超成長株投資で資産10倍計画!

ローソン(2651)の株価は昨年末から2割強の下げ。
アルバイト時給の高騰と夜間勤務がオーナーと
ローソンの収益をむしばんでいく山本潤の超成長株投資の真髄 第19回

2019年4月24日公開(2022年3月29日更新)
山本 潤
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★★☆☆☆ (5段階中2  5が最高評価)

配当が高くてリスクも少ない優良株だが…

山本潤のメールマガジン&オンラインサロン。10年で10倍を目指す超成長株投資の真髄

 24時間営業による過酷な労働が社会問題となっているコンビニ大手の一角、ローソンを取り上げます。予想配当利回りが3%近く、利益の変動のリスクも小さい優良株の一つです。しかし、投資判断5段階中2と低い評価をせざるを得ませんでした。

-論点-
1) 24時間営業見直しで数十億円規模の減益になりかねません
2) ロイヤリティの見直しでさらに数十億円規模の減益になりかねません
3) 物流費や人件費の上昇による減益インパクトも数十億円規模になりそうです
4) これらの減益懸念をどう払拭していくのか、経営の手腕が問われます

=24時間営業で疲弊するオーナー=
 セブンイレブンやローソンなどのコンビニ大手のビジネスは、まさに、フランチャイズオーナーと本部との二人三脚で成り立っています。オーナーは店舗の24時間のオペレーションを受け持ちます。一方、本部は物流や物品を店舗に提供します。

 基本的には、オーナーが開業資金を負担し、個人事業主として店を切り盛りします。

 オーナーと本社との粗利の取り分は、およそ4:6程度です。ただし、オーナーは店の粗利の中から、アルバイトなどの人件費を支払う必要があります。

 これまでwin-winの関係であったオーナーと本部ですが、昨今、様々な問題が出てきました。

問題その1) 個店レベルで深夜にアルバイトが集まらない
結果として、多くのオーナーが過労し疲弊してしまっています

問題その2) アルバイト料が高騰
アルバイト料が高騰すると、オーナー側の負担増加となります。
多くのオーナーの手取り収入が減少しています。

 もちろん、オーナーは個人事業主であり、事業リスクを背負っています。オーナーの中には、繁盛店をいくつも経営している方もいらっしゃいます。ローソンもおよそ14,000もの店舗がありますので、儲かっているところも多いのですが、多くは、ライバル店舗(セブンイレブン、ファミリーマート、スーパー、ドラッグストア)との競争の激化で売上が減ってしまっています。

 もはや、健康的にも金銭的にも、24時間営業を続けるのはかなり厳しい情勢となりました。

 

直近15年で社員は3倍、売掛金回転率は悪化


 この15年の間に、例えば、ローソンで生じた財務上の変化は以下の通りです。

1) 有形固定資産が700億円台から3,500億円へ5倍に増加
2) 正社員は3,500人が10,000人へと3倍に増加
3) 自己資本は1.8倍に増加
4) 売上は2.6倍に増加
5) 営業利益は1.9倍に増加
6) 売掛金の回転日数は10日程度が30日程度へと悪化
7) 店舗数は8,000店弱から15年で14,000店に

 ざっと見ると、15年前と比べて、投資効率はかなり悪化してしまったなという印象ですね。

 有形固定資産資産の急増は、物流拠点の整備などに起因します。PB(プライベートブランド)を拡充し、準製造業の側面(委託工場)も持つようになりました。自社ブランドで粗利を向上させる戦略です。

 店舗数が2倍になっていないのに、正社員が3倍になっていることは、垂直統合により物流やシステムや生産現場の指導などに従事する社員が増えた結果でしょう。

 売上増への努力は続きます。コンビニは多種多様なサービスを手がけてきました。飲食、ATMやコピー、宅配サービスや公共料金支払いなど、サービスを拡充していったのです。その結果、中には利益率の低い、外注に丸投げするサービスもいくつか付与されることになりました。

 その全てに対応すると利益率は落ちます。その一方で、現場への負荷は増えます。

 現在のコンビニ店舗では、アルバイトといえども、店員がどれだけ多種雑多な業務をテキパキとこなさないと回らないことか。比べる対象ではありませんが、まったりした役所や銀行の窓口と比べるとコンビニの店員さんのテキパキさは格段に上です。全然、違います。

 

コンビニ経営は大きな曲がり角に

 いま、ローソンをはじめとするコンビニ経営は曲がり角です。

 株価は経営者にすでに警告を発しています。株価指標では15年前はPER40倍でしたが、現在は20倍台。PSRは1.8倍が0.9倍へ低下しました。短期的にも、コンビニの店長の苦境が報道されない日はないほどです。昨年末から株価は下落基調で2割近くも低下しています。

 コンビニオーナーの窮状は、自店舗の近くにライバルが出店したり同じローソン店が出店するケースがあることです。ドミナント戦略をとるコンビニ各社は、物流効率が高まるように同じ地域に多数の出店を認める傾向があります。その煽りを受けるオーナーも中にはいるのです。本部は味方であると思っていたのにとオーナーの方々はがっかりしてします。本部がライバル店を近所に出せば、まるで日露戦争の旅順の攻略(古い!)のように、味方(オーナー)の背中めがけて味方(本部)からのドミナント砲が炸裂させるようなもの。本部利益のために、オーナーの利益が犠牲となる構図に見えるのはよくないですね。

 そして、前述の通り、アルバイト時給の高騰と夜間勤務がオーナーの収益と健康が共に犠牲になりつつあります。

 この事態に行政が動き出しました。世耕経産相大臣がコンビニ8社のトップと今月に会談を実施。人手不足やオーナーの満足度の低下について意見交換を行いました。また、最大手のセブンイレブンは24時間営業の見直しを視野に入れて社長を交代しました。

 

24時間経営の見直しでオーナーの収益は上がる!

 24時間営業をどの程度見直す必要があるかといえば、私の意見では、全面的に夜間営業を見直すことで、オーナー側の収益はむしろ増加すると考えています。

 理由は単純で、客が深夜帯にほとんど来ないからです。一方で深夜のバイト代は高いからです。余分な高い人件費が削減できるからです。

 全体の少なくとも1-4割は、深夜営業を見直す方がオーナー収益が上がるのではないかと個人的に推定します(特に地方店舗)。そうなれば、オーナーは手取りがかなり増加するでしょう(それ相応の工夫は必要となるでしょうが)。

 深夜営業をやめれば人手不足の問題もオーナーの働き過ぎの問題も一度に解決するのです。

 深夜12時から6時までの6時間は一日の1/3ですが、売上に占める割合はごくわずかでしょう。とはいえ、24時間営業の見直しによって本部の手取りは減ります。減るといっても数十億円に抑えられるのではないでしょうか。

 さらに、オーナーと本部との取り分についてですが、現状、粗利の4割から7割を本部がとっていますが、ほんの少し、そうですね、数%程度の見直しが必要になるはずです。そうしないとオーナーの成り手はいずれいなくなります。例えば、ロイヤリティが1%減少すれば(オーナー側が1%余分にとれば)、やはり数十億円の減益要因です。オーナーとしては、せめて、このぐらいはやってもらいたいですね。

あとは、本部の抱える10,000人の臨時社員の給料の上昇や物流コストの上昇が見込まれます。これも数十億円程度のコストアップになるでしょう。

 ある程度の値上げや合理化で吸収できるとして、やはり、トータルでは、150-250程度の減益要因となるでしょう。

 ただ、ローソン株は、配当性向が高いので、減益では即、減配懸念が生じます。

 こうした逆境の中で、本部は知恵を絞って、様々な施作を打ち出すでしょう。例えば、無人店舗システムを導入していくことで、苦境を乗り切ることも可能かと思われます。

 

コンビニオーナーの命が何より大切!

 今や、国民の生活インフラとなったコンビニの現場が疲弊しています。

 私も、深夜の営業停止はやむなし、便利さよりも、大切なものがある。それはオーナーの命だと思うのです。

 本部のロイヤリティの引き下げと現場の24時間営業の見直しの実施は、社会的な要請でもあります。そうしなければ、店舗運営に支障が出る店舗があるからです。オーナーは本部やライバル店を恐れるあまり、24時間営業の自粛には後ろ向きかもしれません。自分からは止めたいとは言い出せない雰囲気があります。しかし、勇気を持って夜間の損益を分析した上で、自粛の要望をしていただきたい。そうすれば、前述の単純な理由により、オーナー収益はよくなる可能性が高いと思います。

 オーナーの皆様には、大変な中で日頃の店舗を継続していただき、この場を借りてお礼を申し上げます。私は、コンビニ経営に対して、敬意を持ち感謝を忘れずに、お店の方々に接するよう、これからも心がけたいと思います。

 本部の社員の皆様におかれても、現場店舗の大変な人手不足の中、連日のヘルプに入っていらっしゃって、大変、お疲れ様です。ご無理をしないでください。なんとかならない時は、オーナーに頑張ってもらうのはもう無理ですので、お店を閉めるしかないのです。

 それでも、本当になんとかしようと思ったら本部の資本でなんとかすべきです。本部がしっかりと追加のコストをかければ全部解決する問題なのです。社員の過剰な労働で全てを解決しよとする必要はないのです。現場の実態に合わせて、適宜、営業を縮小すればよいと思います。

 お盆やお正月を家族で祝えない人々の上に成り立つシステムは人道的ではないと個人的に思います。

 夜間にしか買い物ができない方々へ。大変かもしれませんが、便利さを当たり前と思わないで欲しいのです。事前に準備をして、ほんの数時間前か、前日に、お店の開いている時間に、まとめて買い物を済ませて欲しいと思います。

 昔は24時間営業などありませんでした。それがいつの間にか当たり前になってしまったのです。

 平日も週に一回ぐらいの休日はあっても、おかしくありません。今は週休3日の時代、働き方改革の時代なのです。

 コンビニトップ経営者の皆様におかれましては、これらの社会的要請を真摯に受け止めて、株主の利益とオーナーの利益とがバランスよく両立するように努力していただきたいと思います。そして、それは可能かと思います。

 私のようなアナリストが、減収要因やコストアップの一方的な要素を書き立てましたが、経営努力で緩和可能な課題かと存じます。

 私たちもオーナーへの感謝の意を示すために、ゴミはコンビニに捨てないで持ち帰るなどのユーザー側でできることをしたいものです。客だからといってなんでも許されるのではなくて、客として少しでもオーナーの負担を減らす努力も必要ではないでしょうか。

ローソン(2651) /日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)

この連載は、10年で10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。


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