「合格保証制度は使えない」と伝えた
それでも756万円の支払いを命じられた
和田氏の塾は、「6年間通い続けて、どこの医学部にも受からなければ払い続けた授業料を全額返金する」という合格保証制度を売りにしていた。これが鍵となった。
事の経緯はこうだ。和田氏によれば、この生徒は中学1年生の入塾時点で、相対的な学力は高くなかったという。そこで6年間、生徒に合わせた丁寧な指導を行い、中レベルの医学部なら合格できる力が付いた。しかし、東大理三の判定は春の時点で最低のE判定。秋の東大模試でも440点満点中100点も取れず、2桁の得点だったという。
この生徒の志望校は東大理三、慶應義塾大学、順天堂大学、東京慈恵会医科大学という医学部の中でも最難関層に位置する4校だった。そこで和田塾側は、入試間近の面談で、この4校では安心できないので、合格保証の対象にならないことを伝えた。一つでも合格できれば、その後の受験で精神的に楽になるため合格の可能性が高い医学部を複数受験することを勧めたのである。
ところが生徒の保護者は「落ちたときのことは考えたくない」と言って拒否。結果は、和田塾側の見立て通り全て不合格となった。勧めた大学を受けて不合格なら授業料を返還したが、受かる見込みが低い大学だけを受けたので、返還を拒否。すると生徒側が「合格保証制度」を盾に、授業料の返還を求めてきた。
和田塾側は事前に「保障制度の対象にならない」ことを伝えていたため、まさか敗訴するとは思わなかったという。しかし、3月13日、東京地方裁判所は被告である和田塾に756万円の支払いを命じた。原告の請求金額は1200万円で、6年間の授業料だけが支払い対象とはなったものの、入学案内に「学力に応じた大学を受験した場合のみ合格を保証する」などの注釈を記さなかったことが被告の落ち度とされたのだ。