思い返せば、アマゾン・ドット・コム(AMZN)の時価総額が1兆ドルを突破したのは2018年9月4日のことでした。時価総額の1兆ドル超えは8月2日のアップル(AAPL)以来、米企業として2社目のことでした。
しかしながら、アマゾン株は節目の1兆ドルを突破した後は、下落基調が強まっています。足元では、アマゾンが10月25日公表した10~12月期の売上高見通しが市場予想を下回り、成長鈍化への懸念が急速に強まっているため、投資家の失望売りが広がっています。
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このアマゾンの値動きは他のIT関連株に波及しているようです。フェイスブック(FB)、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス(NFLX)、グーグル運営会社のアルファベット(GOOG)など「FANG」銘柄が軒並み大幅に下落し、10月24日のナスダック総合株価指数の下落率は4.4%と、今年最大の下落となりました。
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また、ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOは、10月22日に同社株を10万5868株売却しました。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、過去3カ月間で自社株を約370万株売却したようです。企業トップによる自社株売りは、現在の株価をインサイダーである経営トップが割高と判断し、現金化を急いでいるとのメッセージを市場に与えています。非常にネガティブな兆候です。
「アマゾン」や「アップル」のようなグロース企業は
すでに歴史的な天井を打った?
このような状況を踏まえると、「FANG」に代表されるグロース企業の株価は、歴史的な天井を既に打った可能性があります。
一般的に、金利が低い、もしくは低下している局面では、グロース株がバリュー株をアウトパフォームするとされています。しかしながら、9月半ば以降、米長期金利が上昇基調を強め始めています。
グロース株の株価は高い成長率を前提にした将来の利益を織り込んでいるため、一般的に高PER・高PBRです。しかしながら、金利上昇局面では、投資家は高PER・高PBR銘柄への投資に消極的になる一方、低PER・低PBRのバリュー株を選好する傾向があるのです。
そうこう考えると、グロース株への投資資金の一極集中の終焉は、アマゾンの時価総額1兆ドル突破が象徴的なイベントだったのかもしれません。一方、1969年創業のバリュー株投資のSPOパートナーズが閉鎖するとのニュースは、逆に、バリュー株への資金流入開始の象徴的なイベントになったのではないかとみています。
よって今後は、米長期金利上昇(米国の金利正常化)を背景に、グロース株からの資金流出・バリュー株への資金シフトがドラスティックに行われ、グロース株比率の高いナスダック総合株価指数は想定以上に下落する可能性があるのではないかと警戒しています。その一方、その流出資金の受け皿として、バリュー株の存在感が一段と増すことになるでしょう。
グロース企業が叩き売られた結果
新興市場の株価指数は安値を更新し続ける
米国で発生している物色傾向の変化は、日本でも起こりつつあるように感じます。例えば、10月29日の日経ジャスダック平均株価と東証マザーズ指数は、ともに連日で年初来安値を更新しました。日経ジャスダック平均株価は2017年9月以来、東証マザーズ指数は2016年11月以来の安値に沈んだのです。
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これら新興市場には、高成長が期待されている数多くの高PER・高PBRのグロース株が上場しています。そして今、このグロース株がバナナの叩き売りのように、投げ売られている結果、新興市場の株価指数が安値を更新し続けているのです。
現時点で、将来におけるグロース株人気の凋落・バリュー株人気の復活の可能性はザックリ7割くらいとみています。仮にもし、日本でもグロースからバリューへのシフトが鮮明になるようなら、これまでの成長株投資での成功体験は、1日も早く忘れないといけません。
具体的には、今まで人気の高かった高成長期待の高バリュエーション銘柄ではなく、これからは、手元流動性(現金・預金+有価証券)から有利子負債を差し引いたネットキャッシュがプラスの「キャッシュリリッチ企業」のうち、多少期待成長率が低くとも、好業績の低バリュエーション企業を選好するべきです。
また、キャピタルゲインよりも、インカムゲインを重視して、高配当利回り企業への資金シフトも有効な投資戦略となり得るでしょう。
日経平均株価は2万円割れの可能性も
当面は25日移動平均線までの戻しに期待
当面の日経平均株価に関しては、米中間選挙の結果が判明するまでは調整局面が続くでしょう。10月24日と25日とで空けた窓(2万1703.21円~2万1911.42円)埋めが上値メドです。一方、下値メドは年初来安値の2万0347.49円です。
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しかしながら、米ハイテク株売りが止まらず、米国株、とりわけナスダック総合株価指数が一段と下落するようだと、更なるVIX指数の急上昇が発生し、世界的に「リスク・パリティ」戦略のファンドの売りがまたまた加速し、日経平均株価の2万円大台割れも現実味を帯びることになるとみています。
テクニカル的には、25日移動平均ベースのボリンジャーバンドのマイナス2σ(10月30日前引け現在2万0906.03円)とマイナス1σ(同2万1919.70円)との間のバンドウォークを想定しています。
現時点でのボリンジャーバンドはエクスパンション(バンドが拡大)している状況のため、バンドが収縮する方向に向かうまでは、上値・下値共に切り下がり続けるでしょう。また、マイナス1σを超えてこないと、本格的なリバウンド期待も盛り上がらないと考えます。逆に、マイナス1σを超えてくれば、25日移動平均線までは売り方の買い戻しで上昇ピッチが加速するとみています。
ただし、現時点では投資環境が大きく変わらない限り、25日移動平均線は相当な期間(3~6カ月程度)強力なレジスタンスラインになる可能性が高いと危惧しています。
期待通り近い将来、日経平均株価が25日移動平均線まで戻ることになったとしても、ここ最近までの相場急落で大ヤラレしていたなら、そこは欲張らずいったん現金化しましょう。そして、冷静に情勢を見極めてから、それから、どのような投資方針で相場に臨むのかを決めて、気持ちも新たに運用を行いましょう。
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