先週の米国市場は急反発!
主要3指数がそろって過去最高値を更新
先週の米国株式市場は急反発しました。2月6日の木曜日にS&P500指数が過去最高値の3347.96を付けたほか、ナスダック総合指数もザラ場で過去最高値の9575.66を記録、ダウ工業株価平均指数(NYダウ)も過去最高値の2万9408.05に達しました。
S&P500指数チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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その後、2月7日の金曜日は、週末を前にしてさすがに利食いが出たものの、結局、先週1週間の騰落率はS&P500指数が+3.2%、ナスダック総合指数が+4%、ダウ工業株価平均指数が+3%でした。これは、週間パフォーマンスとしては2018年11月以来最も良い成績です。
ドットコムブームと酷似する現在の米国株式市場では、
当時と同様に「ゲノム創薬」が注目される流れに!?
現在の米国の株式市場は、1990年代後半のドットコムブームのときに酷似しています。
当時は米国経済のひとり勝ちでした。その反面、それ以外の国の経済は、アジア通貨危機や日本の金融機関の破綻など全般的に厳しい環境でした。その関係で各国は金利を低く維持し、それがアメリカの株式市場のバブル相場を助長しました。そうした状況は、現在の株式市場に非常によく似ています。
その当時は、最初インターネット株から熱狂が始まり、その後にゲノム株へ物色が広がりを見せました。つまり、先端技術のストーリーが片端から買われたのです。その流れで考えると、今回もドットコムブームのときと同様に、「ゲノム創薬」が注目される可能性があります。
そこで「ゲノム創薬って、何だ?」ということを復習しておきましょう。
人間の遺伝子情報をもと薬をつくる「ゲノム創薬」は、
一時ブームになるもののコストの高さが実用化の壁に!
人間のカラダは、もともと1個の受精卵からつくられます。受精卵は、それ自体が細胞で、2個⇒4個⇒8個⇒16個⇒32個……と、どんどん分裂して増殖。その後、特定の機能を持った細胞に分化し、心臓の細胞、皮膚細胞、神経細胞……という風にだんだん人間のカラダになっていきます。
成人のカラダには、約40兆個もの細胞があり、それぞれの細胞には、染色体と呼ばれる23対の棒状の構造体があります。23対の染色体に入っているゲノム(遺伝情報)を、ひとまとめに「ヒトゲノム」と言います。そこには、人が一生を終えるまでの命のロードマップが入っています。
各染色体には、折りたたまれた長いDNAが1分子ずつ入っています。DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基から構成された分子で、それらの並びで遺伝情報を記録しています。23本の染色体の中にあるDNAを全部一列に並べると長さ1メートルにもなり、そこに書かれた情報は合計すると30億文字になります。
1999年頃、「ヒトゲノム計画により、ひとりの人間のゲノムを全部解読するぞ!」というゲノム・ブームが起きましたが、その大きな目的のひとつが「ゲノム創薬」でした。
人の遺伝子には、文字配列がズレてしまいうまく働かなくなった“ニセ遺伝子”や、過去にウイルスに感染したときの残骸、その他のバグがあります。それらが原因で起こる疾患が「遺伝子疾患」と呼ばれるものです。ヒトゲノムの解析によってそのメカニズムを解き明かせば、そうした遺伝子疾患による病気を治すことができるのです。
ゲノム創薬とは、解析されたヒトゲノムの情報をもとに、遺伝子疾患に対してより効果の高い新しい薬をつくることを言います。
ただ、1990年代のヒトゲノム計画では、たったひとりの人間のゲノムを全部解読するために約30億ドルもの費用がかかりました。当時、「これでゲノム創薬が可能になる!」と我々はエキサイトしましたが、ハッキリ言ってコストがバカ高いので、個人の遺伝子に合わせたカスタムメードの治療、すなわち「パーソナライズド・メディスン」は「夢のまた夢」でした。
その後、ゲノム解析のコストが大幅に下がり、現在ヒトゲノムを全部解読するのに必要なコストは10万円を切っています。あと数年もすれば、1万円くらいには値下がりするでしょう。このドラマチックなコストの低下こそ、ゲノム創薬が現実味を帯びてきた理由です。
「テンエックス・ゲノミクス」は、
「ゲノム創薬」に欠かせない高性能DNAシークエンサーを製造
ゲノム創薬で一番期待が持たれているのは、腫瘍、癌など血液にまつわる病気の分野です。その理由として、血液は全身を自由に循環しているので、遺伝子のバグを人工的に訂正した後、体内で自然にその間違いを治して行くことが行われやすいからです。
それを実現する際にまず必要になるのは、「DNAシークエンサー(遺伝子塩基配列高速読出し装置)」という機器です。現在、その市場の年間売上高は35億ドルですが、4年以内に200億ドルになると言われています。つまり、年率+40%で成長することが見込まれているのです。
今後、癌などの診断では、医者が当てずっぽうに判断をすることはどんどん減り、臨床で分子診断を活用することが一般化すると予測されます。そこでは血液サンプル生検(Liquid biopsy)が一般化すると思われます。また、癌細胞や組織に生じる遺伝子の変化を検出する固形腫瘍プロファイリングも行われるようになるでしょう。
つまり、癌の臨床判断が試行錯誤的な予測からエビデンスに基づくものへと変化するわけです。この変化は、すでに現実のものとして起こりつつあります。
そうした診断で重要になるのが、DNAシークエンサーの性能です。
かつてのDNAシークエンサーは「解像度」が低かったです。1990年代にブームとなったヒトゲノム計画は、言ってみればDNAの「部品リスト」をカタログ化したものに過ぎず、「その部品が具体的にどういう働きをするのか?」という問題までは踏み込めませんでした。
しかし、ゲノム創薬を実現するには、もっと高い解像度で分析しなければなりません。そのような解像度の高いDNAシークエンシングを「ディープ・シークエンシング」と言います。
テンエックス・ゲノミクス(ティッカーシンボル:TXG)は、その高い解像度での分析を可能にしたDNAシークエンサーの機器ならびにソフトウェアのメーカーです。
テンエックス・ゲノミクスの製品が世界の研究者の手元に届き始めたことで、この最新鋭ツールを使った学術論文が爆発的に増えています。これにより、従来の方法では困難だったゲノムの構造変異(欠失、挿入、転座、融合)などがきめ細かく分析できるようになり、パーソナルなゲノム療法が可能となってきています。
遺伝子を編集するための最新技術を持つ、
「クリスパー・セラピューティックス」に注目
ディープ・シークエンシングを臨床に活用する場合、同一領域を複数回、時には数百回もシークエンシングします。その際にDNAシークエンサーと同じく重要になるのは、遺伝子のバグを訂正する技術です。それに関しては、現在、「クリスパー・キャスナイン(CRISPR-Cas9)」と呼ばれるタンパク質を利用して遺伝子を編集する手法が注目を浴びています。
クリスパー・キャスナインを使用すると、驚くべき正確さでターゲットの遺伝子のバグを訂正することができます。
クリスパー・キャスナインは「細胞が過去にどんなウイルスに遭遇したのか?」を記録にとどめ、後々の世代までそれを継承します。すると、一度そのウイルスを克服したら、後々の世代まで細胞を保護することができるのです。例えて言えば、過去に受けた予防接種記録のようなものです。
体内にウイルスのDNAが挿入されると、細胞はRNAと呼ばれる分子のコピーをつくり、クリスパー・キャスナインと1セットになって外敵に対して目を光らせる歩哨(ほしょう)のような働きをします。そしてこの歩哨の集団が、ウイルスのDNAの2重らせん構造を、ちょうどハサミで切るように切断して撃退するわけです。
クリスパー・キャスナインは事前にプログラム可能であり、DNAの特定の場所を捜索、発見、切断するように仕向けることができます。この性質を利用すれば、遺伝子を編集することができます。これは、例えて言えば、ワード・ソフトウェアでミススペルがアンダーラインされたら、その箇所だけを修正するのに似ています。
一旦、バグのある2重らせん部分をクリスパー・キャスナインを利用して切断、除去すれば、後は細胞が2重らせんを再生する能力によって自然に正しいDNAが勝手に再生されます。その際、修復されるべき箇所に新しい遺伝子情報を挿入することも可能です。
この分野での注目企業にはクリスパー・セラピューティックス(ティッカーシンボル:CRSP)があります。
⇒クリスパー・セラピューティックス(CRSP)の最新株価はこちら!
「ガーダント・ヘルス」は、
血液サンプル生検などによる包括的なサービスを提供
その他のゲノム創薬関連としては、血液サンプル生検(Liquid biopsy)などのツールを包括的に活用し、腫瘍の疾病をトータルに管理・治療してゆく包括的サービスを提供するガーダント・ヘルス(ティッカーシンボル:GH)という企業があります。ガーダント・ヘルスは、末期癌患者だけでなく、癌のリスクがある健常者のテストも行っています。
【今週のまとめ】
米国株式市場がバブルの様相を見せる今こそ、
「ゲノム創薬」関連銘柄をチェック!
先週の米国株式市場はしなやかに反発し、米国の主要株価指数はいずれも過去最高値を更新しました。マーケットの底堅さが確認されたわけです。新型コロナウイルスの脅威がいまだ存在することから世界各国は今後も低金利を維持しないわけにはいかず、それがバブルを誘発しやすい状況をつくっています。
1990年代後半にも今と酷似する状況があり、そのときは物色の矛先がインターネット株からゲノム株へと広がりました。
いまゲノム創薬は、DNAシークエンシングにかかる費用が低下したことで、コスト的にも実現可能になりました。このため、今後は続々とゲノム創薬やゲノムを活用した疾病のモニター、加療が実現すると思われます。
具体的な銘柄としては、テンエックス・ゲノミクスとクリスパー・セラピューティックス、ガーダント・ヘルスに注目してください。
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