不動産投資では基本的に、同じ商品(物件)はありません。
「これは!」と思うような優良物件は競争率が高まり、そしてすぐに買い主がつきます。そのため、購入の意志を金融機関へすみやかに伝えなくてはいけません。
今回は、不動産投資での購入申込みの方法と、金融機関への希望条件の伝え方についてお話をしていきます。
不動産投資の物件は、物件の条件がよければよいほど、すぐに売れてしまいます。ところが、急いで物件内容を精査して現地調査するなどしても、金融機関と融資の条件交渉などをしていると1カ月くらいすぐに経ってしまうのです。場合によっては、2カ月くらいかかることも。
そのため、どれだけ迅速に「購入申込書」(買付証明書)と呼ばれる書面を不動産会社に出すかが勝負になります。
購入申込書とは、「希望価格」「希望契約日」「希望引渡日」「融資利用の有無」「手付金額」といった条件を記載し、署名・捺印して提出する書類。この購入申込書を一番先に出しておけば、その後どんなに属性の高い人が申込書を提出しても、基本的には優先的に購入可能です。ただし、たまにキャッシュ(現金)で購入する業者に負けてしまうことはあります。
引き渡しまで1年。でも一番に買付証明書を出していたから買えた7棟目
2020年4月、私が7棟目に購入した物件はまさにスピード勝負の物件でした。私が新しい法人を登記して代表になって、すぐの頃です。法人登記し、地元・愛知県で物件と金融機関を探しはじめたのは、前年6月頃。すると8月に不動産会社から物件概要書が届いて、「これはいい物件だ!」とピンときたので、すぐに居住地の東京から物件がある名古屋へと新幹線で向かいました。
このとき、お付き合いのある地元の信用金庫の担当者に事前に連絡したところ、一緒に物件を下見してくれたのです。そして、「この立地で、この条件なら大丈夫ですね」とすぐに稟議書を回してくれて、それが受理されて不動産会社に「購入申込書」を提出できました。
ところが、その後、問題が発生しました。新しく法人をつくったので、その審査を信用金庫内で通してもらわなければいけません。返済シミュレーションを含めた事業計画書も、かなり厳しめの条件で設定しています。
そのため、私から「返済期間を長くしてください」「金利をもう少し下げてください」とお願いすることになりました。逆に信用金庫側からも「頭金をもう少し入れてください」とお願いされたこともあり、細かいやりとりが頻発したのです。条件面では妥協できない部分もあったため、交渉を粘り強く進めたところ、融資の承諾を得るまで2カ月近くもかかってしまいました。
それ以上に想定外だったのは、契約の直前に売り主側の不動産会社が、手の平を返すように販売条件を変えてきたことです。具体的には「ローン特約をナシにしてほしい」という申し出。
ローン特約(融資利用特約)というのは、売買契約後に金融機関から融資を受けられなくなったら、売買契約を解除できるというもの。契約時に支払った手付金や仲介手数料は戻ってきませんが、融資を受けられないまま物件を購入するリスクは避けられます。その特約を白紙に戻したいという交渉をされたことは一度もなかったので驚きました。「今後さらに妙な条件をつけられたらたまったもんじゃない」と思い、売買契約書を穴が開くほど何回も読み直したことを覚えています。
結局、数カ所ほど契約内容の訂正をお願いして、ようやく正式に契約を締結できた頃には12月末。さらにその後、売り主が物件の測量図面を紛失したことがわかり、測量をやり直してもらって引き渡しまでさらに4カ月も要してしまいました。
なんだかんだで、物件を買おうと決めてから1年ほどが経過し、これまでで一番手間がかかった物件になってしまいました。それでも、「購入申込書」を一番に出していたからこそ、売買契約や引き渡しにどんなに時間がかかっても購入できたのです。運よく優良物件が回ってきたときは、とにかくスピード勝負で「購入申込書」を出す。これが重要です。
【ポイント:好条件の物件は一番に申し込み】
金融機関との交渉では、金利も返済期間も自分の希望をはっきり伝えよう!
金融機関に勤務先の給与明細や金融資産などの書類を提出する際には、自分が希望する「返済シミュレーション」も同封します。そして金融機関での面談のとき、私はこのように聞いています。
「返済期間30年で設定して、金利1.2%の場合、このくらいフリーキャッシュフローが残ります。私としては、この条件が希望なのですが、どう評価されますか?」
交渉のポイントは、「自分の希望条件を先に伝えること」です。金融機関でパッケージ化されたアパマンローンを利用する場合は、融資期間も金利もあらかじめ決められています。その条件を聞く前に、先にこちらの希望を伝えて、少しでも自分に有利な条件にしてもらえるような交渉に持っていくのです。
例えば、購入予定の物件が鉄筋コンクリート造(法定耐用年数47年)で、築20年だとすると、法定耐用年数は残り27年。けれども返済期間を30年にしてもらえれば、毎月の返済額は低く抑えられてキャッシュフローを増やせます。
金利についても、金融機関から先に「1.9%です」と提示されてしまうと、「そうですか」というしかありません。ですから、条件を提示される前に「金利は1.2%で考えていますがいかがでしょうか?」とこちらの希望を伝えるのです。
そうすると金融機関から妥協案を出されることがあるので、自分で組み立てたキャッシュフロー重視の返済シミュレーションに、より近い形での契約ができるでしょう。
金融機関から金利を提示された後に、それを値切る交渉になると、値札がついている商品に対して値引き交渉しているような罪悪感を覚えます。話を進めるのが難しくなるため、融資に限らず、先に手を打つことは重要です。
【ポイント:返済シミュレーションをベースに希望金利を伝えてみる】
今回は、不動産投資での購入申込みの方法と、金融機関への希望条件の伝え方についてお話をしました。これから不動産投資を始めたい人は、「購入申込みはスピード重視」「金融機関に希望条件を先に伝える」ということを、ぜひ頭に入れておいてくださいね!
●八木エミリー 投資家&事業家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)
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