不動産投資の最大のリスクは、家賃収入が減る「空室」です。
空室になって収入が減っても、運営経費や固定資産税などの税金、借入金の返済といった出費は減りませんから大きな痛手になります。キャッシュフローを悪化させる一番の原因が空室ですから、不動産賃貸業は「空室対策」が重要なポイントなのです。
私が所有している7棟は、空室が出てもすぐ埋まるため、稼働率94~97%をキープしています。今回は、不動産投資における空室対策のための、管理会社との関わり方についてお話をしていきます。
空室対策は、「家賃を下げる」よりもやれることがある
空室対策として管理会社からよく提案されるのは、「家賃を下げる」「物件案内の広告を出す」といったこと。しかし、私はどちらにも賛成しません。家賃を下げたら空室は埋まるかもしれませんが、いったん家賃を下げると契約期間の数年間は元に戻せないからです。
そのぶん当面の家賃収入は減り続けますから、キャッシュフローも利回りも悪化。物件案内の広告も有効かもしれませんが、経費(出費)が発生してしまうことで、同じくキャッシュフローが悪化します。
では、どうやってキャッシュフローを悪化させずに空室対策をするのか?
そのことを私が学んだのは、最初の物件を購入したときでした。決して条件が悪くない物件なのに、購入時は10室中5室が空室だったのです。その物件は、私が購入してからも、しばらくは空室が埋まりませんでした。物件管理を委託している管理会社に問い合わせてみると、「問い合わせが5件あったんですけど、結局ダメでした」「問い合わせのあった3人が内見(内部見学)したのですが、結局決まりませんでした」といった報告だけで、入居に至らなかった根本的な原因がわかりません。
そんな状況がしばらく続いたので、本当に現地を案内してくれているのか気になり車で1時間半かけて物件の現地まで行ってみると、そこで唖然としました。空室の郵便受けには、古いチラシが大量に詰め込まれたまま。共有部分は掃除された形跡がなく、空室の部屋に入ってみると、室内にカビ臭さが充満していたのです。長いこと空室が放置され、室内の換気をしていなかったのでしょう。さらに水道も長らく使っていないため、キッチンの排水溝からは腐ったような臭いもしていました。ベランダには、上階の洗濯物が落ちている始末です。
「管理会社がぜんぜん手をかけていないじゃない。これじゃ現地案内もしていないに違いない」と思いました。
でも、ここでオーナーとして、管理会社にブチ切れてしまったらおしまいです。「管理会社をかえますよ!」などと脅し文句をいったり、ケンカ腰になったりすることは逆効果でしかありません。管理会社にとっては、たくさんある管理物件のなかで、1棟や2棟減ったところで大きな影響はないはず。
「ああ、そうですか(うるさい大家がいなくなってホッとする)」と、あっさり引き下がられるかもしれません。金融機関や不動産会社と同じように、管理会社も味方につけることが大事。
「管理をずっとお願いしていきたいので、一緒に解決していきましょう!」というスタンスで、こちらから管理会社に働きかけていくのです。
具体的には、「こういう物件って、どうしたら空室が埋まると思いますか? プロのご意見を伺いたいので、ぜひ教えてください!」と相手に敬意を払いつつ、相談します。
そのうえで毎週、入居希望者の「問い合わせ件数」「内見数」を報告してくれるようにお願いするのです。内見した入居希望者が契約に至らなかった場合、その理由をきちんと確認。「家賃」「立地」「内装」「キッチン」「バス・トイレ」など、契約に至らなかった原因はいろいろと考えられますが、どうすれば成約できるか担当者と一緒に対策を考えるのです。
【ポイント:管理会社を味方につけて一緒に問題を解決していく】
空室対策というと、オーナーが管理会社にあれこれ文句をつけがち。ですが、一方的に指示・命令を下すようなことをしても、担当者がやる気になってくれるとは限りません。逆に反感を買って、空室も埋まらない可能性が出てきます。
それよりも相手を管理のプロとしてリスペクトしつつ、「こういう場合、どうすればいいでしょうか?」と相談したほうが、前向きに話を聞いてくれるのです。実際、多くの担当者は、「毎週現地へ行って、郵便受けのチラシを処分しておきます」「空室の空気も入れ換えておきましょうか?」「共有部分の掃除もしておきますね」というふうに自ら改善点を提案して行動してくれるようになります。
そこですかさず「ありがとうございます、ぜひお願いします!」といって、自発的に行動してもらえるように仕向けるのです。これこそがキャッシュフローを悪化させない空室対策となります。
管理会社との空き室対策のポイント
□管理会社の担当者をリスペクトして空室対策を相談する
□入居希望者の「問い合わせ件数」「内見数」を報告してもらう
□管理会社を訪問する際は手みやげを欠かさない
自分がもし管理会社の担当者だったら、どうすればやる気になるでしょうか?
いくらお客でも口うるさく注意されたり、脅されたりしたら、やる気にはなりません。それより「本当に困っているんです。どうすればいいか教えてください!」と率直に相談してもらったほうが、「なんとかしてあげよう!」という気になるものです。
「教えてください!」と素直にいうのに、年齢も性別も関係ありません。管理会社の担当者が自分より年下だろうが若い女性だろうが態度を変えず、丁寧な対応を心がけます。空室対策の知恵や工夫について、その道のプロに教えてもらえること自体、大家にとっては知恵の蓄積になるのです。
管理会社訪問時の手土産は必須
また、管理会社に訪問する際も、やはり手みやげ(差し入れ)持参を欠かしません。担当者は若い男性が多いので、食事代わりになるパンがけっこう喜ばれます。
ビール券や金券のようなものは、賄賂的なニュアンスが強くなるので、食べ物のほうが気持ちよく受けとっていただけます。営業所には女性スタッフもいますから、甘いお菓子など女性に喜んでもらえそうなものを渡すと、周りの人にもお裾分けできるので男性担当者の株も上がります。こうした配慮の積み重ねで、「この大家さんの物件は手を抜けないなぁ」と思ってもらえれば大成功!
管理会社との信頼関係を築いていくと、数ある管理物件のなかでも、優先的に手間をかけてもらえるようになるのです。
【ポイント:管理会社への差し入れは意外にもパンが喜ばれる】
今回は、不動産投資における空室対策のための、管理会社との関わり方についてお話をしました。
これから不動産投資を始めたい人は、「管理会社への積極的アプローチで稼働率ほぼ100%にできる」「管理会社にも手みやげ持参で“逆営業”をする」ということを、ぜひ頭に入れておいてくださいね!
●八木エミリー 投資家&事業家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)
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