「勝者のゲーム」と資産運用入門

いよいよ動き出す「資産所得倍増プラン」に期待!時限措置撤廃と投資枠拡大によるNISA制度の改革と、国民への啓蒙を急ぎ貯蓄から投資への流れを加速せよ太田忠の勝者のポートフォリオ 第60回

2022年11月30日公開(2022年11月29日更新)
太田 忠
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過去20年間、掛け声倒れに終わってきた「貯蓄から投資へ」の流れ

年々、日本人が保有する現預金の価値は目減り中 ―。                    「日本人の7割が投資に興味なし」、国民の抜本的な意識改革が必要 ―。

 これまで証券業界では「貯蓄から投資へ」をスローガンに掲げ、日本人の金融資産の約半分が預貯金になっている状況を是正しようと働きかけてきた。だが結局、今も20年前と何も変わっていない。やはり掛け声だけではダメだ。明確かつシンプルかつ魅力的な仕組み、そして投資の意義への理解がないと、投資に興味のない人たちを資産運用の世界に誘うことなどできないのだ。

 岸田政権が打ち出した「資産所得倍増プラン」の内容が先週金曜日(11月25日)に明らかになった。「資産所得倍増プラン」とは要するに「貯蓄から投資へ」を言いかえたキャッチフレーズなのだが、今回は仕組みそのものを再構築し個人の資産形成に資するという意味において、これまでの掛け声だけとは異なるため、私個人としても大いに期待している。

今後5年間でNISAの口座数と投資額を倍増させる野心的な目標を掲げる

 資産所得倍増プランには、投資の大きな受け皿となる少額投資非課税制度(NISA)の総口座数を今後5年間で3400万口座、総投資額を56兆円にそれぞれ倍増させる目標が掲げられた。これまで時限的措置で十分でなかった制度そのものを見直し、運用収入でも個人所得を増やしつつ、現在2000兆円にも積み上がっている金融資産を投資に回すのが狙いだ。「日本人の年収が全く上がっていない」というのが大きな社会的問題になっているが、それと同様に問題視したいのが「日本人の金融資産もあまり増えてこなかった」という点だ。

 皆さんもご存じのように、2021年末に初めて日本の家計の金融資産は2000兆円を突破。そのうち半分の1000兆円は預貯金として滞留している。このため過去20年の金融資産の伸び率は1.4倍と低く、さらにリスクアセットの株式・投資信託の比率もわずか14%に過ぎない。一方、株式投資が盛んで金融資産の半分を株式・投資信託で占める米国では同期間において金融資産の伸び率は約3倍と高い。さらに米国民の預貯金の比率は13%。これはあまりにも違い過ぎる結果である。

インフレと円安で投資していない日本人の資産形成は一段と厳しい状況に

 今の時代、日本国民が保有する預貯金の価値はどんどん目減りしている。特に昨今はインフレで預貯金の価値が下がり、さらに為替という視点では円安が急速に進んだ日本円の価値は大きく減少している。日頃の日常生活もカツカツで苦しい日本人が多いという厳しい現実が、この1年間でさらに加速し、世界的に見て日本人は一段と貧しくなってしまった。この状況でいいはずがない。

 現行のNISAは国内外の上場株などに幅広く投資できる一般型と、対象を投資信託に限定したつみたてNISAの2種類がある。運用益に税金がかからずに口座を保有できる期間は一般型が5年、つみたてNISAは20年である。また年間の投資枠は一般型が120万円、つみたてNISAは40万円と少ない。「限られた期間で、限られた少額の投資枠でどうやって資産形成できるんじゃい!」と思わず叫びたくなるようなショボい制度だ。「国民の皆さんが資産形成してもらうと困るんです」「お金持ちになってもらっては不愉快なんです」と政府の本音があたかも漏れてきそうなほど、上辺だけを繕った不完全な制度である。

NISA改革の柱は、時限措置が撤廃されて期限の恒久化と年間投資枠の拡大

 それが大きく改善されるのだ。時限措置が撤廃されて期限が恒久化され、年間の投資枠も拡大される(まだ金額は明示されておらず。富裕層に恩恵が偏るのを防ぐため生涯の投資上限枠が設けられる予定)。NISA口座の開設数は2022年6月末時点で、一般とつみたてを合わせて約1700万ある(ただし、実際の稼働率はこの7割の1200万程度)。最近は資産形成に意欲的な20代や30代を中心に口座開設が目立つが、成人人口の約2割にとどまっており普及というにはほど遠い。英国ではISA(個人貯蓄口座)制度を開始してから15年間で成人人口のほぼ半数に広がった。

 ところで、NISAについては8月31日に公開した第47回コラムで英国ISAと比較して改善点を提案した。恒久化と投資枠の拡大は今回解決されるが、「ISAは銘柄の入れ替えが自由なのに対し、NISAは入れ替えやロールオーバーするには新たな枠を使う必要がある」という点も改善していただきたい。投資は時によって機動的な入れ替えが必要だからだ。ISAは自由なのにNISAはそれができない。選んだ投資先がハズレの場合は惨めな結果に終わってしまう。硬直的な仕組みだと使い勝手が悪い。

株式投資の目的の多くが一攫千金という国民の意識改革が急務!

 受け皿の仕組みを改革できれば、あとは国民の意識改革だ。日本証券業協会がNISA口座を開設しない人に理由を聞いたところ「投資する気がない」という声が多かったそうだ。これは要するに何も分かっていないだけのこと。これまで私が述べてきたことが理解できれば「貯蓄から投資へ」の一歩を踏み出すことができる。ところが、私が個人投資家と日頃接していてしばしば目にすることがある。それは貯蓄から一歩踏み出した人たちの行動が「貯蓄から投資へ」ではなく、いきなり「貯蓄から投機へ」、さらに「貯蓄からギャンブルへ」に至ってしまうケースが目立つことだ。9月7日に公開した第48回コラムで次のように書いた。

 「どうして資産運用をするのですか?」「資産運用の目的は?」と尋ねると、もちろん「将来のため」や「老後資金形成のため」という真っ当な返事が返ってくることが多いが、「投資をするからにはやっぱり一攫千金でしょ」というニュアンスがとても強いことに驚く。要するに、一般的な個人が求めているのは「株で一発大儲けしたい」「早く大金持ちになりたい」のである。だから、ありもしない高リターンを謳って「あなたも手軽に稼げます!」というキャッチフレーズにつられて、訳の分からないニセの金融商品に投資してお金を失う人たちが絶えない。一般的な個人の行動は「貯蓄から投資へ」を素通りして「貯蓄から投機へ」「貯蓄からギャンブルへ」になっているのだ。

 こうした現状も金融教育で変えていく必要がある。そのためには私も一個人として積極的に協力していきたいと考えている。

「勝者のポートフォリオ」が過去最高値を更新。年初来高値更新も3銘柄

 さて、マーケットである。私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で昨年10月から投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」は過去最高値を更新した。最高値は今年8月26日の+2.8%だったが、先週は+3.8%のパフォーマンスで着地(同期間の指数はTopix-0.6%、日経平均-4.0%、マザーズ-29.1%)。年初来高値を更新した銘柄も3つあるなど好調であり、さらに「来たるべき金融相場に備えて」の第1弾にあたる新規銘柄も組み入れた。

 12月7日水曜の午後8時より毎月恒例のWebセミナーを開催する。今後のマーケット動向を展望しつつ、投資の注意点、具体的な投資戦略、そして今後大きなリターンが期待される個別銘柄についてもバッチリお話する予定だ。会員限定だが10日間の無料お試し期間中でも参加可能だ。このところ申し込みが急増しており、多くの方々のご参加をお待ちしている。皆さんで大きな資産形成を目指しましょう。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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