「勝者のゲーム」と資産運用入門

経済制裁でロシア国債のデフォルト確率は80%に上昇!
ただ、もしロシアがデフォルトしても
金融システムや米国経済に及ぼすリスクは限定的だ!太田忠の勝者のポートフォリオ 第22回

2022年3月9日公開(2022年3月9日更新)
太田 忠
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
印刷向け表示

一般市民や原発への攻撃など暴挙が続くロシアの孤立は深まるばかり

 ロシアが侵攻するウクライナで両軍の攻防が激しさを増している。ウクライナの首都キエフや第2の都市ハリコフでは、ロシア軍のミサイルなどによる攻撃が一般市民に対しても無差別に広がっている。欧州最大級のサポロジエの原子力発電所を攻撃するという暴挙に出て、この地を制圧するに至っている。

 当然ながら、ウクライナに侵攻しているロシアに対する国際社会の批判が強まっている。3月2日に開催された国連総会の緊急特別会合でロシア軍の即時・無条件の撤退や核戦力の準備態勢強化への非難を盛り込んだ決議は、193カ国の構成国のうち141カ国の支持を集め、反対は5カ国、棄権も35カ国にとどまった(反対国、棄権国の大半はロシアから武器を輸入している国々であり、軍事的な依存関係が強いという特徴がある)。もちろん、法的な拘束力はないもののロシアへの風当たりの強さは明白である。国際社会から叩かれてロシアは孤立し、「ひとりぼっち」の状態になりつつある。

欧米日などの強力な金融制裁で信用危機に直面し、デフォルト懸念高まる

 さらに今や、欧米日による金融制裁でロシアは信用危機に直面している。SWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアの銀行を遮断する制裁により、通貨ルーブルは急落。債券と株式市場も急落し、ロシアの対外債務にデフォルト(債務不履行)の懸念が高まっている。

ロシア連邦中央銀行 Photo :alex56 / PIXTA(ピクスタ)

 ウクライナへの本格的侵攻を受けて、2月28日にロシアの国債や社債は急落した。2047年償還のドル建て国債は、その価値がわずか1日で半値以下となり、前週末に8%だった利回りは18%になった。ロシアは2014年のクリミア併合後、国際的制裁と原油安のダブルパンチで経済が苦境に陥った経験から、今回の制裁への備えを進めてきた。ロシアの現在の外貨準備高は6300億ドル(約70兆円)あり、クリミア危機直前の2013年末と比べて2割超多い水準にある。一方、7000億ドル(約80兆円)を超えていた対外債務は現在5000億ドル(約56兆円)を切る水準にまで低下している。

 ところが、今回の制裁は中央銀行にまで及んでいるため、せっかく積み上げた外貨準備の大半が凍結されてルーブルを支えられない状況にある。ドル建て債務の負担が急速に膨らんでいるのだ。ドル建て国債の未償還残高は約330億ドル(約4兆円)あり、4月に最初のまとまった償還を迎える。また社債などを含む対外債務の3割弱に相当する1350億ドル(約15兆円)の満期は1年以内だ。

 ロシア国債の債務不履行リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率(5年物)は2月28日に15%を突破し、クリミア併合後の6%台を大きく上回り、足元ではデフォルト確率が80%程度まで上昇している。SWIFTからロシアが締め出されることでロシア国債の利息や元本の支払いに支障が生じ、デフォルトに陥るとの警戒感である。

ロシアがデフォルトしても、金融システム全体に及ぼすリスクは限定的

 3月に入ってから世界の格付け機関も動き出した。ムーディーズはロシアの格付けを従来の「Baa3」からジャンク級の「B3」にまで引き下げ、S&Pグローバルとフィッチ・レーティングスも「投資適格級」から「投機的水準」に引き下げた。

 ロシア中銀は無制限の資金供給で銀行を支援している。政策金利も9.5%から20%に引き上げた。預金金利を高め、引き出したり、外貨に交換したりする動きを抑制する狙いだ。だが、国際決済網から遮断されるロシア銀は外貨調達が難しくなっている。金融不安から連日最安値を更新するルーブル安により、インフレを懸念して預金を外貨や物に換える動きが続いてしまう悪循環が強まっている。

 もしロシアがデフォルトすれば世界中で大騒ぎになるのは容易に想像できるが、実際にデフォルトしても金融システム全体に及ぼすリスクは限定的だと私は見ている。ロシア向けの対外与信残高は世界全体で1047億ドル(12兆円)、全世界の対外与信残高の0.3%に過ぎない。ルーブル建て国債のうち海外投資家の保有分は2割にとどまる。外貨建てでも海外投資家の保有額は200億ドル(約2兆円)程度である。

米国にとってロシア経済の存在は小さく、米国経済への影響も限定的

 また、世界最大のGDPを誇る米国にとってロシア経済の存在は小さく、ロシア向け輸出は全体の0.3%、輸入は0.7%を占めるに過ぎない。短期的にはウクライナ情勢を受けた原油価格の高騰などが物価を押し上げるが、米国自体はロシアやウクライナ経済の影響を受けるわけではない。ロシアやウクライナ情勢の影響が大きいのは欧州や新興国である。世界から制裁を受けるロシア経済が窮地に立てば結びつきの強い欧州経済は貿易、金融の様々な経路から打撃を受ける恐れがあるため、その点は留意しておく必要がある。

 ロシアのデフォルトは既定路線シナリオとしてマーケットに織り込まれつつあると思う。皆さんもご存知のようにロシアは1998年にもデフォルトを起こしているが、ロシアがドルペッグ(連動)制でがんじがらめとなり、経済や財政が最悪だった当時とは比較にならない。足元で急速に上昇している原油価格、その投機的な動きも沈静化していくはずだ。

●太田 忠

DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


ダイヤモンドZAi 2022年7月号
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2022年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードは、 本当は“ゴールド”ではなく“プラチナ”だった!? 日本初のゴールドカードの最高水準の付帯特典とは? 高いスペック&ステータスを徹底解説!アメリカン・エキスプレスおすすめ比較 おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

つみたて投資入門
最強の割安株
ZAiが作った株入門

7月号5月20日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[つみたて投資入門/最強の割安株]

◎別冊付録
75万部売れた株の本が付録で読める!

ZAiが作った株入門ダイジェスト版!

◎巻頭特集
速報!

最新決算でわかった2022年の強い株

◎第1特集
キホンからオススメ投信まで大事なコトだけ!つみたて投資入門
●キホン編
つみたてNISAやiDeCoを徹底解説
・つみたて投資は必要?
・どうなれば儲かる?
・どんな人に向いてる?
・何を買ってつみたてるの?
・オトクな制度って?

●実践編
投信を買うならこの1本!を紹介
急落や損した時対処法を伝授!

・どの投信を買えばいい?
・口座はどこで開けばいい?
・いま始めても大丈夫なの!?
・損が出てる! やめるべき?
・つみたての金額はいくらにする?
・家計が厳しいけどやめていい?
●もう始めてる5人に聞いた
つみたてデビューとリアル収支

◎第2特集
波乱や利上げで人気急騰!
割安株で値上がりと利回りゲット!

PART1:高利回り
・高配当で株主優待も充実!利回りランキング
PART2:
10倍狙い
・不人気&売られすぎ前途有望な話題株
PART3:底値が堅い
・安全・安心・割安な守りが堅い三安株
 

◎第3特集
トクするカードの序列が激変!
クレジットカード大全

・最初の1枚
・とにかく高還元
・一定利用で無料
・買物が絶対トク
・特典が魅力的
・投信積立で還元


◎人気連載もお楽しみに!
●10倍株を探せ! IPO株研究所
●自腹でガチンコ投資!AKB48ガチ株バトル
●AKB48武藤十夢のわくわくFX生活! 
●株入門マンガ恋する株式相場!
●どこから来てどこへ行くのか日本国
●人気毎月分配型100本の「分配金」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!

「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2022】 クレジットカードの専門家が選んだ 2022年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン 【全41口座徹底調査】スプレッドやスワップポイントがお得なFX会社は? FX会社比較!

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報