日本の株式市場は、引き続き米中貿易摩擦への警戒感が根強く、トランプ米大統領の発言をはじめとした外部要因に振り回される相場展開が続いています。
米国では2020年11月3日に大統領選が予定されています。トランプ大統領は再選に向けて成果を上げることを急ぐあまり、予想外のタイミングでの発言が相次いでおり、日本の投資家にとっても予断を許さない状況となっています。
そんな中、日経平均株価は「2万円」の底堅さが意識されており、足元では2万500~2万700円のレンジ相場となっています
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先週末、中国による米国への報復関税が発表されたことで米国市場が急落し、その影響で今週の日経平均株価も大きく下げて始まりました。しかし、それだけの下落にもかかわらず、売買代金は2兆円を下回る薄商いの状況でした。商いが膨れない要因としては、やはり米中貿易摩擦など外部環境の不透明さがあるでしょう。
「外部要因の不透明さ」だけではなく、
「東証再編問題」も日本株に投資しづらい要因に!
現在、日本株に投資しづらい要因は、外部要因の不透明さだけではありません。その他の要因のひとつとして「東京証券取引所の再編問題」が挙げられます。
東証では、
1)各市場区分のコンセプトが曖昧
2)持続的な企業価値向上の動機づけが不十分
3)機能性と市場代表性を備えた指数が不在
といった理由から、現在の「東証1部」「東証2部」「JASDAQ」「マザーズ」という市場分類を、新たに時価総額を基準にした「東証プレミアム」「東証スタンダード」「東証エントリー」の3市場に再編する案が検討されています。
現在の東証1部にあたる最上位市場・東証プレミアム市場の上場基準については未だ発表されておらず、「時価総額500憶円以上」などさまざまな予想がされてきましたが、現状では「時価総額250憶円以上」がコンセンサスになっています。
最近、東証の再編についてこれといった報道はありませんが、この結果が出ないうちは、国内外の機関投資家などのファンド運用は手掛けづらくなるでしょう。それは、現在の東証1部にあたる東証プレミアム市場に入るかどうかで、その銘柄や市場全体の需給が変わってくるからです。
東証1部構成銘柄で組まれているTOPIX連動型のインデックスファンドを運用している場合、仮に東証プレミアム市場が「時価総額250憶円以上」で線引きされると、時価総額250億円未満の企業は組み入れ銘柄から除外される形になります。つまり、「除外銘柄は売られる」という需給が発生します。実際は猶予措置が取られると考えられますが、流動性の低い銘柄は売却により大きく下落する可能性もあります。
一方で、他市場から組み入れられた銘柄は、新たに購入する必要があります。売られた銘柄の売却金額の範囲で新規組み入れ銘柄を購入できれば大きな影響はありませんが、購入金額に足りなければ、他の構成銘柄の一部も売って資金を手当てすることになります。そのため、他の銘柄の需給にも影響を与えるわけです。
こうした事情から、実際に「東証再編」が実施された場合にどの程度の銘柄が東京プレミアム市場から除外されるか誰にも判断できないため、あえて今の段階でポジションを積み上げることは避ける傾向が出てきます。
特に「時価総額250億円」というボーダーラインに近い銘柄に関しては、割安感があったとしても積極的には新たなポジションを積み上げづらくなり、確実に東証1部に残るであろう時価総額の大きい銘柄の売買に資金が集まりやすくなっています。
「外部要因」や「東証再編問題」の影響を受けづらい銘柄を
スクリーニングで発掘!
このような現在の日本の株式市場の状況を踏まえ、今回は「外部要因」や「東証再編問題」の影響を受けづらい銘柄をスクリーニングによって発掘したいと思います。
まず、「東証再編問題」の影響を受けづらい銘柄のスクリーニング条件として、現在、東証1部に上場しており、再編後も東証プレミアム市場に残るであろう「時価総額が250億円以上」であることとしました。
「東証再編」の具体的な内容が公表されると、東証プレミアム市場に残る銘柄へは海外勢によるファンド資金の流入が増えることが期待できます。海外勢のシェアが6割を超す東証1部銘柄へのインパクトは大きいでしょう。
次に、外部環境に影響されづらい銘柄を探す条件として、財務健全性を表す「ネットキャッシュ」に注目しました。
ネットキャッシュとは、現預金と短期保有の有価証券の合計額から有利子負債を差し引いた数値ですが、このネットキャッシュが多いほど不況時の抵抗力が強いと言われています。
・ネットキャッシュ = 現預金 + 短期保有の有価証券 − 有利子負債
財務が健全であれば、もし外部環境の悪化が長期化したとしても、耐えられる可能性が高まります。また、今後の成長投資のほか、自社株買いや配当増資といった株主配分なども期待できます。具体的なスクリーニング条件としては、「ネットキャッシュ÷時価総額が30%以上」としました。
その他に、財務の健全性や将来的な成長性などをみるために、「有利子負債がゼロ(無借金)」「営業利益GAGR(年平均成長率)が5%以上」「今期増収増益企業」もスクリーニング条件に加えました。
スクリーニング条件をまとめると、次の通りです。
(1)東証1部上場
(2)時価総額250億円以上
(3)ネットキャッシュ÷時価総額 30%以上
(4)有利子負債ゼロ
(5)営業利益GAGR(年平均成長率)5%以上(予想含む3年間)
(6)今期増収増益計画
このスクリーニングにより、以下の5銘柄に絞り込みました。
【日本精化(4362)】
化粧品原料をはじめとするファインケミカルメーカー
ネットキャッシュ÷時価総額:43.3%
営業利益GAGR(年平均成長率):11.2%
日本精化(4362)は、化粧品原料をはじめとするファインケミカルメーカーです。2020年3月期の第1四半期業績は、営業利益が前年同期比1.2%増と小幅ながらも増益での進捗でした。工業用製品では、化粧用機能原料が減少しましたが、精密化学品分野において機能性樹脂や医薬用リン脂質の販売が増加しています。
現在、株価は調整が続いていますが、昨年12月の安値水準まで下げており、底入れからのリバウンドが期待できます。
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【アルファシステムズ(4719)】
情報通信システムのソフトウェア開発を中心に事業を展開
ネットキャッシュ÷時価総額 43.4%
営業利益GAGR(年平均成長率) 6.2%
アルファシステムズ(4719)は、情報通信システムのソフトウェア開発を中心に事業を展開しています。2020年3月期の第1四半期業績は、営業利益が前年同期比33.2%減と減益での進捗でした。ただし、2019年3月期は7期連続増収で過去最高の売上高、営業利益は4期連続で増益だったので、その反動でしょう。システム分野は季節性もあるので、「5G分野」などでの今後の受注増に期待したところです。
株価は、決算が嫌気されて下落した後にリバウンドをみせましたが、13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線を上値抵抗線として足元は弱含んでいますので、まずは底入れを見極めたいところです。
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【DTS(9682)】
26週移動平均線と52週移動平均線が下値支持線に
ネットキャッシュ÷時価総額 31.6%
営業利益GAGR(年平均成長率) 8.3%
DTS(9682)は、金融や保険、情報通信、製造業向けシステム開発と保守サービスなどを提供しています。2020年3月期の第1四半期業績は、営業利益が前年同期比25.3%増と順調な進捗でした。金融分野が前年同期比でプラスに転じ、また法人ソリューション分野も好調に推移しています。また、第1四半期は、四半期決算開始以降、初めて営業利益率が10%超となりました。
株価は、決算が評価されて高値を付けた後で調整が続いていますが、週足では26週移動平均線と52週移動平均線が下値支持線として機能しています。
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【アイコム(6820)】
世界市場でアマチュア用無線通信機器の新製品が好評
ネットキャッシュ÷時価総額 71.5%
営業利益GAGR(年平均成長率)98.9%
アイコム(6820)の事業領域は、「無線通信」分野です。業務用無線機器やレジャー用無線機器、アマチュア無線機器のほか、無線LANシステムなどのネットワーク機器を展開しています。
2020年3月期の第1四半期業績は、営業利益が前年同期比69.4%増と順調な内容でした。国内市場のほか、北米、ヨーロッパ、アジア・オセアニアの各市場でも、アマチュア用無線通信機器の新製品が好評でした。
株価は決算を評価する動きがみられましたが、足元では調整が続いており、決算で急伸する前の水準まで下げています。調整が一巡したことで再上昇も意識されているので、押し目狙いのスタンスがおすすめです。
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【日坂製作所(6247)】
レトルト米飯製造設備の大型案件が売上に貢献
ネットキャッシュ÷時価総額 56.1%
営業利益GAGR(年平均成長率)14.3%
日坂製作所(6247)は、染色仕上機器をはじめ、プレート式熱交換器、レトルト調理殺菌装置、ボールバルブなどを手掛けています。
2020年3月期の第1四半期業績は、営業利益が前年同期比10.5%増でした。熱交換器事業は国内化学業界、船舶向けの更新・メンテナンス関連の売上が好調。食品機器部門でレトルト米飯製造設備の大型案件があったほか、染色仕上機器部門でも国内更新案件が好調に推移しました。
株価は調整トレンドが継続しており、昨年末の安値水準に接近しているので、底入れを見極めたいところです。
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前述のように、現在の日本市場は、米中貿易摩擦などの外部環境のほか、売買代金が連日で2兆円を下回り需給面でも売買のしにくさ意識されていますが、やや長期目線でみると財務体質の良い企業であれば安定的な株価形成が期待できます。また、外部環境が安定化してくる局面においては、時価総額の大きい銘柄にはファンドの資金流入が見込めると考えられます。
それらを意識した今回のスクリーニングの結果を、ぜひ参考にしてください。
【※今週のピックアップ記事はこちら!】
⇒2020年・夏までの日経平均株価の値動き予想を公開! “2万3000~4000円に上昇”がプロの共通見解だが、消費増税や米中貿易摩擦で一時的には“2万円割れ”も!?
⇒“株価大化け”も狙える「5万円株」の中で、アナリストのイチオシ銘柄を紹介! 増収増益&増配を続ける「三菱UFJリース」、株主還元に積極的な「いちご」に注目!
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