【今回のまとめ】
1.新年に入ってからの米国株は「景気が強すぎる」という懸念から安い
2.失業率が改善し過ぎるとFRBのターゲットに到達してしまう
3.FRB議長交代期は市場がピリピリする
4.株式の投資家は、慢心し過ぎ
新年に入ってからの米国市場は軟調
新年に入ってからの米国株式市場は軟調な展開です。2014年に入ってからの2日間の立ち合いでダウ工業株価平均指数は-0.64%、S&P500指数は-0.92%、ナスダック総合指数は-1.07%下落しました。
アメリカの株式市場が軟調に始まった原因は、皮肉にも米国経済が予想より強いという印象が投資家の間に広まっていることによります。
先週木曜日に発表された新規失業保険申請件数は+33.9万件で予想の+34.5万件より少なく、景気の強さを印象付けましたし、12月のISM製造業景況指数も57.0と予想の56.9を上回っています。

これは(ひょっとすると次の雇用統計で失業率がまた急改善する可能性があるのでは?)という考えを投資家の間に植え付ける効果がありました。
失業率が鍵に
前回の失業率の発表(11月)では失業率が一挙に0.3パーセンテージ・ポイント改善して7.0%になりました。

かねてからバーナンキ連邦準備制度理事会議長は「失業率が6.5%になったら、量的緩和政策を再考する」と述べてきました。するとこのターゲットに達するまで、あと0.5パーセンテージ・ポイントしか無いわけです。
過去2年間の失業率の改善の足取りを振り返ると、大体、平均して毎月0.076パーセンテージ・ポイントのペースで失業率が減ってきました。するとこのペースで着実に失業率が低下すれば、7月までにはターゲットである6.5%に届いてしまうのです。

もし今後数回の雇用統計の発表を通じて失業率の改善のペースが早まっているような印象が出ると、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)でバーナンキ議長が示した「とりあえず毎月100億ドルのペースで債券買い入れプログラムを縮小してゆく」という判断が「手ぬるすぎる」と市場から受け止められるリスクがあるわけです。
目先の高値の見極めが肝心
普通、11月から1月にかけては季節的にアメリカ株が強い時期にあたります。その意味ではなるべくギリギリまで今ある投資ポジションを維持したいわけですが、それも見極めが肝心です。
なぜなら今年は大統領選挙から数えて2年目にあたり、それは中間選挙と呼ばれる下院選挙の年に当たるからです。この年は「ミッドターム・コレクション」と呼ばれる株式市場の調整が訪れることが経験的に知られています。調整のメドは高値から最大で20%以内です。
通常、「ミッドターム・コレクション」は絶好の買い場であり、その安値から翌年の高値までは平均して+48%の上昇が見込まれます。ただ、折角の買いチャンスが到来しても、先立つキャッシュがなければ出動できません。
従ってこれから数カ月の投資のポイントは「どこでキャッシュをこしらえるか?」という事に帰着するのです。
新しいFRB議長が就任した直後は、気まずいムードが普通
1月6日にはいよいよ上院がジャネット・イエレンFRB議長の指名承認の投票を行います。このところ米議会は民主・共和党の対立をトーン・ダウンしているので、この承認投票はさほど問題無く通過すると思われます。そして2月1日からイエレン議長が正式就任という運びになるわけです。
過去のFRB議長交代の歴史を振り返ってみると、新しい議長が着任した直後は、投資家と新議長の腹の探り合いが起こりました。投資家としては(この人のコミュニケーション・スタイルは?)という事を見極めたいのです。
イエレン議長が基本、ハト派(=緩和主義者)であることは市場参加者が皆、了解しているところですけど、そのコミュニケーション・スタイルいかんでは、マーケットがギクシャクする局面も、無いとは言い切れないのです。
現在、アメリカの市場参加者の間には極端な強気の相場観が蔓延しています。これは、ほんのちょっとしたサプライズで市場が崩れやすいことを示唆しています。

ここは余り欲張らず、キャッシュを引き上げる準備に入った方が良いと思います。
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