アメリカがイランのウラン濃縮施設を爆撃
2025年6月、トランプ大統領はイランのウラン濃縮施設への爆撃を命じました。
本人は「成功だった」と主張していますが、被害の全容やその深刻度についてはまだ確認されていません。とはいえ、イランの核開発計画が遅延したことは確実です。
そして、今後もイランの核開発計画の進行をもしも抑えようとするなら、継続的な攻撃が必要になるでしょう。
アメリカがイランを攻撃しても株式、為替、原油価格など金融市場の反応は限定的
注目すべきは、金融市場の反応が非常に限定的だった点です。
S&P500は小幅な下落にとどまり、円相場もそれほどは動きませんでした。


原油価格は一時的に急上昇したものの、その後、大きく下落しました。
アメリカによるイラン攻撃の前には、イスラエルがイランを攻撃し、イランが反撃するということがあったわけですが、原油価格は最初のイスラエルによるイラン攻撃前の水準ぐらいまで下がっており、今は落ち着いた動きになってきています。

また、アメリカは現在、石油の純輸出国となっており、かつてのように原油高が経済に与える影響は小さくなっています。
戦争拡大は考えにくく、最終的には外交交渉に向かう可能性が高い
また、アメリカ国内では戦争に対する否定的な世論が根強く、トランプ大統領自身もエスカレーションを望んでいないと見られます。
アメリカとしては戦死者の発生を避けたい意向があり、イラク戦争のような地上戦への拡大は考えにくいでしょう。一方で、イラン側にも明確な勝ち筋はないと見られます。
今は停戦に向けた情報が出てきつつも、その内容が錯綜しているような状態ですが、最終的には外交交渉に向かう可能性が高いと考えられます。
ロシアや中国がイランの件に軍事的介入を行う可能性は低い
さらに、ロシアや中国はイランとの関係は主に経済面が中心ですので、この件に軍事的介入を行う可能性も低く、地政学的リスクが中東以外に波及する懸念も現時点では小さいと見られます。
むしろロシアは、この隙を利用してウクライナ戦争で有利に動こうとするかもしれません。また、中国はこの機会を利用して、アジアなどでの中核的な利益、たとえば台湾などについて、有利な方向へ持っていこうとすると思います。
トランプ政権が掲げるスローガンに反するようなイラン攻撃だが、投資の観点からは「ノイズ」に過ぎない。一時的に売られた優良銘柄があれば買いの好機
総じて見ると、今回の件は、トランプ政権が掲げる「アメリカ・ファースト」(アメリカ第一主義)という孤立主義的な傾向や「MAGA」(Make America Great Again、アメリカ合衆国を再び偉大な国にする)のスローガンからしてみれば、方針転換とも言える動きです。
しかし、投資の観点からは今のところ「ノイズ」に過ぎないというのが妥当な見方でしょう。
むしろ、今回のニュースで一時的に売られた優良銘柄があるなら、それは買いの好機と捉えるべきです。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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