【今回のまとめ】
1.先物市場は7月のFOMCで「辛抱強く」という表現が消えることを織り込んでいる
2.その表現が消えて2か月後に実際の利上げが行われる
3.先物市場でのフェデラルファンズ・レートはコンセンサスを知る上で役に立つ
4.いまのところ7月表明、9月実施がコンセンサスになっている
5.これはFRBの誘導よりすこし後ろにずれている
6.このズレが将来相場が荒れる原因を作るかもしれない
現在の市場価格から求められる結論とは?
先物市場は米国連邦準備制度理事会(FRB)がフェデラルファンズ・レートの引き上げを表明するタイミングとして、7月29日の連邦公開市場委員会(FOMC)が山場だと織り込み始めています。
具体的には7月のFOMCで「辛抱強く(patient)」という言葉が声明文から消えるというわけです。
普通、「辛抱強く」現行政策金利水準を維持すると言った場合、それは「むこう2か月は、利上げしません」という意味です。これはFRB独特の話法で、一種の暗号(code)と考えて良いでしょう。
すると「辛抱強く」という表現が7月のFOMC声明文から消えると、実際の利上げは9月からということになります。
これは、私の考えではなく、あくまでも先物市場が今現在、織り込んでいるシナリオを説明しているわけです。
シカゴ先物市場をチェックせよ!
それでは「先物市場が何を織り込んでいるのか、どこを見ればわかる?」という事を皆さん知りたいと思うでしょう。これはCME(昔のシカゴ・マーカンタイル・エクスチェンジ)のCME FedWatchという無料サイト(http://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/fed-funds.html)で見ることができます。
現行の米国の政策金利、フェデラルファンズ・レートは、0~0.25%のレンジです。
なぜピンポイントではなく、ある程度幅を持たせてあるか? と言えば、それは現在、あまりにも低金利で、なおかつ市場をジャブジャブの流動性でわざと溢れさせてある関係で、ピンポイントでのフェデラルファンズ・レートの誘導が、技術的に難しいという理由によります。
従って、今後、政策金利が引き上げ始められると、0.50%、0.75%、1.00%という感じで、たぶん0.25%刻みで引き上げられ、しかもピンポイントのフェデラルファンズ・レートが示されることになると思います。
今後の予定を見れば……
今後のFOMCのスケジュールは、3月18日、4月29日、6月17日、7月29日、9月17日、10月25日、12月16日です。
このうち3月18日のミーティングで利上げが発表される可能性はフェデラルファンズ・レートが現在取引されている水準から割り出すと、0%の確率となっています。同様に4月29日のミーティングでの利上げ確率は4%、6月17日は17%に過ぎません。
微妙になってくるのが7月29日のFOMCで、直近(2月27日=灰色)のトレードでは「フェデラルファンズ・レートが0.50%以上になる」確率は36%(28.8+6.8+0.4)になっています。
次に9月17日のFOMCでは、その確率は55%になるわけです。
ここで初めて「0.50%以上」という確率の総和(具体的には35.1+16.2+3.1+0.2)が「0%ないしは0.25%」の和(具体的には11.8+33.6)を上回るわけです。
冒頭で述べた通り、FRBが「利上げしますから、ヨロシク」と市場に対して引導を渡すのは2か月前ですから、9月から利上げなら、そのシグナルは7月のFOMCで発せられなければいけないのです。繰り返し言えば、そのシグナルとは、つまり「辛抱強く」という表現をやめるということです。
ここまで説明してきたことを表にまとめると下のようになります。
なお、これはあくまでも先物市場が2月末の時点で織り込んでいる、市場参加者のコンセンサスに過ぎません。このシナリオは、今後、当然、経済統計やFRB高官の発言などに応じて刻々と変化してゆきます。
FRBの誘導と市場価格とのズレ
強いて言うならば、FRBは年央あたりの利上げというシナリオをこれまでシグナルしてきましたが、今日紹介したフェデラルファンズ・フューチャーズの実勢価格は、もう少し後の利上げを示唆しているわけです。
両者の間のズレが、1)FRBが利上げタイミングの誘導を後ろにずらす、あるいは逆に2)市場の期待が前倒しになる、というどちらかの動きにより是正されたとき、マーケットが荒れる原因になる可能性があります。
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