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毎月分配型投信の純資産総額上位の銘柄の実力を、著名FPが「分配金余力」と「健全性」で格付け!毎月分配型投信の人気第1位の銘柄の実力は?

2017年6月23日公開(2022年3月29日更新)
深野 康彦
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「毎月分配型投資信託」の人気商品の本当の実力を徹底検証!

「分配金を定期的に受け取れる」ことで人気の高い毎月分配型投信だが、人気ランキング上位(=純資産総額が多い)の毎月分配型投信は必ずしも健全性が高いとは限らない。では、どのような点に気を付けて毎月分配型投信を選べばいいのだろうか?

6月22日(木)発売の書籍『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』の筆者であるファイナンシャルプランナーの深野康彦さんが、個人投資家からも人気が高い純資産総額が上位の毎月分配型投信を辛口評価する!

人気上位の投資信託が必ずしも健全とは限らない!

 投資信託の購入を考える際、投資信託の人気ランキングを参考にする人が数多くいらっしゃいます。しかし、人気が高い(=純資産総額が多い)からといって、健全なファンドとは限りません。前回の記事でもご説明したように、分配金が配当金収入から賄えないと、投資元本を取り崩して支払っているファンドも少なくないからです。

【※前回の記事はこちら!】
毎月分配型投信の多くで分配金が減額される事態に!資産を切り崩して分配する不健全な投信もある中で、著名FPがおすすめできる毎月分配型投信を公開!

 そこで私の新刊『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』では、毎月分配型投信の純資産総額上位20ファンドの健全性と分配余力について、個別に詳細な分析をしています。その際、毎月分配型投信を判断する基準として2つの指標を用意しました。

 1つは「分配金健全格付け」。毎月投資家に支払われている分配金が、どの程度ファンドのインカム収入で賄われているかを表したものです。

 もう1つは現在の分配金をどのくらいの期間にわたって支払えるかを示す「分配金余力格付け」です。

 また、基準価額や分配金の推移などのデータに加えて、2つの格付け評価を見ることで、そのファンドを本当に買っていいのか、保有し続けていいのかを考えやすくしました。

 ここでは『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』の中から抜粋して、純資産総額が1位と19位の毎月分配型投信の実力を徹底検証しましょう。

純資産総額1位の実力を徹底検証!
「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」

 純資産総額1位の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」は、米国の取引所に上場しているリート(不動産投資信託)に投資するファンドで、ベンチマークである米国の上場リートインデックス以上の配当利回りを目指しています。為替ヘッジは行ないません。

 分配金は、2015年2月から毎月100円が支払われていましたが、2016年11月から70円に減額。減額により資金流出となりましたが、その流出速度は緩慢です。


フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)の「分配金の推移」と「基準価額と純資産総額の推移」。
拡大画像表示

 2017年2月末基準のマンスリーレポートによると、業種別組み入れ状況はオフィス・物流、小売、住宅の上位3業種で6割近くを占めています。また組入銘柄数は59と、海外リートを投資対象とする他のファンドに比べてやや集中投資が行われているように感じます。

 他より分散が控えめなため、リートの価格変動に運用成績が大きく左右されることが過去の実績からわかっています。2017年1月末の数字では、実績配当利回りは約3.8%に対してベンチマークの配当利回りは約4%。ベンチマークを下回るのは一過性ではなく、配当収益は想定ほどは得られていないようです。

 2017年2月末時点の実績配当利回りは3.76%。この利回りと基準価額4551円から計算した配当収入は14.25円です。計算の結果、毎月の分配金のうち配当収入でまかなえているのは約2割に過ぎず、分配金健全格付けは「2」となりました。

 一方、運用報告書を見ると翌期繰越分配対象額が基準価額を上回っていますが、基準価額を超える分配金は支払えないため、基準価額と「当期の収益以外」から計算した分配金支払可能期間は71.1ヵ月。分配金余力格付けは「7」です。

 キャッシュフローは劣るものの、しっかりした財務基盤(翌期繰越分配対象額という内部留保)が分配金を支えている構造です。配当収入が増えなければ、今後も分配金は翌期繰越対象額頼みという状況が続くでしょう。

 運用レポートは過去1年分、運用報告書過去4期分を「運用実績・チャート」のページから見られて、情報開示姿勢は良好です。スペシャルレポートの作成回数も増加しているようです。

 基準価額を上回る翌期繰越分配対象額がありますが、基準価額が上昇しない限りは宝の持ち腐れになるかもしれません。多額の翌期繰越分配対象額に目を奪われないようにしてください。

 また、米国の金融政策が緩和から引締めへ転換、さらにトランプ政権の政策不透明感から、米国リート市場、円/米ドル相場共に不安定な動きになる可能性もある点にも注意が必要です。

 ここまで検証してきた「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」の総合評価は「△」です。2016年11月の分配金減額以降も資金流出が急増していないのは、乗り換える先がないか、相対的に分配金は高めなことが要因でしょう。分配金余力格付けは高めですが、分配金健全格付けは「2」と低く、また米国が金融引締めに転換していることなどを考慮すれば、新規の購入・買い増しは慎重に判断することをおすすめします。

純資産総額19位でもおすすめ!
「東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)<円奏会>」

 純資産総額がトップ10には入っていなくても、おすすめのファンドはいくつかあります。純資産総額19位の「東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)<円奏会>」はその中の1つで、国内の債券、株式、リートに分散投資している商品です。資産配分比率は、日本債券70%、日本株式15%、Jリート15%を基本としますが、基準価額の変動リスクが大きくなった場合は、変動リスクの抑制を目的として、株式とリートの資産配分比率を引き下げます。

 毎月の分配金は、2014年7月から30円が支払われ続けています。これまで分配金が減額されたことはありません。

東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)<円奏会>の「分配金の推移」。
拡大画像表示

 債券、株式、Jリートの資産クラスごとに、アクティブ運用のマザーファンドを組み入れて運用されています。前述のとおり、基準価額の変動リスクが高まった場合は、株式とリートの資産配分をそれぞれ最大2.5%引き下げて、短期金融資産を25%まで引き上げることで、安定性に配慮した運用を行っています。

 リスクコントロールがうまく行っているためか、年間収益率はファンドを設定した2012年(2ヵ月のみ)~2016年のすべてでプラスに推移しています。2017年は2月末時点では▲0.26%ですが、挽回が期待できそうです。また、2013年のについては、+12.3%と2桁のプラスになっています。

 2017年2月末の基準価額は1万1731円で、ファンドの2017年2月末現在の資産配分割合から求めたからポートフォリオの利回りは1.73%。基準価額あたりのファンドの配当収入は、16.91円になります。

 毎月分配金は30円なので、分配金健全性は56.36%、分配金健全格付けは「5」となります。健全性が今一つ高くならないのは、債券への基本資産配分が7割と高く、日銀が大胆な金融緩和を継続しているため、債券からの利子収入が少ないことが要因だと考えられます。

 一方、直近の運用報告書では翌期繰越分配対象額は2093円、当期の収益以外は15円で、仮に今後も毎月15円ずつ取り崩しが行われたとすれば、分配金支払可能期間は139.53ヵ月と100ヵ月を超えます。分配金余力格付けは「10」と高い評価になりました。

 格付けを計算するためのデータは、不足なく開示されています。運用報告書は過去4期分をサイトで確認できるので、マンスリーレポートも同様に過去分を閲覧できるようにして欲しいと思います。

 日本銀行がマイナス金利を深堀りする可能性は後退したものの、米国の長期金利の上昇に引きずられる形で、日本の長期金利が上昇する可能性はあります。資産配分の7割が債券になることから、日本と米国、両方の長期金利の動向は注意深く見ておきましょう。

 「東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)<円奏会>」の総合評価は「◎」です。ここまで見てきたように、相対的に健全性が高いファンドと言えます。分配金の減額リスクは低く、新規の購入や買い増しも問題ないと思われます。すでに購入している人も、継続保有して不安は少ないでしょう。ただし、予測に反して日本の長期金利が急騰した場合には、一時的に新規購入を見送るべきです。

 今回は個人投資家に人気の高い純資産総額1位と19位の毎月分配型投信の実力を詳細に分析しました。『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』では、ここでは紹介しきれなかった純資産総額トップ80すべての毎月分配型投信の実力も分析しています。

 これから毎月分配型投信を購入しようと考えている方は、「人気が高いから……」と安易に選ばずに、「分配金健全性」や「分配金余力」などの指標を参考に購入することをおすすめします。

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