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米国では、ファンドマネジャーが自分のファンドを多く所有していると好パフォーマンスというデータあり。投資家と運用者、企業経営者の利害関係一致は重要

2022年9月22日公開
ポール・サイ
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 今回は投資家とファンドマネジャー、企業経営者の利害関係が一致することの重要性について、お話したいと思います。

ファンドマネジャーは自身の運用するファンドにどれぐらい投資しているのか? アメリカではそれが情報開示されている

 アメリカでは、ファンドマネジャーが自身の運用するファンドにどれぐらい投資しているのか開示することがSEC(米国証券取引委員会)によって義務づけられています。その金額はレンジで示されていて、最高のレンジは100万ドル(約1億4300万円)以上になります。

 ファンドマネジャーには給与・資産レベルの高い人が多いです。しかし、100万ドル以上、自身のファンドに投資しているのなら、普通に考えれば、それだけ責任をもって自身のファンドを運用していると思われます。

 それぞれのファンドマネジャーの自分のファンド保有分はファンドの開示書類で見られますし、モーニングスターのファンドデータベースでも見られます。

ファンドマネジャーが100万ドル以上、自分のファンドを所有しているとパフォーマンスが良いというデータが!

 ファンドマネジャーが自身が運用しているファンドを保有しているかどうかということは、ファンドのパフォーマンスを左右するファクターのうち、手数料の低さの次に重要である、といろいろな論文で指摘されています。

 米国では、7000本ぐらいのファンドのうち、大体1000本のファンドは運用するファンドマネジャーが自分のファンドを保有しています。

 モーニングスターの直近の分析によると、ファンドマネジャー自身が100万ドル以上、自分のファンドを所有していると、そのファンドの48%は競合ファンドをアウトパフォームしていました。一方、ファンドマネジャー自身が自分のファンドを保有していない場合、その数字は32%でした。ファンドのパフォーマンスの良さはファンドマネジャーの保有分と比例しているとのデータが出ていたのです。

 私がフィデリティ投信で働いていた時の経験からいうと、フィデリティには自分のファンドに投資する、または自分が推奨している株に投資することを奨める文化がありました。これは、英語で言うと「Eat your own cooking」(自分が作った料理は自分で食べる)という考え方でした。

 確かに、ファンドマネジャーは自分が投資していなければ、お客さんと利害関係が一致しないし、やる気が減る可能性が出てきます。

経営者が自社株を持っているかどうか。米国株では気にされるこの指標が日本株ではなぜあまり気にされない?

 これは株式投資の対象となる企業にも言えることだと思います。企業経営者の自社株の保有分や売買動向は、その企業の株価パフォーマンスの重要な指標になります。米国株投資にあたって、自社株の保有分は投資家注目の数値と言えるでしょう。

 日本株は米国株と状況が異なっています。

 日本株を分析するにあたっては、経営者の自社株保有分と売買動向はあまり気にされていません。なぜかというと、日本の経営者は創業者以外、自社株をほとんど持っていないからです。そうなると、経営者と株主のインセンティブが一致しないため、利害対立が生じます。これは経済学の世界で「エージェンシー問題」(※)と呼ばれているものの代表例になります。

(※編集部注:「エージェンシー問題」とは依頼人と代理人の間に生じる利害対立問題のこと)

 経営者は自分が自社株を持っていないと、株主よりも社員、もしくは自分へ報酬や恩恵を与えることを優先することがあります。そして、株価をあまり気にしなくなってきます。けれど、次回、説明する予定ですが、株価は会社の成長に重要な役割を果たしているのです。株価が低いと、競争力低下にもつながります。

「投資家」と「ファンドや企業」の間でインセンティブが一致することが多い米国はいい投資先

 最近、日本の財界・政界はこれを問題視し始めていて、コーポレート・ガバナンスを強化しています。しかし、効果はあまり見えていないです。ルールだけでは根本的に解決できない問題なのです。ルールが変わっても、インセンティブが変わらないままでは、行動は大きく変わらないです。ルールよりインセンティブのほうが大きな効果があります。心理学でそれははっきり証明されています。

 多くの米国企業が株式やストックオプションによって、経営陣に巨額の報酬を与えていることは100%いいとは言えないですが、しかし、株主の立場からすると、経営陣が株を保有していたほうが自分と利害関係が一致することになります。経営陣が株価を気にすることによって、資本調達コストは低下し、会社の競争力も増すのです。

 「投資家」と「ファンドや企業」の間でインセンティブが一致するケースが多い米国は、投資先としていい国だと思います。

 

 

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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