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米FOMCでの政策金利引き上げの「タカ派」的予想に株式市場が嫌気。一方、15年ぶりの減産合意により、訴訟問題も一段落した「あの会社」が要注目銘柄に!

2016年12月19日公開(2022年3月29日更新)
広瀬 隆雄
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先週のFOMCで
FFレートは予想通り0.25%引き上げに

 12月14日(水)に連邦公開市場委員会(FOMC)が終了し、大方の予想通り、米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートが0.25%引き上げられました。

 そのときに発表された、FOMCメンバーによる来年以降のフェデラルファンズ・レートの予想は、向こう3年に渡り毎年3回の利上げを示唆する、いささか“タカ派”的な予想でした。

 株式市場の投資家はこれを嫌気しました。

 その関係で、先週の米国株式市場の週間パフォーマンスは、ダウ工業株価平均指数が+0.44%、S&P500指数が-0.07%、ナスダック総合指数が-0.15%と、まちまちでした。

ダウ工業株価平均指数チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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石油減産に関するOPECと非OPECの合意が
原油高の要因に

 さて、先週はもうひとつ重要な材料が出ました。それはウイーン開催された非OPEC(石油輸出国機構)各国の会合で、56万バレル/日の減産が決まったことです。

 これに先立ち、11月30日にOPECが120万バレル/日減産することを決めていますので、今回の非OPECの減産は、それに同調する決定と言えます。これは実に15年ぶりの快挙です。

 OPECと非OPEC合せて176万バレル/日の減産は、当初の減産目標134〜48万バレルを軽く超える規模です。

 実際の減産は来年に入ってから実施されます。減産がはじまると、原油価格はじり高するでしょう。

 そこで銘柄ですが、私はBP(ティッカーシンボル:BP)に注目しています。その理由を、BPの歴史も踏まえながら解説しましょう。

英海軍の軍艦の燃料を重油に切り替えたことで
BPは国策会社に

 BPは昔、ブリティッシュ・ペトロリアムという名前でした。同社は1908年にウイリアム・ノックス・ダーシーという英国の実業家がペルシャ(=こんにちのイラン)で石油採掘権を取得したときに発足した会社です。

 同社は最初、石油の発見に手間取り、資金が尽きそうになります。しかしそこへ思わぬ助け舟が出されます。

 当時は第一次世界大戦の前夜で、英国とドイツが激しい建艦競争を繰り広げていました。そのときの英国の海軍大臣はウインストン・チャーチルです。

 チャーチルは、石炭より重油を燃料にした方が航行速度が速くなる点に注目し、英海軍の軍艦の燃料を、石炭から重油に切り替える決断をします。

 英国では石炭は沢山産出されますが、石油は出ません。すると英海軍の軍艦向けの重油をガッチリ確保するために、ペルシャの油田をおさえることが急務となりました。

 このため、英国政府はBPを資本面で支援することを決めます。つまりこの決定を境として、BPは英国の国益を色濃く反映する存在となったのです。

マーガレット・サッチャー首相の時代に
国策会社からグローバル企業へ転身

 その後、1960年に北海油田が発見され、これがBPにとって重要な資産になります。

 1973年に第一次オイルショックが起きると、BPは、OPEC諸国から安定的に原油を生産することが出来なくなります。そこで同社は、アメリカでスタンダード石油系列のソハイオを、さらにアラスカに油田を持つアトランティック・リッチフィールドを相次いで買収します。

 その後、マーガレット・サッチャーが首相になって民営化ブームが起きた際、政府が持っているBPの株式も放出されました。

 このようにBPは、英国の国策会社から、グローバル企業へと変身したのです。

テキサスやメキシコ湾など
経営を揺るがす大事故が相次いで発生

 しかし2000年代に入ると、同社は相次いで大きな事故に見舞われます。

 まず2005年に、アメリカのテキサス・シティ精油所が大爆発を起こします。さらに同じ年、メキシコ湾でサンダー・ホースという10億ドルをかけて建造した大型リグが沈みそうになりました。

 さらに2010年4月に、ルイジアナ沖で操業していたディープ・ウォーター・ホライゾンが火災を起こし、490万バレルもの原油がメキシコ湾に流失するという大事故を起こしてしまいます。この事故は、今日までの累積賠償金総額555億ドルという莫大な経済的損失を同社に与え、BPは減配のみならず、一時は会社の存続すら危ぶまれる危機に瀕しました。

 今日、このメキシコ湾原油流出事故絡みの訴訟は殆ど片付き、同社は長い低迷期にようやく終止符を打つことが出来る見通しとなっています。

BPの業績と株価評価は
同業他社より低め

 BPの業績は、賠償金の支払い負担と2014年秋以降の原油価格の下落で低迷しています。

 同社の株価評価は、他の大手石油会社に比べるとかなり割安に放置されています。下は、BPと競合他社のエンタープライズ・バリューを売上高で割算したものです。

 エンタープライズ・バリューは、「時価総額+純負債」で求められます。これは「1ドルの売上高に対して投資家が幾らの価値を与えているか?」の尺度です。これで見ると、BPはロイヤル・ダッチ・シェル(ティッカーシンボル:RDS.A)の60%程度の評価に甘んじていることがわかります。

 次に「1バレルの石油換算埋蔵量(BOE)に、投資家は何ドルの価値を与えているか?」のチャートを示します。

 これで見ると、BPはエクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)の73%の評価に甘んじていることがわかります。

【今週のまとめ】
原油価格の上昇が予測できる中
メキシコ湾原油流出事故の賠償がひと段落したBPが狙い目

 OPECと非OPEC各国が仲良く減産するのは、実に15年ぶりのことです。だから原油価格は、今後上昇すると考えるのが自然です。

 今回挙げたBPは、大手石油会社の中で最も割安に取引されています。メキシコ湾原油流失事故は同社に大打撃を与えました。しかし、その訴訟も片付いたので、今後、同社株には割安感から見直し買いが入ると期待されます。

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