<今回のまとめ>
1.パリ同時テロはまだ相場に織り込まれていない
2.今週は荒れ模様の展開が予想される
3.今回のテロが経済に与える影響は限定的
4.百貨店の銘柄が相次いで悪い決算を出したのが地合いを悪くした
5.しかし米国の消費が暗転したと考えるのは早計
6.グロース株は年末のタックス・ロス・セリングを浴びる
7.オールド・エコノミー株にシフトすること
パリ同時テロはまだ欧米の株価に織り込まれていない
先週金曜日、NY市場が引けた後でパリ同時テロのニュースが入ってきました。つまりこの材料は欧米の株式市場にはまだ織り込まれていないということです。
このため今週は週初から少し荒れ模様の展開になることが予想されます。
ただ今回のテロがフランスや世界の経済に与える影響は極めて限定的だと思います。だから慌てて売るようなことはしない方が良いと思います。
折からニューヨーク市場の相場の地合いは軟調です。

先週の木曜日と金曜日の下げがきついですが、これはメイシーズ(ティッカーシンボル:M)とノードストローム(ティッカーシンボル:JWN)が連続して悪い決算を出し、相場全体の足を引っ張ったのが原因です。
両方とも米国を代表する百貨店なのですが、悪い決算の理由は異なります。
メイシーズの場合、ドル高でニューヨークに来る海外からの観光客が減っており34丁目の旗艦店における売上高が不振だったという説明でした。また消費者の嗜好が、ファッションやアクセサリーのような「モノ」から「体験型消費」に移っているという説明もされていました。
これに対しノードストロームは「8月にぱったりと客足が途絶えた」という説明でした。8月のニューヨーク株式市場の急落で裕福層のマインドに陰りが出たことがその背景にあると思います。
これらの発表を見て(米国の消費は、大丈夫だろうか?)と不安を抱く投資家が増えています。
私の考えでは失業率は低いし、最近、賃上げのニュースも多いことから消費者のセンチメントはそれほど悪いとは思えません。加えてガソリンの値段も下がっているわけですから、消費者のフトコロにはある程度余裕が出来ていると察します。

これらの事から米国の消費の先行きに余り悲観的になりすぎてはいけないと思います。
グロース株はタックス・ロス・セリングを浴びる
それを断った上で投資家の物色には明らかに変化が見られ始めています。
まずここ数年の米国の株式市場は、景気全体の動きとは無関係に業績を伸ばせて行ける企業の株を、株価収益率(PER)に関係なく買い進むというやり方が人気だったのですが、それが崩れ始めています。
とりわけここ数年に新規株式公開された若いグロース企業の株は、こっぴどく売られています。
これは連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の引上げが近いので「利上げ局面ではPERが剥げ落ち易い」という懸念から利上げに先回りした売りが出ているのだと思います。
それに加えて、これから年末にかけては、いわゆるタックス・ロス・セリングが出やすいです。タックス・ロス・セリングとは年末までに実現損を出すことで、その年のキャピタルゲインと相殺(そうさい)することにより節税を図ることを指します。
タックス・ロス・セリングは、経験則的にIPOされて日が浅いグロース株ほどきついことが知られています。したがって年末までグロース株には厳しい相場が続くと思われます。
これまで相場をけん引してきたリーダー株にも変調の兆し
先週の相場ではこれらの小型株に加えて、これまで相場をけん引してきたナイキ(ティッカーシンボル:NKE)、アンダー・アーマー(ティッカーシンボル:UA)、アルタ・サロン(ティッカーシンボル:ULTA)、スターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)、アップル(ティッカーシンボル:AAPL)などのリーダー株も値を消したのが印象に残りました。
代わって値動きが良かったのが、デュポン(ティッカーシンボル:DD)、ダウケミカル(ティッカーシンボル:DOW)などのオールド・エコノミーの株です。

狼狽は無用!強気を崩さずオールド・エコノミー株を買え
まとめると今週はかなり相場が荒れることが予想されますが、経済の見通しに変化が出たわけではないので狼狽は無用です。むしろ下がったところはクリスマス・ラリーに向けて絶好の仕込み場だと考えます。ただし買うべき株はオールド・エコノミーであって、グロース株ではないと思います。
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