【今回のまとめ】
1.米国、日本の株式市場は堅調
2.円安トレンドは今後も続く
3.新興国の成長には下方修正が入りやすい
4.貿易の成長に変調が見られる
5.先進国重視のポートフォリオを堅持せよ
堅調な株式市場
先週の米国株式市場は堅調でした。ダウ工業株価平均指数は週間ベースで+0.6%、S&P500指数は+0.4%、ナスダック総合指数は+0.1%でした。

為替はこのところ再び円安になっており、これが日本の株式市場の支援材料になっています。

円安トレンドは今後も持続可能なのでしょうか? 今日はマクロ経済の視点から、この点について考えてみたいと思います。
量的緩和政策は今後も継続される
リーマン・ショック以降、米国の連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日銀の各中央銀行は極めて緩和的な金融政策を維持しています。
このような緩和的な金融政策は、まだ当分継続されると考えられます。そのひとつの理由は過去の景気後退の局面と比較して、今回(下のグラフの紫色)のリーマン・ショック後の景気回復は、極めて弱々しい事が指摘できます。

アメリカは大胆な緩和をいちはやく採用しました。欧州はギリシャ危機に際して、大胆な金融緩和より財政の切り詰めによる難局打開を当初指向したため、景気回復が遅れています。日本は今からちょうど一年前にアベノミクスを打ち出し、抜本的な景気対策に取り組みはじめました。
この関係で、景気回復の順番は米国が先行しており、ユーロ圏ならびに日本は後追いする格好になっています。下は先進国を中心とした34カ国で構成される経済協力開発機構(OECD)による、世界のGDP成長予想です。

日本の矢印が下向き(赤)になっているのは、消費税の増税の影響です。これは悪いことではなく、良いことです。
なぜなら相対的に見た景況感ではアメリカの方が日本より強く感じられますので、それはドル高要因となるからです。特に2015年には日本のGDP成長率が主要経済の中で最も低くなるので、これは長期的に見ても円安基調が続くことを示唆しています。
世界貿易のパターンに変調?
さて、先進国(=OECD)諸国の成長見通しは、今年5月の予想と現在の予想でほとんど変化していません。

ところがBRICsの成長見通しは2013年と2014年の両方に関してかなり下方修正されました。

この一因は中国がこれまでの輸出中心の経済運営から、よりバランスのとれた成長へと構造転換を試みているからです。
下は世界貿易が世界のGDPに占める割合を示したグラフです。これを見ると貿易が世界のGDPに占める割合が、ここへきて伸び悩んでいることがわかります。

この現象は、中国の輸入と輸出の成長率が鈍化していることからも確認出来ます。

BRICs諸国は主に貿易の成長と固定資産投資の二つの要因によって急成長してきました。現在はその両方ともが曲がり角に来ています。
この結果、新興国のGDP成長率には下方修正が入りやすくなっています。これは米国や欧州をはじめとする先進国のGDP成長率が上方修正されやすい局面に入っているのと好対照です。
もともとアメリカの投資家はドル高局面では外国の株式への投資は消極的です。これは為替で損することに米国の投資家が敏感だからです。従って、今の環境では米国から新興国にどっと投資資金が向かうシナリオは考えにくいです。
そのことは、引き続き、アメリカや日本などの先進国の株式市場が選好されることを意味すると思います。
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