世界投資へのパスポート
2018年12月3日公開(2018年12月3日更新)
バックナンバー 著者・コラム紹介
広瀬 隆雄

トランプ・習近平会談では90日の「休戦」が発表され
最悪の事態を回避! 米国株の上昇トレンドラインは
堅持されているので、慎重に投資を再開してもOK!

アメリカの関税率引き上げは90日延期!
米国株が「底抜け」するリスクをひとまず回避

 12月1日、アルゼンチンのブエノスアイレスでのG20後に実施されたトランプ習近平会談では、アメリカが関税率を引き上げることを90日延期、その間、話し合いを続けることで合意しました。

 これは、交渉の決裂という最悪シナリオが回避できたことを意味します。すでに米国株式市場はトランプ習近平会談の成功を織り込むカタチで上昇してきたので、この良いニュースがマーケットに与える影響は限定的だと思います。

 その一方で、ネガティブ・サプライズは無かったので、株式市場が「底抜け」になってしまい、大きく崩れるリスクも去ったと思われます。

 チャート的には、米国を代表する株価指数であるS&P500指数は二番底を確認したカタチになっています。

■S&P500指数チャート/日足・3カ月
S&P500指数チャート/日足・3カ月S&P500指数チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 つまり、今は慎重に投資を再開して良い局面にさしかかっているのです。ただ、1)今回のトランプ習近平会談の成果はアメリカでは必ずしも手放しに歓迎されていないということ、2)経済の先行きには陰りが見えていること、という2つの理由で、“かんかんの強気”になるのではなく、一歩一歩踏みしめながらゆっくり対応する必要を感じます。

2年後の大統領選挙を考えると
今後トランプ大統領の態度が硬化する可能性も!

 まず今回の会談では、米中貿易戦争を解決するための話し合いにはもっと時間が必要だ、という共通認識から、1月1日にアメリカが予定していた2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する現行10%関税率を25%へ引き上げることを、とりあえず4月1日まで延期することが決まりました。

 ただ、アメリカのマスコミでは「この手の引き延ばし工作は中国が得意とすることで、過去にオバマやクリントン大統領もまんまと引っ掛かった。トランプ大統領も手玉に取られている」という指摘が出ています。

 これは、大統領選挙を2年後に控えたトランプ大統領が、一番見たくない報道でしょう。したがって、トランプ大統領の態度が硬化するリスクがあると思います。

住宅建設許可件数はスローダウンしたものの
クリスマス商戦は好調!

 さて、ウォール街が注目していた大きな会談が無事終了したことで、今週以降、投資家の関心は経済に戻ってゆくことが予想されます。

 その米国経済は、ここへきてやや陰りが見えています。とりわけ、住宅市場のような金利の変動に敏感なセクターに元気が無いです。たとえば、住宅着工件数の先行指標であると言われている住宅建設許可件数は、スローダウンしています。

 また、新規失業保険申請件数(過去4週間の移動平均)は、少し上昇しています。

 幸いクリスマス商戦が良いスタートを切っているため、上記のような米国経済のモメンタムの喪失はいまのところ局地的であり、全体としては未だ大丈夫という理解で良いでしょう。

パウエル議長のハト派コメントに対し
株式市場は素直に好感

 連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、11月28日に「エコノミック・クラブ・オブ・ニューヨーク」でスピーチし、米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートが中立的と考えられる水準より「ちょっと下(just below)」のところまで来ているとコメントしました。

 これまでFRBは、FFレート(フェデラル・ファンズ・レート)は中立的と考えられる水準より「まだまだずっと下(long way)」という表現を使っていたので、これは意見変更です。

 その意味するところは、「そろそろ利上げはストップしてよい」という解釈になります。株式市場は先週、これを素直に好感しました。

来年以降の利上げに関し、水曜日の議会証言で
追加的なコメントが出るかどうかに注目

 12月19日に予定されている今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)では、大方の市場参加者が0.25%の利上げを予想しています。それが実施されれば、FFレートは2.5%になります。

 いま問題にされているのは、「その後をどうする?」ということです。

 FOMCメンバーが9月のFOMC声明文に添付された「経済予想サマリー(SEP)」で示したコンセンサスでは、2019年末のFFレートとして3.1%という予想でした。つまり今回2.5%に利上げが実施されたとして、あと2.4回分の利上げが来年実施される計算になるのです。

 これはフェデラルファンズ先物を日頃トレードしている市場参加者の予想とは、かなり違います。トレーダー達は「来年の利上げは1回限り。それも6月頃に起こる」と予想しています。

 つまり、アメリカ経済には上で述べたように陰りが見え始めているのだけれど、FRBが前回の「経済予想サマリー」で示した見解は、市場参加者の現状認識に比べて古くなっているわけです。その辺りのことに関して、水曜日の議会証言でパウエル議長から追加的なコメントが出るか注目したいと思います。

【今週のまとめ】
米経済はやや陰りが見え始めているものの
全体的にはまだ大丈夫な状況

 トランプ習近平会談では、関税率引上げに関し90日の「休戦」が発表されました。最悪シナリオが回避されたので慎重に投資を再開して良いと思います。しかし、今後大統領選挙への配慮からトランプ大統領が再び対中対決姿勢を強めるリスクは残っています。

 米経済はやや陰りが見え始めていますが全体としてはOKです。FRBのパウエル議長は先週ハト派的なコメントをしています。これもマーケットを支援する材料です。

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