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アメリカで存在感を増すスポーツベッティングやPolymarketのような予測市場の裏側にある問題点とは? なぜ、株式市場が一番まともなのか?

2026年6月24日公開
ポール・サイ
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アメリカでは予測市場とスポーツベッティングがスゴい勢いで存在感を増し、日常的なものに

 アメリカでは今、予測市場とスポーツベッティングが、かつてない勢いで存在感を増しています(※)。

 プロスポーツの中継画面にはオッズが当たり前のように表示され、SNSのタイムラインには「これに賭けて、これだけ儲かった」という動画が日常的に流れてきます。

 賭けの対象はスポーツにとどまりません。それは選挙の結果、経済指標、国際ニュースにまで広がっており、まるで現実そのものが巨大なカジノのフロアに変わってしまったかのような瞬間さえあります。

(※編集部注:日本国内からアメリカの予測市場やスポーツベッティングに賭けることは、日本の法律では違法になる)

スポーツベッティングで実際に長く儲け続けているのは誰なのか?

ドラフトキングス・スポーツスポーツベッティングなどを運営するドラフトキングスのスポーツ系Xアカウントの投稿

 しかし、その熱気のなかで、私たちはひとつ大切な問いを忘れがちです。それは、「実際に長く儲け続けているのは誰なのか」という問いです。

 数字は、思いのほか、冷ややかです。

 スポーツベッティングで長期的にプラスの収支を保てる人は、各種の分析によれば、全体のおよそ3%にすぎないとされています。

 たしかに2025年のある調査では、過去1年間の収支がプラスだったと答えた人が40%にのぼりました。けれども、短期的に「勝っている」と感じる人が多くいても、長い時間軸で勝ち残る人はごくわずかなのです。

 オンライン賭博全体を見ても、2年間通算して利益が残った人は11%にとどまり、しかもその多くはわずかな利益だったという調査もあります。

 なぜ、こうなるのでしょうか。

 しくみを見れば答えははっきりしています。ブックメーカーはオッズのなかに、あらかじめ自分たちの取り分を組み込んでいます。

 よくある「-110」の賭け(※)で損益分岐点に届くには、約52.4%の勝率が必要です。コインの裏表を当て続ける以上の精度を、休みなく維持しなければなりません。これを長く上回り続けることは、並大抵のことではありません。

 だからこそ、長い目で見れば勝つのはプレイヤーではなく、胴元――すなわちハウスなのです。

(※編集部注:「-110」は「100ドルの利益を得るために110ドルを賭ける必要がある」ことを示すもの)

長い目で見れば、プレイヤーではなく、胴元側が勝つことが明らかなら、胴元となっている企業の株を買う手も考えられるが…

 では、もしどうしてもこの分野にお金を投じたいなら、どうすればよいでしょうか。

 私なら、客として賭け金を払い続ける側ではなく、胴元のビジネスそのものに投資する側になることを考えます。

 その代表例がドラフトキングス(DraftKings、ティッカー:DKNG)です。同社はオンラインのスポーツベッティングやiGaming(オンラインカジノ)、ファンタジースポーツを束ね、多くの利用者の賭けから収益を上げている企業です。理屈のうえでは、ドラフトキングス株を買う方がよほど筋が通っています。

 ただし、誤解してはいけません。ドラフトキングス株は、成長期待の変化や規制に関するニュース、競争環境によって大きく揺れ動く高ボラティリティ銘柄です。スポーツベッティングの代わりになる「安全資産」では決してありません。

ドラフトキングス(DKNG) 月足ドラフトキングス(DKNG) 月足 出所:TradingView

スポーツベッティングでは勝ち続ける顧客を実質的に締め出すことが普通にある

 ここで、私が普段から皆さんにお話ししている株式市場との違いが、くっきりと浮かび上がってきます。

 株式市場にも情報の格差はありますし、不祥事もあります。それでも、取引所のルールは公開され、監督当局の枠組みがあり、原則としてすべての参加者に同じルールが適用されます。儲けているからという理由で、ある日突然、取引できる金額を一方的に絞られることは、まずありません。

 ところがスポーツベッティングでは、オッズを示す事業者が、同時にあなたの賭けの相手方でもあります。そして、勝ち続ける顧客に対しては、賭け金の上限を下げたり、実質的に締め出したりすることが、ごく普通に行われているのです。腕が上がるほどテーブルが小さくなる――これは、はじめから歪んだゲームだと言わざるを得ません。

予測市場のポリマーケット(Polymarket)はクリエイターに架空の大勝ち動画を作らせ、SNS上で大量に拡散させていた

 この歪みは、近ごろ脚光を浴びている「予測市場」にも、別の形で姿を現します。選挙や政策、経済指標といった現実の出来事に価格をつける予測市場は、一見すると知的で洗練された情報市場のように映ります。

 しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルの調査が明らかにしたポリマーケット(Polymarket)の実態は、そのイメージに冷や水を浴びせました。

ポリマーケット(Polymarket)ポリマーケット(Polymarket)のウェブサイト

 報道によれば、同社は本物そっくりの偽サイトを使い、クリエイターに架空の大勝ち動画を作らせ、SNS上で大量に拡散させていたといいます。分析された約1100本の動画の中には、示されたような利益が実際には出ておらず、同じ賭けを本物のプラットフォームで行えば、損失になっていた例もあったと報じられています。

 つまり、そういった動画は、確率や情報の優位を冷静に競う市場で実際に賭けている様子をありのままに伝えるというよりは、「簡単に大金が稼げる」という夢を売る広告に近いものでした。規制当局がこの問題に目を光らせているのも当然のことでしょう。

予測市場とスポーツベッティングは参加者よりも事業者側に有利な構造。株式市場に派手さはないが、かなり公平なルールのもとで運営されている

 予測市場とスポーツベッティングに共通するのは、「マーケット」という言葉が漂わせる知的で中立的な響きの裏に、参加者よりも事業者の側に有利な構造が、静かに埋め込まれているという点です。

 一方では胴元がオッズと制限を握り、もう一方ではプラットフォームがルール設定とマーケティングを握る。どちらも、テーブルの傾きはあらかじめ決まっています。

 その点、株式市場は、一部に欠点を抱えながらも、きちんとしたルールの公開、公的機関による監督、そして参加者の保護という肝心なところで、今なお比べものにならないほど整っています。

 株式市場に派手さはありません。一晩で人生が変わるような夢も滅多に売ってはくれません。けれども、普通の長期投資家が、普通のルールのもとで、時間を味方につけて資産を育てられる場所は、結局のところ、ここしかないのです。

 賭けの熱狂が世界を覆う今だからこそ、私はそのことを、改めて申し上げておきたいと思います。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。

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