元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしているポール・サイさんが、「WORLD MARKETZ」にゲスト出演した。同番組は、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている。

AIで米国株の投資分析がここまでできる! ポール・サイ氏が開発した「株海図」とは?
番組で今回紹介されたのは、ポールさんがAIを活用して開発した、米国株の投資分析サイト「株海図(Kabukaizu)」だ。
(出所:WORLD MARKETZ)
株海図は、米国企業の開示情報などをAIで分析し、株式市場の動向や個別銘柄の業績、セクターごとの特徴などを確認できる「米国株アルマナック」だ。
ポールさんは、自分自身が投資について調べる際に「こういうものが欲しい」と思ったことから開発したという。ヨットが好きなこともあり、航海の道しるべとなる海図にちなんで「株海図」と名づけたそうだ。
株海図では、米国企業の決算資料や企業説明会の記録などをAIで処理し、重要なポイントを抽出。さらに、ポールさん自身の投資分析のフレームワークに沿って、企業やセクターの特徴を整理している。
番組MCの渡部一実さんによると、AIの「Claude(クロード)」を活用し、米証券取引委員会(SEC)の企業情報開示システム「EDGAR」や、米セントルイス連邦準備銀行の経済データベース「FRED」、金融データサービス「FMP」などから情報を取得する仕組みになっているという。
(出所:WORLD MARKETZ)
ポールさんは、米国企業の情報開示は質が高く、そうした公開情報をAIにつなぐことで、以前なら難しかった分析もできるようになったと話す。
実際に株海図を見ると、米国株の市場動向やセクター別の株価パフォーマンス、個別企業の決算情報など、さまざまな分析機能が用意されている。
では、個人投資家は株海図をどのように活用できるのだろうか。
AI関連株を「5層のケーキ」に分類! 半導体関連株が好調な理由と今後の注目点とは?
渡部さんが最初に注目したのは、株海図に搭載されている「株海図AI5層指数」だ。
これは、AI関連企業を5つの階層に分類し、それぞれの株価パフォーマンスなどを比較できるようにしたものだという。
分類のベースになっているのは、半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが示した、AI産業を5層のケーキに例える考え方だ。
【※関連記事はこちら!】
⇒エヌビディア、ジェンスン・フアンCEOが示したAIの「5層のケーキ」で見えてくるものとは? 従来型のセクター分類は今の株式市場を見るのに役立たない!
具体的には、第1層がAIを動かすための電力などを供給する「エネルギー」、第2層がGPUなどの「半導体」、第3層がクラウドやデータセンターなどの「インフラ」、第4層が「AIモデル」、第5層が実際に利用される「アプリケーション」という構成になっている。
(出所:WORLD MARKETZ)
ポールさんがこの分類に注目した理由は、従来の業種分類だけではAI関連企業の実態が見えにくいと考えたからだ。
例えば、米国株の一般的なセクター分類では、メタ・プラットフォームズと通信大手Tモバイルが同じコミュニケーション・サービスに分類される。
しかし、両社のビジネスモデルやAIとの関わり方は大きく異なる。
そこでポールさんは、AI関連企業を従来のセクターから切り離し、AI産業のどの階層に位置するのかという視点で分類し直したという。
株海図では、この5層に分類した合計92銘柄について、各階層の指数や5層全体の指数を確認できるようにしている。
(出所:WORLD MARKETZ)
さらに、各企業の収益性やバリュエーション(株価の割高・割安を判断するための評価指標)、時価総額の構成、各階層の利益配分なども分析できるという。
番組で5層の株価パフォーマンスを比較すると、もっとも高いリターンを示していたのが半導体関連の階層だった。
(出所:株海図)
株海図AI5層指数を見ると、2022年11月30日のChatGPT公開以降、2026年10月21日までの累積リターンは、第2層の半導体がプラス446.0%ともっとも高かった。これに対し、同期間のS&P500はプラス99.7%だった。
ポールさんによると、ChatGPTの登場以降、特に大きな恩恵を受けてきたのが、エヌビディアをはじめとする半導体関連企業だ。
AIの普及には膨大な計算処理が必要となるため、その基盤となるGPUなどを供給する企業に需要が集中してきた。
ポールさんは、こうしたAI産業の構造を考えるうえで、過去のインターネットバブルが参考になると話す。
インターネットの普及初期には、ネットワーク機器を手がけるシスコシステムズなどの企業が大きな恩恵を受けた。
しかし、その後はグーグルやメタ・プラットフォームズのように、インターネットを利用したサービスを展開する企業が大きく成長した。
今回のAI革命でも、今後は半導体以外の階層に利益が広がっていく可能性が考えられる。
ただし、ポールさんは、エヌビディアには独自の競争力や強固なエコシステムがあるため、インターネットバブルと同じ展開になるとは限らないと指摘する。
AI関連株をひとまとめにするのではなく、5つの階層に分けて分析することで、AI産業全体の構造や今後の成長機会を考える材料になるというわけだ。
オルカンの約39%、S&P500の約53%がAI関連!? 株海図の独自分析で見えた投資先の実態
株海図には、個人投資家が自分のポートフォリオを分析するための機能も用意されている。
その1つが「AI比率チェッカー」だ。
これは、自分が保有している株式や投資信託と、その投資金額を入力すると、ポートフォリオ全体のうちAI関連企業への投資がどれくらいを占めているのかを確認できるツールだという。
しかも、単にAI関連株の比率を示すだけではない。
AI関連への投資額が、エネルギー、半導体、インフラ、AIモデル、アプリケーションという5つの階層に、それぞれどれくらい配分されているのかも確認できる。
番組では、渡部さんが実際に「オルカン」に100万円を投資しているケースを入力してみた。
オルカンとは、世界各国の株式に分散投資する投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の通称だ。
株海図の分析によると、オルカンに100万円を投資した場合、AI関連企業への投資額は約39万円、比率にして約39%となった。
(出所:WORLD MARKETZ)
内訳を見ると、第1層のエネルギー関連が約1万9000円、第2層の半導体関連が約15万7000円という結果だった。
さらに、番組の終盤では、渡部さんがS&P500に連動する投資信託に100万円を投資したケースも確認した。
その結果、株海図の分類ではAI関連企業への投資比率が約53%となり、投資額に換算すると約53万円に達したという。
オルカンと比べても、S&P500の方がAI関連企業への投資比率が高いことがわかる。
ポールさんは、現在の一般的な業種分類では、AI関連企業にどれくらい投資しているのかを把握しにくいことから、このツールを開発したと説明した。
世界中の株式に幅広く分散投資しているつもりでも、実際にはAI関連企業への投資比率が想像以上に高くなっている可能性があるということだ。
複数の投資信託を保有している場合も、投資先が重複し、特定のテーマへの投資が集中していることがある。
AI比率チェッカーは、そうしたポートフォリオの偏りを確認するためにも役立ちそうだ。
なお、AI関連企業の範囲は株海図独自の分類によるもので、表示される比率はデータの更新時点や分類方法によって変わる点には注意したい。
株式、セクター、個別銘柄の順番で分析! ポール・サイ氏が重視する投資判断とは?
株海図は、ポールさん自身が普段行っている投資分析の手順を反映して作られているという。
その特徴は、いきなり個別銘柄を調べるのではなく、まず市場全体やセクターから分析を始めることだ。
ポールさんによると、投資判断では、最初に株式に資金を振り向けるかどうかを考えることが重要になる。
次に、株式に投資すると決めた場合、どのセクターに投資するのかを判断する。
そして最後に、そのセクターの中でどの個別銘柄を選ぶのかを考えるという順番だ。
渡部さんも、まず株式、債券、金などのどの資産に投資するのかを決め、株式を選んだ場合はセクターを考え、その後に個別銘柄を選ぶという流れだと整理した。
例えば、銀行などの金融セクターに投資するのか、それともAI関連企業に投資するのかという判断は、投資成果に大きな影響を与える可能性がある。
同じセクターに属する企業は、共通する経済環境や市場の動きによって、株価が似た方向に動くことがあるからだ。
ポールさんは、特に銀行などの金融セクターでは、セクター内の株価の相関性が比較的高いと説明する。
一方、AI関連企業の場合は、半導体とそれ以外の階層で株価の動きが大きく異なることもある。
だからこそ、AI関連企業を5層に分類して分析する意味があるという。
投資先を考える際は、個別企業の良し悪しだけでなく、どの資産やセクターに資金を配分するのかという大きな判断も重要になる。
株海図では、こうした考え方に沿って、市場全体からセクター、個別企業へと段階的に分析を深められるようにしている。
ネットフリックスは復活できる? YouTubeとの競争と決算をポール・サイ氏が分析
続いて渡部さんは、株海図を使って個別企業の分析を紹介した。
取り上げたのは、決算を発表したばかりの米動画配信大手ネットフリックスだ。
株海図でネットフリックスのティッカーシンボルを検索すると、株価チャートや企業概要、成長率、決算情報などが表示される。
(出所:WORLD MARKETZ)
さらに、同社がどのようなビジネスモデルで収益を上げているのか、競争相手はどこなのかといった情報も確認できるという。
ポールさんがネットフリックスを分析するうえで注目しているのが、YouTubeとの競争だ。
両社は動画配信という点では共通しているが、ビジネスモデルには大きな違いがある。
ネットフリックスは、独自の映画やドラマなどに投資し、魅力的なコンテンツを配信することで視聴者を集める。
そこから得られた収益を、さらに新しいコンテンツの制作に投じるという仕組みだ。
一方、YouTubeは利用者やクリエイターが制作した動画を配信するプラットフォームで、広告収入を中心に事業を展開している。
ポールさんは、ネットフリックスでは直近2四半期にわたり、コンテンツ制作の面で課題が生じていると指摘した。
かつての「イカゲーム」のような大ヒット作品が最近は生まれておらず、YouTubeに視聴時間のシェアを大きく奪われているという見方だ。
こうした状況を背景に、市場ではネットフリックスの成長に対する懸念が強まり、株価の重荷になっていると分析する。
ただし、ポールさんは、ネットフリックスのビジネスモデルそのものが崩れたわけではないと考えている。
コンテンツビジネスでは、常にヒット作品を生み出せるとは限らず、業績や市場の評価に波が生じるのは避けられないからだ。
また、こうした懸念はある程度株価に織り込まれており、決算発表後の下落も限定的だったとの見方を示した。
ポールさんがネットフリックスについて評価しているのは、事業環境の変化に素早く対応してきた企業文化だ。
ネットフリックスは、もともとDVDのレンタル事業からスタートした企業だが、その後、インターネットを通じた動画配信へと事業の中心を移してきた。
その過程では人員構成も大きく変えるなど、事業の転換に合わせて組織を柔軟に変化させてきたという。
最近もコンテンツ制作部門の責任者を変更するなど、課題に対応するための動きが見られると話す。
ネットフリックスが再び魅力的なコンテンツを生み出せれば、業績や株価が回復する可能性はあるというのがポールさんの考えだ。
株海図では、こうした個別企業の決算情報だけでなく、どの機関投資家が株式を保有しているのかといった情報も確認できるという。
さらに、SECの提出資料へのリンクも用意されており、分析の根拠となる公開情報をたどれるようになっている。
従来なら1年かかる開発を約1週間で! AIが変える個人投資家の情報収集と分析
渡部さんが驚いたのは、株海図に搭載されている分析機能だけではなかった。
これほど多くの情報を扱うウェブサイトを、ポールさんが1人で開発したという点にも注目した。
開発にどれくらいの時間がかかったのか尋ねると、ポールさんは「1週間ぐらい」と答えた。
従来の開発体制であれば、同じような仕組みを作るのに1年ほどかかったかもしれないという。
しかし、現在はAIを活用することで、データの取得や分析、ウェブサイトの構築など、さまざまな作業を効率化できるようになった。
株海図では、株価の終値や企業の決算情報なども自動的に更新される仕組みになっているという。
そのため、一度サイトを構築すれば、日々のデータ更新をすべて手作業で行う必要はない。
ポールさんは、自分自身の役割をオーケストラの指揮者に例えた。
AIにさまざまな作業を任せながら、自分は全体の方向性を決め、必要な指示を出していくというイメージだ。
もちろん、ポールさんには過去に投資関連のサービスを開発してきた経験があり、そうした知識やノウハウも今回の株海図の開発に生かされている。
株海図のもう1つの特徴が、米国企業の英文資料をAIで処理できることだ。
米国企業の決算資料やSECへの提出書類には、投資判断に役立つ情報が数多く含まれている。
しかし、日本の個人投資家にとっては、英語で書かれた大量の資料を読み込み、必要な情報を探し出すのは簡単ではない。
ポールさんによると、ClaudeなどのAIをEDGARに接続することで、日本語で質問しながら企業の開示情報を調べられるようになったという。
以前であれば、英文資料を探して読み込み、必要なデータを整理するまでに相当な時間が必要だった。
ところが、AIを活用することで、そうした作業の負担を大きく減らせるようになっている。
もちろん、AIが生成した回答には誤りが含まれる可能性もあるため、重要な数値や事実については元の資料で確認する必要がある。
それでも、英語の開示資料を日本語で調べられるようになったことは、日本の個人投資家にとっても大きな変化といえそうだ。
株海図では、以前の番組でも取り上げられたフィデリティのファンド分析なども確認できるという。
【※関連コンテンツはこちら!】
⇒「AIは危険」でも進化は加速! ポール・サイ氏がAI分析でプロの投資行動を“見える化”、好成績ファンドは意外と銘柄を入れ替えない!?
ファンドがどのような銘柄を保有しているのか、以前と比べて保有銘柄や組入比率がどう変化したのかといった情報も、AIを活用して分析できる。
ポールさんは、個人投資家もAIを自分の投資分析や情報収集に取り入れることで、作業を大幅に効率化できるのではないかと話した。
AIを活用すれば、これまで専門家が膨大な時間をかけて行っていた投資分析も、個人投資家が手軽に取り組める時代になりつつある。
ポールさんが開発した「株海図」は、そんな変化を実感できるサービスの1つといえそうだ。
【※関連コンテンツはこちら!】
⇒株海図(Kabukaizu)公式サイト
ここまで、10月21日(水)に放送された「WORLD MARKETZ」の模様をお伝えした。
記事冒頭で触れたとおり、ポールさんが情報配信しているザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」は登録後、10日間は無料だ。
米国株投資に関心がある人や、現地からの情報をもっと知りたい人、ポールさんが注目する個別銘柄やポートフォリオを参考にしたい人は、チェックしてみてはいかがだろうか。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げに携わり、中国株調査部長、日本株調査部長を歴任。12年以上にわたり株式調査に携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。著書『台湾系アメリカ人が教える米国株で一生安心のお金をつくる方法』を発売中。
※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株の分析が毎週届き、2年半で140%以上上昇している珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。Youtubeチャンネルも開始。

















