだに弱々しいままだ。
一方、日本市場はどうか。日経平均株価は3月13日時点で高値から12.9%安の3万6790円まで下落したが、3月26日には1カ月ぶりに3万8000円を回復。昨年10月からのボックス圏3万8000円~4万円の下限を回復した。TOPIXに至っては2813ポイントまで上昇し、ボックス圏の2600~2800ポイントの上限値を上回り、あと4%上昇すれば昨年7月11日の最高値2929ポイントを達成する。日経平均とTOPIXの銘柄の構成比率が異なるのはご存知の通りだが、いわゆる時価総額ベースでマーケットの実態を表すTOPIXが高値圏まで来ているのは注目に値する。
トランプ関税がヒートアップ。全輸入自動車から25%の追加関税を徴収
トランプ関税に話を戻そう。1月の大統領就任当初こそハードな政策は打ち出さず穏便だったトランプ氏だが、どんどんギアが入ってヒートアップしている。3月26日には全ての輸入自動車に対して25%の追加関税を発表。「なるほど。米国の自動車メーカーを守る戦略だな」などと呑気に思っていてはいけない。米国に入って来る全ての自動車が対象だ。GM(ゼネラル・モーターズ)が米国で販売している自動車の49%、フォード・モーターは20%がメキシコやカナダから輸入している自動車なども対象になるのだ。要するに、自動車メーカーは米国企業、非米国企業を問わず一網打尽に25%の追加関税がかけられる。
米国内で関税がどの程度販売価格に転嫁されるかは不明な点が多いが、5000〜1万ドルの価格上昇要因になるのではないかとみられている。日本円にすると75万円~150万円程度。決して小さくないインパクトだ。新車を買えない消費者たちは価格の安い中古車を買わざるを得ず、新型コロナ禍の時に見られたような「中古車価格が高騰する」可能性が生じている。自動車関税が発表された翌日、GMは7%安、フォードは4%安となった。完成車だけでなくエンジンやトランスミッションなどの自動車部品も関税の対象となり関連メーカーの銘柄も売られた。
米国はインフレと経済後退が同時に進むスタグフレーションに陥ると懸念
価格上昇によるインフレ圧力、そして消費低迷による経済後退。同時に進むことをスタグフレーションと呼ぶが、今、米株式市場では「スタグフレーションを招くのではないか?」との話題で持ちきりである。ウォール街では弱気派が増えており、年末におけるS&P指数の見通しを引き下げる例が相次いでいる。
一方、日本の自動車メーカーへの影響を考えてみよう。「勝者のポートフォリオ」におけるコア銘柄の1つであるトヨタ自動車(7203)を取り上げる。トヨタは関税による悪影響が比較的小さい。米国で販売する自動車の5割近くを米国内で生産しているためだ。トヨタの営業利益へのインパクトは15%程度減ると私は見ている。だが、御多分に漏れず株価は売られる展開になっている。トランプ関税が収益悪化をもたらすだけでなく、米国の自動車市場そのものが縮むとの予想が出ているためだ。25%の追加関税が新車販売価格にそのまま転嫁された場合、自動車価格は平均で8%上昇し、新車販売台数は12%減少するとの民間試算が出ている。関税そのものが米国の新車販売市場に悪影響を及ぼすというものだ。ダブルパンチを受けるという見方だ。
トヨタ自動車(7203)への影響は? 株価は最悪シナリオを織り込み済み
「国内車産業13兆円に打撃」―。3月28日の日経電子版に「対米の自動車輸出がゼロになり国内生産が減少すると13兆円の経済価値が吹き飛ぶ」「2024年の訪日外国人消費額の1.6倍に相当する」と解説されていたが、あまりにも荒唐無稽な前提で記事が書かれているのでさすがに私は嗤った。バイアスのかかった極論で読者を驚かせたいらしい。起こりもしないことを記事に仕立て、それを見出しするのはいかがなものか。良識を疑う。
閑話休題。トヨタの場合、外部環境が悪くなければ年間5兆円の営業利益を稼ぎ出す力がある。トランプ大統領は今回の追加関税を「恒久的措置」と言っているようだが、非現実的な考え方だと思う。強烈な関税が基幹産業でずっと続くはずがない。今は失望を織り込んでいる状況にありトヨタのPERは9倍。仮に2割程度の減益が起こったとしてもPERは11倍程度。通常のバリュエーションの範囲内である。要するに最悪シナリオはもはや株価に織り込まれている状況にある。逆に言うと最悪シナリオが是正されればアップサイドが大きいということだ。
システマティックリスクによる急落は有望銘柄を安値で仕込むチャンス
先週のマーケットは再び米国発のシステマティックリスクに振り回された展開と言える。トランプ関税や半導体規制は流動的な面が強いため、これを材料に大きなポジションを持つことは極めて危険だ。「勝者のポートフォリオ」でもネガティブな影響を受ける銘柄を保有しているが至って冷静である。「大きく下げたらむしろ買いチャンス到来」と考えている。気持ちの面ではいつも余裕である。「ドカンと急落してくれないかな?」というのが本音である。
3月14日金曜のメジャーSQにおける「幻の安値」は3万6483円。これが短期的な下値メドだ。今週以降、売り方の仕掛け売りでこのラインを下に突き抜けても心配無用である。むしろ「チャンスはピンチの顔をしてやって来る」と捉えていただきたい。システマティックリスクが思わぬ安値で買える機会をいつも提供してくれることを忘れないでいただきたい。
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。毎週のメルマガ配信による運用の指南だけではなく、2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。
「勝者のポートフォリオ」で個別銘柄の株価をスコア化する手法を学ぼう
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そして、スペシャル講義ではいよいよアンシステマティックリスク、すなわち個別銘柄リスクに関する詳細な講義をスタートした。第2弾は「個別銘柄の株価の動きをスコア化する」「グロース株vsバリュー株の評価ポイント」。すでに講義動画をアップ済みである。
「個別銘柄の株価の動きをスコア化する」においては、株価がSリスク、USリスク、Mサイクルの3つの要因、さらにそれぞれが包含する多くの要素によって株価が動いていることを理解するのが目的である。スコア化することによって、常に泰然自若の投資家になっていただきたいと考えている。「グロース株vsバリュー株の評価ポイント」では、それぞれのカテゴリーにおいて投資の評価軸が異なることを再確認していただくのが目的。混同している方々が多いため詳しく解説している。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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