「貯金が大切」「節約が大切」とはよく耳にする言葉。でも、どうしてそんなに貯金や節約が大切なのか、考えたことはありますか? 今回はその根本的な理由を改めて明らかにし、私達が今置かれている状況を解説します。
健康保険料、住民税がアップ。今後は電気料金も…
今年の4月から健康保険料や介護保険料が値上がりし、6月からは子どもがいる多くの世帯の住民税もアップ。来年1月からは復興税の導入も予定されており、政府は私達国民からとことんお金をしぼり取る方針のようです。
その上、電気料金も全国的に値上がりする見込み。製造の過程で電気を使うモノ、あるいはサービスも値上がりする可能性が高いですから、仮に月1万円の電気代を支払っている人なら毎月1000円程度の負担増も現実的です。
ほかにも、ちょこちょこ値上がりしているものはあります。エネルギー関連ではガスや灯油も実は値上がりしていますし、食品も値上がりしているものが少なくありません。有名なところではウナギ。不漁で大幅に値上がりし、国産はもちろん、中国産も高額です。土用の丑の日も、今年はお金がかかってしまうかもしれません。また、私の住む北海道の札幌市では、保育所の保育料が10%も値上がりしました。共働きの家計にとっては、結構な打撃ですよね。
こうして挙げ連ねていくと、私達を取り巻く環境は、日に日に厳しいものになっていることがわかります。そのうえ消費税が10%になれば、生活全般を見直さない限り、やりくりに行き詰まる家庭が激増することは間違いありません。
たとえば、年収が500万円程度の夫婦と、子どもが2人いる4人家族世帯の場合。これからの復興税や地球温暖化対策税、厚生年金の保険料増、住民税の年少扶養控除の廃止、児童手当減少などを踏まえると、消費税を除いても、概算で年間16~17万円程度は負担が増える見込みです。年収300万円程度の家庭でも、13万円前後は負担増になるでしょう。
この上に、消費税の増税が加わります。単純に食費だけで考えても、月の食費が今4万円だとすれば、年間で48万円。そこに5%の増税分を含めると、年間でプラス2万4000円ですから、月2000円の負担増ということに。家族が多いほど、必然的に消費は多くなるため、消費税の負担も大きくなります。そう考えると、子だくさん家族は、残念ながら、今後ますますやりくりに悩まされることになるでしょう。
ボーナスはもうあてにはできない時代になった
その一方で、サラリーマンの平均年収は、もう長いこと下降傾向。私は個人のお客さんの家計再生のお手伝いをしていますが、これまで5000人以上の人にお会いしてきた現場の実感からして、全体の8割以上が「収入が下がっている」「まったく上がらない」という言葉を口にしています。中には「10年前の新入社員のときと同じ給料になった」「役職はつけられたが、反対に残業などの手当てがなくなり、仕事の負担だけが増した」などの声も。
月の手取りはさほど下がらなくても、ボーナスで大きく影響を受ける場合も多いようです。この時期、ボーナスを支給されたばかりという人もたくさんいるでしょうが、やはり昨年度よりも良くなかったという声は多いようです。
ある人は、ボーナスが以前の3分の1程度になったそう。住宅や自動車のローンでボーナス払いを組み入れていたため、それが支払い不可能になり、なけなしの貯金を切り崩したということでした。またある人は、ボーナスから年に一度の家族旅行分の金額が減ったので、「今年の年末は旅行にも行けません…」と、残念そうにポツリ。
この先、いつまでボーナスが減り続けるかはわかりませんが、今はもうどんな大企業であろうと、給与やボーナスが減っても不思議はない時代と考えるべきです。ローンを組むときは、ボーナス払いは危険――それが、このご時世の常識といっていいでしょう。
やりくりに行き詰まって生活に困っても、誰も助けてくれない
このように、不況にもかかわらず税金や社会保険料が上がるのは、国の財政が悪化しているからです。となると、心配なのはやはり年金。現行の制度のまま行けば、厚生年金を受け取る場合、あとは自分で1600万円程度貯めておけば、過不足なく暮らしていけるというのが、私の見解です(※現役時代、一貫して一般的な年収で、住まいは持ち家、子どもは独立している人の場合)。
しかし、今の日本の状態を考えると、「ねんきん定期便」で提示されている金額よりも、実際に受け取る年金が減らされることは、ほぼ間違いないと思います。やみくもに不安がることはないですが、"年金が減る可能性が高い"ということは念頭に置いて、今の生活を見つめ直し、1000円でも2000円でも余計に貯めていく意識は持っておきたいところ。
私がお会いした人の中には、まったく貯金がないにもかかわらず「(将来困ったら)国が何とかしてくれる」と考えている人も少なからずいました。が、前述のように今の日本は財政がボロボロですから、困って甘えたところで助けてはくれません。生活保護というセーフティーネットはありますが、これは本来、自分の無計画のおかげで破綻した人のためのものではないので、あてにするのは間違いです。
何だかお先真っ暗な話ばかりになってしまいましたが、こうした現実を踏まえて私達が取るべき行動は、ただ一つ。自分で自分の家計を守ることです。税金が増えても、給料が減っても困らないようなお金の使い方をし、急に会社が潰れても、同時に自分まで潰れてしまわないような蓄えを持っておくことが、今何より求められていることなのです。
これまで貯金したことがない人は、まずは黙って、月収の3カ月分の貯金を目指してください。今ゼロの人は、1カ月分からでもいいです。そういった手の届きやすいところに目標を置き、まずは達成してみましょう。できない言い訳をあれこれ思い浮かべる前に、とにかくやってください。達成できたら、そこに何か思うことがあるはずです。
次回からは、不況で収入が下がり、税金などの負担が増えても貯められる家計の管理方法を、手取り足取り詳しくお話ししていきます。また、「お金が貯められるのはどんな人なのか?」という素朴な疑問にもお答えしたいと思います。
実際に、私が家計再生のお手伝いをした中には、年間100万円以上貯められるようになった人もいます。そういう人達には、共通する性質や、共通してやっていることがあるので、その点も詳しくご紹介していく予定です。
こんなご時世に打ち勝ち、自分で自分を守れる家計を、いっしょに作り上げていきましょう!
(構成/元山夏香 イラスト/斎藤ひろこ)
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