闇株新聞[2018年]

時価総額7000億円と目されたUSJ再上場をゴールドマンサックスが半額で譲った理由

2015年10月9日公開(2026年3月19日更新)
闇株新聞編集部
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 日本株や為替、世界経済について、明快かつ独特な視点で切り込む刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」。今回は日本郵政グループに次ぐ今年のIPOの目玉と目されていたユニバーサル・スタジオ・ジャパン運営会社の再上場が急きょ取り下げになった経緯から、世界の情報/エンタメを牛耳る大手メディア・グループについて詳しく解説!

リーマンショック後のテコ入れが大成功したUSJ

 大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)の2015年度上半期入場者数が、前年同月比18%増となる654万人で過去最高を更新しました。

 USJと言えば、運営会社のユー・エス・ジェイが今年12月にも東証1部に再上場するという話がありました。実際、5月には申請も出されて準備は着々と進められていたはずですが、ここへきて急転直下「なし」になったというのが今回のお話です。

 ユー・エス・ジェイは、もともとは1994年に大阪市が過半数以上を出資する第三セクターの会社でした。しかし、運営はうまく行かず2005年にゴールドマン・サックスの出資を受けて債務を圧縮、経営の立て直しを図ります(これによりゴールドマン・サックスが4割の株式を握る)。

 そのかいあって2006年には入場者数が5000万人を突破するなど客足が伸び始め、2007年3月には鳴り物入りで東証マザーズに上場します。

 しかし、2008年9月にリーマン・ショックがあって株価が低迷する中で、ゴールドマン・サックスはTOB(株式公開買付け)を実施します。客足が落ち込み先行きも不透明な中で、新アトラクション建設など大規模な投資を迅速に行う必要がある、というのがその理由でした。

買付け価格は時価を約25%上回る1株=5万円。2007年の公募・売り出し価格が1株=4万9000円でしたから、あまり文句のつけられないTOBだったようです。約10%の株主だった日本政策投資銀行と大阪市がこれに応じて、ユー・エス・ジェイは上場廃止となりました。

 ゴールドマン・サックスはに単純計算で1112億円を投じたことになりますが、はたしてテコ入れは大成功。再上場すれば「時価総額が7000億円程度にはなるだろう」とも見込まれていました。

あのゴールドマン・サックスが交渉で屈した相手とは?

 ところが先日(9月28日)、米国ケーブルテレビ(以下、CATV)最大手のコムキャストが、ユー・エス・ジェイの発行済み株式数の51%を1830億円で買収すると発表しました。ゴールドマン・サックスからすれば、投資金額を大きく上回る回収ができることには違いありませんが…。

 コムキャストの取得は51%ですから、ユー・エス・ジェイの時価総額は約3600億円と算定されたことになります。ゴールドマン・サックスは再上場で見込まれた時価総額の約半分の評価額で、コムキャストに株を売り渡すことになります。

 しかも、49%の株式はそのままゴールドマン・サックスの手元に残ります。再上場の計画はご破算となり、持ち株の処分にはかなり苦労しそうです。合意内容がつまびらかにされているわけではないので本紙の推測になりますが、このような契約が成立した場合、長期間(数年~10年程度)処分凍結を約束させられているケースがあるからです。

 こうしたことから、コムキャストは交渉において、ゴールドマン・サックスよりもかなり優位に立っていたことになります。

こう聞くと読者の皆さんの中には「全米最大とはいえCATVの会社があのゴールドマンよりも!?」「そもそもなぜ米国のCATV会社が日本のUSJ(の運営会社)を買収したのだ?」と思われる人もいるかもしれません。

 実はコムキャストという会社は単なるCATV会社ではなく、全米3大テレビの一角であるNBCと、6大映画会社の1つであるユニバーサル・スタジオを傘下に収める全米最大級(つまり世界最大級)の総合メディア・グループなのです。

 今回のユー・エス・ジェイ買収は、傘下のユニバーサル・スタジオの世界展開の一環であり、まさにダイナミックな米国大手メディア・グループの戦略に沿ったものです。

 言うまでもなくUSJは米国ユニバーサル・グループ各社のライセンス供与によって運営されているわけで、ゴールドマン・サックスとすればコムキャストの意向に沿うしか「出口」はなかったことになります。

世界の情報娯楽産業は5大メディアグループが牛耳っている!

 ところで、世界の大手メディア・グループは、映画、テレビ、ラジオ、出版、新聞、インターネットなどさまざまなマスメディアを傘下に収める巨大な複合企業となっています。とくに21世紀に入ってから、それぞれのメディア関連企業が買収などを通じて巨大化していきました。

 代表的なグループはタイム・ワーナー、ウォルト・ディズニー、ニューズ・コーポレーション、コムキャスト、バイアコムの5社で、いずれも米国籍の企業です。

 主要マスメディアは、ほとんどこの大手5社に入ってしまいます(下図参照)。たとえばテレビ局ではNBCがコムキャスト傘下であることは先ほどお話しましたが、ABCとスポーツ専門局ESPNがディズニー、CBSがバイアコム、FOXがニューズ、CNNがタイム・ワーナーの傘下にあります。

 ちなみに超優良コンテンツとされるNFL(フットボール)とMLB(野球)の全米中継もこれら主要テレビが独占しており、その放映権料はNFLが8年間500億ドル(6兆円!)、MLBが8年間124億ドル(1.5兆円、全米放送分だけでローカル放送局分が含まれていません)と天文学的な金額になっています。

 映画会社(製作・配給会社)では、ビッグ6といわれるウォルト・ディズニーがもちろんディズニー、ユニバーサル・スタジオ(NBCユニバーサル)が先述のコムキャスト、パラマウント・ピクチャーズがバイアコム、20世紀フォックス(現社名は21世紀フォックス)がニューズ、ワーナー・ブラザースがタイム・ワーナーの傘下で、唯一コロンビアが大手5社以外のソニー傘下(現社名ソニー・ピクチャーズ)となっています。

 出版・新聞は、CATVのコムキャストとバイアコム、エンタテインメント会社のウォルト・ディズニーでは主要事業ではなく、もともと出版社だったタイム・ワーナーも名門「TIME」誌を分離してしまっています。5大メディアの中では唯一ニューズが、ウォール・ストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズ社、ニューヨーク・ポスト、英国のタイムズやタブロイド紙のザ・サン、それにオーストラリアを含む数多くのローカル紙を傘下に入れています。

 いかがでしょう。これだけの巨大なコングロマリットを前にしては、世界のゴールドマンサックスと言えども日本のテーマパークの経営権を巡って対立したくない相手であるというのがおわかりいただけたのではないでしょうか。

 今週の「週刊闇株新聞」は最新のメルマガから一部抜粋してお届けしました。『闇株新聞プレミアム』では、世界の情報・エンタメ産業が5大グループに集約される過程で日本のソフトバンクやパナソニックやソニーが絡んだ企業買収のエピソードや、5大メディアの次なる再編ターゲットまで、さらに突っ込んだ解説をしています。

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