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アメリカはなぜベネズエラを空爆し、マドゥロ大統領を拘束した? アメリカが世界の警察から最強の略奪者へ変貌した今、投資家がとるべき冷徹な戦略とは?

2026年1月7日公開(2026年1月7日更新)
ポール・サイ
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 2026年の年始にアメリカはベネズエラに空爆を行い、同国のマドゥロ大統領夫妻を拘束。マドゥロ大統領はアメリカに移送され、起訴されました。

 ベネズエラ情勢は緊迫していますが、今回はベネズエラに関する目先のニュースを追うだけでなく、この機会に、歴史に基づいた長期的な戦略フレームワークを現代の事象に当てはめて分析してみたいと思います。

「海洋国家」だったアメリカは、自国の圧倒的な力で他国から富を収奪する「大陸国家」へとシフトしている

 地政学的な大局観を持つことは、混迷を極めるグローバル市場において、投資家がどの陣営に資本を置くべきかを判断するための不可欠な指針になります。

世界地図イラスト:いらすとや

 米国海軍大学のサラ・ペイン博士が提唱する「大陸国家 vs 海洋国家」のフレームワークは、現代の投資家にとって極めて冷徹な視点を提供します。

 ペイン博士によれば、海洋国家(クジラ)は自由貿易という「共有地」を維持することで繁栄し、大陸国家(ゾウ)は領土の支配と力の行使によって生存を図ります。この歴史的な対立軸がいま、投資環境の根底を揺るがしています。

 投資家リ・ルーがその文明論で指摘したように、アメリカは19世紀の黒船来航からイラク戦争に至るまで、歴史上初めて「土地を占有せず、秩序を課す」ことを中心として世界を統治した特異な海洋国家でした。

 しかし、現在のアメリカは、海洋国家としての「公共財の提供者」という役割を脱ぎ捨て、自国の圧倒的な力を直接的に行使して他国から富を収奪する「大陸国家」的な振る舞いへとシフトしています。

 今日のアメリカにとって、自国のパワーを維持することとは、アメリカの繁栄が世界にもたらす恩恵の対価を、世界全体に支払わせることを意味しています。

アメリカはなぜ、マドゥロ大統領を排除したのか? 鍵となるのは『孫子』の「死地」という戦略的概念だ

 ベネズエラのマドゥロ大統領のような存在は、アメリカにとって単なる独裁者以上の「排除すべき障害」となります。ここで鍵となるのが、『孫子』の「死地」という戦略的概念です。

 「死地」とは、孫子が定義した「九地(九つの戦場)」の1つで、退路が完全に断たれた絶体絶命の場所を指します。たとえば、背後に川や山を背負い、前方には敵がいるような場所です。

 このような死地に置かれた「死兵」が生き残るには、敵に勝つしか方法がありません。孫子は、兵士をあえてこのような場に置くことで、生き残るために通常の数倍の力を発揮させる戦略を説きました。

 しかし、大陸的指導者にとっての「死地」は悲劇的な構造を作り出します。彼らは権力を失えば、投獄や物理的な死が待っているため、まさに孫子の説く「死兵」のごとく、生き残るためには国家の全領土を焦土とし、国家の全資産を失うようなことになっても抵抗します。

 マドゥロ大統領がこの「死地」に留まり続けることは、その地域の経済秩序を破壊し、アメリカが収奪可能な富の循環を停止させることを意味します。

 かつてのアメリカは、制裁によって「グローバル市場へのアクセスを拒絶」し、相手の自浄作用を待ちました。しかし前述した通り、現在のアメリカは戦略を転換しています。

 「死地」に執着し、アメリカのシステム外で富を浪費し続けるマドゥロ大統領のような存在に対し、アメリカは直接的な強制力をもって彼を「排除」し、その背後にある資源や秩序を再びアメリカの管理下(パワーの受益圏)へと引き戻す必要に迫られているのです。

アメリカが「世界の警察」から「最強の略奪者」へと変貌した現在、投資家にとっての最善のリスクヘッジとは?

 投資の観点から言えば、このシフトは「地政学的リスク」の再定義を迫るものです。

 アメリカが「世界の警察」から「最強の略奪者」へと変貌し、アメリカのシステムに従わない陣営や「死地」に陥った地域から富を強制的に回収する側に回った以上、投資家にとっての最善のリスクヘッジは、その「収奪する側(=アメリカ)」に身を置くことです。

 アメリカは依然として世界で最も強力で、勝ち続けているチームであり、そのパワーの受益者側に立つことが、これからの分断された世界を生き抜くための唯一の正解となります。

収奪される側(敗者)の陣営に留まるのではなく、収奪する側(勝者)の資本に相乗りする冷徹さが投資家には必要

 幸いなことに、日本に拠点を置く投資家は、米国株をはじめとした米国金融市場への自由なアクセスという特権を享受しています。

 アメリカの戦略が海洋的な自由主義から、実力行使による大陸的な富の独占へと傾斜していく中で、米国資産を保有しない理由はもはや存在しません。収奪される側(敗者)の陣営に留まるのではなく、収奪する側(勝者)の資本に相乗りすること。この冷徹な地政学的リアリズムこそが、現代のポートフォリオ管理における核心となるでしょう。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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