日経平均株価は3月4日に21860.39円でピークアウトして、11日には一時20938.00円まで下落する場面がありました。日経平均株価のピークアウトした主因は大きくは2つ、「米国株の下落」と「国内景気不安の強まり」です。
米国株については、4日のNYダウは前週末比206.67ドル安の25819.65ドルでした。前日3日、「米中が関税引き下げを議論し、3月下旬に首脳会談で合意する見通し」という一部報道がありました。米株式市場は年初から米中貿易協議での合意を期待して上げてきたため、当該報道を受けて、当面の好材料出尽くし、といった格好となりました。
その一方で、知的財産侵害や巨額の補助金など中国の構造問題は依然として交渉中との観測も根強く、米中合意はそう簡単ではないとの見方もあり、そのように読む投資家も、いったん利益確定売りに動いたのでしょう。その後、NYダウは8日まで5日続落しました。NYダウは4日~8日までの5日間で終値ベースで576.08ドル(2.21%)下落しました。
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ただし、8日のNYダウは5日続落したものの、安値の前日比220.77ドル安の25252.46ドルからは下げ幅を縮小させ、同22.98ドル安で着地しました。2月の雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比2万人増と前月の31.1万人増から急減速し、市場予想の約18万人増も大きく下回りました。これが嫌気されて下げ幅を拡大させました。しかしながら、失業率は3.8%と前月から0.2ポイント低下し、2月の平均時給は27.66ドルと、前年同月比3.4%増えたことが徐々に評価されて下げ幅を縮小させたのです。
そして、11日のNYダウは6日ぶりに反発、前週末比200.64ドル高の25650.88ドルでした。パウエルFRB議長が10日夜の米テレビ番組で、利上げを「急ぐ必要はない」と述べたことが好感されました。また、1月の米小売売上高が前月比0.2%増と市場予想の「横ばい」を上回ったことも買い材料になりました。このように足元でNYダウが目先の底入れしたことは、日本株への追い風です。
「ルネサスエレクトロニクス」の工場操業停止で
半導体関連株への”売り圧力”が強まる
ところで、国内景気については、3月7日に発表された1月の景気動向指数速報値では、一致指数が97.9と、前月から2.7ポイント低下しました。低下は3カ月連続で、2013年6月の97.0以来の低水準に沈みました。中国や欧州経済の成長鈍化や、中国の春節の影響で、日本企業の輸出が不振だったことが響きました。この結果、指数の基調判断は前月までの「足踏み」から、「下方への局面変化」に引き下げられました。このため、市場では、国内景気の鈍化懸念が強まりました。
セクターでは特に、半導体関連への先行き不安が強まりました。きっかけは「ルネサスエレクトロニクス(6723)」でした。「ルネサスエレクトロニクス」は7日14時35分、「当社工場においては、今後の需要に応じて当社工場の一時生産停止の実施を検討しており、 前工程は最大2ヵ月、後工程は週単位で複数回一時生産停止することについても選択肢としております。」、「当社が一時生産停止を検討する背景は、本年度の市況の不透明さに起因する半導体の需要変動に応じて、柔軟にかつ迅速に対応する狙いです。」と公表しました。
「ルネサスエレクトロニクス」の工場操業停止は、中国の自動車や工作機械向けの需要が想定以上に減っていることが主因ではないかと、推察されています。この会社側のリリースをきっかけに、2018年までの相場上昇の牽引役だった半導体関連株への売り圧力が一段と強まりました。
ちなみに、11日に発表された2月の工作機械受注総額(速報)は前年同月比29.3%減と、5カ月連続で前年実績を下回りました。このような状況を踏まえると、半導体・電子部品といったハイテク株のみならず、機械など景気敏感株に関しては、上値での売り圧力が強い状況が継続することが危惧されます。
中国やEUは
”経済成長の鈍化”に適切な対応
また、市場では中国や欧州の経済成長が鈍化する懸念も強まっています。中国に関しては、5日開幕の全人代で、李克強首相が、2019年の経済成長率の目標を「6~6.5%」にすると表明し、2018年の「6.5%前後」から2年ぶりに引き下げました。ただし、その一方で、2019年に2兆元規模の減税と社会保険料下げを実施すると表明し、景気に配慮したスタンスを明確にしています。
一方、欧州では、3月7日の理事会でECB(欧州中央銀行)が、2019年の経済成長率の見通しを1.7%から1.1%へ大きく引き下げ、年内の利上げ断念と、銀行への新たな資金供給策(TLTRO3)の導入を決めました。欧州域内の景気減速への対応で、ECBは急遽、ハト派に転じました。
このように、自国経済の成長鈍化に対して、中国政府もECBもそれぞれ適切な対応をし始めているため、本来なら中国経済と欧州経済の先行きに対して過度に神経質になる必要はないとは思うのですが、残念ながら、8日までの市場の反応は逆でした。この最大の理由は、これまで、市場が世界経済の成長鈍化に対して、あまりに楽観視し過ぎていたため、現実との「ギャップを埋める」べく、8日までの日米の株式相場は調整入りしたのでしょう。
3月のSQ値=21348.40円が
「強気」「弱気」の分水嶺
ところで、日経平均株価については、昨年12月26日の18948.58円を起点に上昇してきました。そのゴールが3月4日の21860.39円だったならば、その上昇値幅は2911.81円です。テクニカル的に意識される押し目メドは、38.2%押しの20748.08円、半値押しの20404.49円、61.8%押しの20060.89円、そして、3分の2押しの19919.18円などです。
今後、米国株が想定以上に下落したり、外国為替市場で予想以上の円高が進行するケースでは、3分の2押しの19919.18円程度までの調整は十分あり得ると覚悟しておく必要はあるでしょう。
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一方、当面の上値メドとして強く意識されるのは、やはり、4日高値の21860.39円です。少なくとも、これを下回って推移している限り、東京株式市場全体の需給は悪く、調整色の強い相場が続くとみておくべきでしょう。逆に、これを上回ってくるようだと、需給は改善して本格的な上昇相場に回帰する見通しです。
現時点では、11日の20938.00円~4日の21860.39円のレンジ相場がメインシナリオです。そして、3月のSQ値(特別清算数値)21348.40円が、「強気」「弱気」の分水嶺です。このため、今後、SQ値を再び下回るようなら下方向を警戒するべきです。逆に、上回っている限り、基本的に「リスクオン」でオッケーでしょう。
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