ジャクソンホール会議の議長講演を警戒し、先週の株式市場は停滞ムード
8月に入って日米の株式市場の上昇が加速する中、先週はやや停滞気味の動きとなった。理由は明快だ。8月22日金曜23時(日本時間)からジャクソンホールにおいて米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の講演があり、マーケットに大きな影響を及ぼす可能性があることから様子見ムードが漂った。
ジャクソンホール会議は、毎年8月下旬にカンザスシティ連銀主催で3日間にわたり米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるシンポジウムのことであり、主要国の中央銀行の総裁や幹部、経済学者らが集まって様々な議論が交わされる。FRB議長の講演も恒例行事となっており、FOMC同様に世界中のマーケット関係者が注目するイベントである。
毎年「何かが起こる」ジャクソンホール。3年前の2022年にはわずか8分40秒の演説でパウエル議長が「やり遂げるまでやり続けなければならない」とインフレ退治の利上げを継続する決意を表明。2023年早々にも政策金利は低下するとのノーテンキな楽観相場に警鐘を鳴らし、タカ派的な姿勢を鮮明にしたことでマーケットは急落。「逆金融相場」の流れが強まった。
昨年の会議でパウエル議長は「時が来た」と発言し、「金融相場」に突入
昨年の2024年は「時が来た」とパウエル議長は発言。「物価目標2%の達成への自信が深まっている」と明言した。マーケットは急騰し、同年9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において4年半ぶりとなる利下げがスタートして「金融相場」に突入した。
本稿を書いているのは8月21日。パウエル議長講演の前日だが、今回もかなり注目されている。なぜなら今、マーケットは9月のFOMCで利下げが行われることを前提に楽観的な動きとなっているからだ。もしパウエル議長が期待を裏切るような発言をすれば「パウエル・ショックが走るかも…」との警戒が広がっている。皆さんが本コラムを目にする時には結果が出ているわけだが、あまり神経質になる必要はない。短期的にはネガティブ要素になったとしても、中期的な目で見れば「どうでもいいこと」だと私は思う。年内に利下げされることは確実な情勢であり、今年に入ってまだ一度も利下げが行われず、中休みだった「金融相場」が本格的に動き出す大きなカタリストになるからだ。
信用取引の売り残高が急増中だが、金融相場での逆張りは危険行為
そうした相場環境において注目すべき点が今回のテーマである『信用売り残が急増中』である。証券会社から株を借りて売る信用取引の売り残高は8月15日時点で1兆1051億円。前週から1割増えて6年ぶりの高水準に達した。日経平均株価とTOPIXが揃って最高値を更新した状況を「もう割高だ」「そろそろ下がるだろう」と考えての投資行動であるが、私に言わせれば『金融相場での逆張りは投資家にとって危険行為だ』ということになる。
FRBの利下げ再開で株式市場はこれから大きな追い風が吹くのは目に見えている。信用売りの膨張は将来の買い戻し需要につながる。弱気に傾く投資家が「日本株の強さを裏で演出する」というわけだ。過去にも信用売り残が1兆円を超えたタイミングでピークを迎え、株高に弾みがついた厳然たる事実を今信用売りしている個人投資家たちが知っているのかどうか甚だ疑問である。別に知っていなくてもいい。ロングの投資家にとっては朗報だ。株式市場での意外高を生みやすい状況であり、売り手が諦めて買い戻しに走ればさらに上昇に弾みがつく。
ソフトバンクグループ(9984)の信用売り残は8月15日で575万株と高水準
個別銘柄で見ると最も極端な事例がソフトバンクグループ(SBG、9984)である。信用売り残は急速に膨らんでいる。8月15日時点で575万株と日経平均採用銘柄で6番目に多く、前週から4割増えて2年8カ月ぶりの高水準に達した。業績は絶好調だ。1Qは売上高1.82兆円(同+7.0%)、当期純利益4218億円(前年同期は1742億円の赤字)にて着地。1Qの黒字は2021年以来4年ぶりだ。AI関連企業に投資するビジョン・ファンド事業の投資利益が7268億円と前1Qの1772億円から急増し、エヌビディアの株価上昇も寄与している。トランプ関税ショックで4月7日には5730円まで下落していた株価は8月15日に1万6520円と3倍近くに上昇した。
チャートだけを見ると「過熱し過ぎだ」「もう下がるだろう」という意識が働いての信用売り残の急増であるが、よく考えていただきたい。SBGが企業価値の物差しとして重視している保有株式価値から純有利子負債を差し引いた「時価純資産(NAV)」は6月末で32.4兆円。3月末の25.7兆円から大きく増加しており、発行済株式数(自己株式を除く)で割った1株あたりのNAVでみると今の株価はファンダメンタルズに比べて4割も安い。単にチャートで判断しても意味はないという好例だ。「今日儲かればいい」「ちょっとだけ儲かればいい」との安易な投資行動は危険だ。信用売りの場合は株価が上昇すれば損失は無限大であり、踏み上げを食らおうものなら投資資金はたちまち蒸発してなくなり、追証がかかり「火の車」になる。
プロのヘッジファンドも売りポジションの急速な買い戻しで大きな損失
金融相場や好業績銘柄における売り戦略は投資家に利益をもたらさない。信用売り残のデータは動向をつかみづらいヘッジファンドたちも同じである。このところ彼らはショートポジションの急速な買い戻しを迫られて大きな損失を出している。自動車や銀行を空売りしてきたが、7月の日米関税合意や日銀の利上げ期待を背景に保有銘柄は急騰。8月の雇用統計ショックを受けて日本株を空売りしたファンドもあったが、上昇トレンドが強化されて苦境に立たされているのだ。はっきり言って、個人投資家同様におバカな人たちである。
今、日本市場で起きている現象は海外の長期マネーが日本株を本格的に買っていることだ。8月第2週(12~15日)の海外投資家の日本株の買越額は5737億円。一方で個人投資家の売越額は1兆1253億円と対照的だ。海外投資家は今年4月以降、一貫して日本株を買い越している。割安感、好パフォーマンス、積極的な自社株買いが背景にある。日本株の保有比率が低いグローバル投資家はまだまだ多く、FOMO(Fear of Missing Out:取り残される恐怖、買い遅れるな!)の状態が続いている。
あなたの今の投資スタンスはどうだろうか? 私は複利効果を目一杯享受できる投資スタンスを継続している。今年に入ってから運用資産は1億円以上増加して5億円間近になっているが、これから爆発的に増えると考えておりワクワクしている。
推奨ポートフォリオは設定来117.0%、年初来28.5%と主要指標を圧倒
太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。おかげさまで快進撃が続いている。2021年10月のサービス開始以来、8月15日時点で累計パフォーマンスは+117.0%、昨年来+69.7%、年初来+28.5%とすべての期間においてマーケットの主要指標を圧倒。マーケット分析力と個別銘柄選択力で「市場に打ち克つ」を実践している成果が大きく出ているものと自負している。

「勝者のポートフォリオ」は日本株を中心とした個人投資家向けの投資助言であり、毎週のマーケット解説・投資戦略のメルマガ配信に加えて、毎月恒例のWebセミナーの開催と、投資のスキルアップを図るスペシャル講義を提供している。
WebセミナーではFRBや日銀の金融政策、日米の景気動向、あるいは最近ではトランプ関税政策といったホットな話題を取り上げながら現状の投資戦略やこれから株価上昇が期待できる個別銘柄の話、さらには参加者からのすべての質問に答えるQ&Aコーナーを設けて毎回2時間半ものロングランセミナーとなっている。毎回300名を超える参加者で盛り上がり、投資のヒントが満載である。
米の利下げ開始で金融相場が本格到来。資産形成のチャンスを逃すな!
8月13日(水)20時よりWebセミナーを開催した。テーマは『日経平均4万円回復で新局面、金融相場で資産を増やす最も効果的方法とは?』。株式市場は上昇しているのに資産運用がうまくいっていない個人投資家が多いとの印象を受ける。「どういう運用をすれば資産運用がうまくいくのか」を知りたい人はぜひご参加いただきたい、との切り口で新規参加者を募ったが多くの方々にお申し込みいただいた。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能。有料会員はアーカイブ録画をいつでも視聴できる。次回は9月10日(水)20時より開催予定である。テーマは決まり次第、皆さまにお知らせしたい。
もう1つの特典のスペシャル講義は投資スキルを身につける場として62本もの講義動画をリリースしている。個人投資家にとって必須のリスク管理、運用力を上げるためのマーケットサイクル投資法、恐怖指数の活用、システマティックリスクの対処法、ヘッジファンドの実態…など詳しく解説している。ぜひとも参考にしていただきたい。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。
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