ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。
我が家には2歳の子どもがいますが、たびたび子連れでシンガポールから日本(東京)に帰っています。東京に帰った際にいつも感じるのが、子どもを連れての移動のしづらさです。シンガポールでは子連れでの移動が比較的容易なので、その差を痛感してしまうのです。
そこで、今回は日本とシンガポールを比べてみたときに、どちらが母子に優しいか、カテゴリーごとに紹介してみたいと思います。
オムツ交換台や授乳室などの設備は東京が圧勝!
ただし、バリアフリー化ではシンガポールが一歩リード
(1)設備
授乳室、オムツ交換台、お手洗いに子どもを座らせておく椅子の数など、デパートやショッピングモールなどにある設備は圧倒的に日本のほうが素晴らしいです。シンガポールでは、デパートや大きなモール内には授乳室やオムツ交換台がありますが、お手洗いに子供を座らせておく椅子は見かけません。おかげで、子どもと二人で外出したときなど、お手洗いに行けなくて困ることもあります。
シンガポールでは、メイドさんに子守を任せるのが当たり前になっているので、外出時に大人の手が足りない、ということが想定されていないのかもしれません。子連れでデパートに来ている欧米人も多いのですが、メイドさんやパパもいるし、店員さんなどがちょっと見ていてくれることもあるので、手が足りているのかなと思います。
(2)街の構造
ベビーカーで外出した際、東京の古い街などでは駅にエレベーターが少なく、場所によっては階段しかなくて苦労をすることがあります。また、渋谷駅のように、古くからある駅を途中で大幅に改造している駅もありますが、エレベーターの乗り継ぎが複雑すぎて、迷ってしまうこともしばしばです。
一方、シンガポールの駅は、徹底したバリアフリー仕様で、自動改札には必ずベビーカーや車椅子用のゲートがあり、とても広々しています。また、エレベーターもわかりやすい場所に設置されています。
ただ、街中では子連れに優しくないと感じるところもあります。例えば、オーチャード(シンガポールの「銀座」のようなエリア)の道幅の広い交差点を最短距離で渡ろうとすると、ベビーカーでは通れない段差があります。それを避けて遠回りをすると、10分以上時間がかかってしまうのです(勝手がわからない観光客の方だと、それ以上に時間がかかるでしょう)。
そもそも、シンガポールには道幅が広い横断歩道が多いので、子どもを連れていると焦ることがよくあります。
シンガポールの電車は東京ほど混雑せず。
ただし、バスは東京のほうが安全で快適。
(3)地下鉄
「東京の地下鉄の状況は変わっていないの?」と、シンガポール人の友達によく聞かれます。それほど、東京のラッシュアワーの地下鉄の状況は、海外でも有名なようです。
私も一度、夕方の時間に子連れで東京のラッシュアワーの電車に乗ってしまったことがあります。最初は空いていたのに、途中でどんどん乗客が増えて、子供がつぶれそうになってしまいました。それ以来、子連れで電車を利用するのは11時〜16時くらいまで、と時間を決めて乗るようにしています。ラッシュ時にどうしても移動しなければならないときは、バス、タクシーも含めた車、徒歩など、別の手段を選択しています。
シンガポールの地下鉄は、ピークアワーでも日本ほどは混んでいません。また、地下鉄(MRT)は日本より新しいので、前述のようにエレベーターの乗り継ぎも楽です。子どもを抱っこして乗車すると、優先席ではない席でも、すぐに譲ってもらえることが多いです。ただ、MRTでの飲食は禁止で、罰金の対象にもなり得るので、子どもがぐずったときにお菓子で釣ることは、原則として不可能です。
(4)バス
バスに関しては、圧倒的に日本のほうが子連れに優しいと感じます。今年の夏も東京で子どもを連れてバスをに乗車しましたが、時間に余裕のあるお年寄りや子連れ客が多いためか、お互いに助け合う雰囲気があって居心地がよかったです。それに、混雑していないときであれば、ベビーカーをたたまなくても許される場合もありますね。
シンガポールのバスだと、ベビーカーで乗車しようとすれば、運転手さんに必ずたたむように注意されます。そもそも、入り口の真ん中に手すりが付いていて、ベビーカーをたたまなければ入れない構造になっているバスも多いです。
しかも、運転が日本のバスよりもずっと荒っぽいのでよく揺れます。雨の日に歩道を歩いていると、傍らを荒っぽい運転で走り抜けたバスに大量の水を飛ばされて、びしょぬれになることもあります。
私の場合、子どもとバスに乗る際にはベビーカーは持たず、常に子どもの手を引いたり、場合によって抱き上げたりしやすいように、斜めがけなど手の空いた鞄で行くと決めています。
(5)タクシー
タクシーの利便性は、圧倒的にシンガポールが優位です。初乗り料金が日本の半額以下ですし、タクシーの運転手さんが子連れに慣れているのもありがたいところです。子どもを連れて、さらに買い物袋2〜3個、自分のバッグ、ベビーカーをキャリーしていても、タクシーなら何とかなります。
シンガポールでは、街中の至るところにタクシースタンドがあり、そこから乗車をすればドライバーが降りてくれて、トランクへの荷物の出し入れを手伝ってくれます。たまに助けてくれないドライバーもいますが、列に並んでいる人が率先して助けてくれることも多いです。私は基本的に、手助けしてくれる人がいなくても自分でなんとかできるよう、片手で持てる3キロ前後のベビーカーをいつも使っています。
日本では、子連れだとタクシーに乗ることも敷居が高いです。値段が高いということもありますが(以前都内で13キロ、40分ほど乗車をしたら、4500円程度かかってしまいました)、運転手さんが子どもに慣れていない人が多いと感じました。子どもの声が耳障りだったり、シートの汚れが気になったりしているのかもしれませんが、無愛想な対応をされることが何度もありました。
海外だと、国によってはサービスに応じてチップを支払う習慣がありますし、そもそも欧米人(子供の人数も多い)はサービスに厳しいです。そのため、多様な文化圏の人々が集まっているシンガポールのほうが、子連れに対応できているのかもしれません。
東京では通販などの宅配サービスが便利!
街中でのサポートの多さはシンガポールの余裕の表れ?
(6)デリバリー(宅配)サービス
子連れでの買い物には限界があるため、重い荷物、かさばる荷物はデリバリーサービスが便利です。デリバリーの時間の正確さ、頼んでから届くまでの素早さは、日本の圧勝です。シンガポールでは、荷物がいつ届くか分からないということも多々あります。待っていたのに届かなくて、1日無駄になったという声もよく聞きます。
しかも、受け取るのに失敗すると、また大変なのです。近くのポストオフィスなどに短い期限内に取りに行かなければならないからです。そこでも受け取り損ねると、遠くのポストオフィスに移されたり、送り主に戻されたりしてしまいます。再配達も含めてきっちりとデリバリーしてくれる日本の運送業者は、本当に素晴らしいと感じます。
(7)街の人の余裕
街の人の余裕は、圧倒的にシンガポールのほうがあります。南国ということもあるせいか、働き方が日本と比較すると少し緩いからです。欧米人のビジネスパーソンなど、まだかなり明るい夕方のうちから飲み始めている人もよく見かけます。また、電車の中で寝ている人はあまりいません。日本も、長時間労働が改善されれば、もっと余裕が出るのかなと感じてしまいます。
余裕があると、他の人に気を配ることもそれほど難しくなくなるのでしょう。印象としては、日本よりシンガポールにいるときのほうが、見知らぬ人に手助けしてもらえる確率が高いです。小さい子どもを連れていると、何かとトラブルが生じたり、気を付けていても他の人に迷惑をかけてしまったりすることがあるので、シンガポールの環境はありがたいです。
「セーブ・ザ・チルドレン」(国連に公式に承認された、子どもたちのための民間の国際援助団体)による、「179カ国の母親と子供の幸福度調査(2015)」によると、シンガポールはアジアでトップの14位、アジアで2位にランクインしたのは韓国で30位、日本はアジアで3位の32位という結果でした。日本のランキングが他の先進国より低い要因としては、女性議員の割合の低さなどが挙げられるようです。女性の議員や管理職の割合が上がっていけば、今よりも子持ちの女性の意見などが反映され、状況は改善していくのかもしれませんね。
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