不動産投資で物件を買うために金融機関にアポ取りの電話をすると、「まずは資料を送ってください」といわれることがあります。仮に面談できることになっても、資料を提出しなければいけません。
融資担当者が気になる点は、借り手の「属性」「資産」「負債」
融資を受けられるかどうかの交渉は、この資料作成からはじまります。今回は、融資担当者とのやり取りのコツについてお話をしていきます。
融資担当者が一番気になる点は、借り手の「属性」「資産」「負債」です。まずはこれらを明確にすること。そのために用意する資料は、次のような内容です。
金融機関に提出する書類のチェックポイント
□自己紹介資料(住所・氏名・年齢・勤務先・年収・資格・免許・家族構成・電話番号を明記)と給与明細(確定申告の控え)
□賃貸対照表(バランスシート):固定資産(車・不動産など)、流動資産(現預金・株式・投資信託・国債・金など1年以内に換金できるもの)、負債(借入金・車や住宅のローン)などのすべて一覧に
□本人確認書類(免許証・保険証などのコピー)
□(すでに物件を保有している場合)保有物件の物件名、登記簿謄本、直近3ヵ月の入居率や家賃を記載した「レントロール」(入居実績資料)
□(法人として登記している場合)法人決算書3期分
□手書きの手紙を添える
もちろん、金融機関に対して虚偽の報告をしたり、隠し事をしたりするのは禁物。正々堂々と包み隠さず、資産も負債も正直に報告することで信用につなげます。属性としてメリットになると思うことがあれば(資格・免許の証明書や副業の実績など)、追加するのもいいでしょう。
さらに私は融資担当者への手紙を重視しています。本気度を伝えるためには、古風に「手書き」がベスト。手紙に書く内容は、資料提出の機会をいただいたことへのお礼と不動産を買う目的や理由です。
私は地元を活性化するために不動産投資をはじめたことを書きますが、ストーリーにして書くと便箋5枚です。手紙には、香りづけをしてからお渡しします。
資料と手紙を一緒に投函したら、3営業日後に必ず電話。
すると「わざわざ、お手紙までいただいて、ありがとうございました」とおっしゃってくださる金融機関の担当者が多いので、距離がぐっと縮まるきっかけになるのです。もちろん、こちらから電話する前に、連絡をくださる方もいます。
「手書きの手紙」は効果バツグン!
こうした手紙の効果は、大学時代のアルバイトで学んだことです。私は家庭教師を各家庭に派遣する会社でアルバイトをしていました。社員がアポイントをとった家庭に訪問し、私が家庭教師について説明したうえで契約していただく役割。ほとんどの場合はお母さんとお子さんの前で説明するのですが、話し終えると「主人に確認してから連絡します」と、その場で契約できないケースが多かったです。そこで私はご主人に安心してもらうため、お伝えしたいことを手紙に書いて、お渡しいただくようにしていました。
成約率はほぼ100%。同じことを野村證券に入社してからも営業で実践していましたが、自分の気持ちや熱意を伝える手段として、手書きの手紙に勝るものはないと確信しています。いまはメールやSNSでやりとりするのが当たり前で、電話するだけでも億劫に感じる人が少なくありません。手紙となれば、ますますハードルが高まり、苦手意識を持つ人も多いでしょう。だからこそ、手紙は印象に残りやすいのです。字の上手い下手は関係ありません。
【ポイント:信頼を得るには手書きの手紙が最強のツール】
2017年に6棟目の鉄筋コンクリート造のアパートを買ったときは、物件を先に見つけて金融機関に融資を申し込んだのですが、想定外の出来事がありました。
地元の不動産会社から紹介してもらったこの物件は、販売価格2億円に対して積算価格(土地・建物の担保価値)が2億4,000万円というめったにない優良物件だったのです。最寄り駅から徒歩3分、利回り8%という条件にも恵まれていました。
この物件を購入するため、某都市銀行に融資の相談に伺ったのですが、残念ながら融資を受けられませんでした。融資担当者に理由を聞くと、「稟議書が上に通らなかった」とのこと。
都市銀行となると、個人の新規客が融資を受けるにはハードルが高くなります(当時の私はそのことを知らなかったのです……)。
融資担当者が私の資料に目を通して面談した後、行内で融資の承認を得るために稟議書を作成します。それをもとに最終的には支店長(または本部)の決裁を得られれば、融資を受けられる流れです。
稟議書が上に通らなかったということは、たいへん失礼ながら融資担当者の稟議書が説得力に欠けた可能性があると私は考えました。ある程度の定型フォーマットを下敷きに、要所要所の数字を書き換えて提出したのかもしれません。融資担当者も多数の案件を抱えているでしょうから、事務的な流れ作業のようになっていた可能性もあります。
そこで私は、「自分の生い立ち・家族構成・不動産賃貸業を拡大するためのビジョン・地元再生」という将来的な目的までをストーリーにして、便箋5枚に手書きして担当者に渡しました。
そして「もう一度、この手紙を添えて稟議書を出し直してみてください」とお願いしたのです。
大前提として、私なりに完璧に仕上げた「事業計画書」を提出しています。そのうえで稟議の最終決裁者に承認してもらうためには、情緒や共感に訴えかけることも有効なのではないかと思ったのです。思いついたことはやってみなければ、結果がどうなるかわかりません。だから、私は行動に移したのです。
すると後日、融資担当者から「稟議が通りました」と連絡が届きました。しかも嬉しいことに、低利で融資を受けられることになったのです。都市銀行で私のような新規客が融資を受けられるのは、非常にめずらしいケース。しかも、新規の取引で2億円という高額融資は超イレギュラーでしょう。
【ポイント:「事業計画書+手書きの手紙」で論理と情緒に訴える】
口座を開設するため、融資担当者と支店長にお会いすることになったときのことです。ワクワクドキドキ緊張しながら、その都市銀行へ喜び勇んで伺いました。
応接室で支店長といろいろなお話をする中で、「若いのになぜ不動産賃貸業を?」という話題に。私は稟議書に書かれたストーリーを自分の口から、あらためてお話ししました。緊張のあまり少し興奮しながら熱弁をふるい、15分くらい経った頃、話を聞いていた担当者と支店長が「素晴らしい!」とおっしゃってくださったのです。
「これまでたくさん不動産関連の方々に融資しましたが、まだお若いのに、ここまで自分の考えや将来のビジョンをしっかり持っている方に会ったのははじめてです。ぜひ応援させてください!」
そう支店長がいうと、その場で「金利を3分の1以下に下げます」と約束してくれたのです。支店長は、「銀行にここまで自分のことをおおっぴらに話す人はいないですよ」ともおっしゃっていました(笑)。
金融機関の人も杓子定規に数字だけを見るわけでなく、その人の将来の計画・やる気・情熱といった部分で動かされることも少なからずあるようです。
「この人にまた会いたい」「この人を応援したい」と思ってもらえるかどうかも、融資決定に少なからず影響すると、私は実感しています。
だからこそ、電話外交から資料作成・手紙・面談に至るすべてのやりとりにおいて、不動産賃貸業に対する「熱量」を伝えることには意味があると思います。そして常に、「自分の味方になってもらうためにはどうすればいいか?」ということを意識しながら行動することも大事です。
【ポイント:「応援したい」と思ってもらえる事業計画を伝える】
今回は、融資担当者とのやり取りのコツというお話をしました。
これから不動産投資を始めたい人は、きちんと仕上げた「事業計画書」を提出した後に「融資担当者に手書きの手紙を渡す」という方法で熱量を伝えることも、ぜひやってみてくださいね!
●八木エミリー 投資家&事業家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)
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