ドン・キホーテを買いと判断した「需要×流通」のフレームワークとは?
その1つは売上げ成長を予想する時のフレームワークです。「需要」と「流通」の考え方です。
1つの商品または1つの店があったとします。そのとき、小さな地域でのシェア、類似した一定の店の中でのシェアを「需要」とみなします。もし、シェアが高ければ、その商品・店への需要は高いということです。
一方、「流通」は地域の広さ、または商品を置いている店の多さです。そして、高い需要があるものをうまく流通させれば、その「需要×流通」が取れる売上げとなります。
次回、詳しく書きたいと思いますが、フィデリティの入社面接の1つでは、ある上場企業の開示情報を渡されました。そして、1日かけて、その会社を分析し、業績を予想するのです。買いか売りかのロジックを考えて、ファンドマネジャーと調査部長にプレゼンします。
その時、私が与えられた課題はドン・キホーテでした。私は買いという結論を出しました。
簡単にいうと、ドン・キホーテはその時、東京ではうまくいっていましたが、まだ全国には浸透していませんでした。全国展開が本格化することによって、利益が増えるのが目に見えていました。
あとは、少しおもしろさを出すため、普通の社長はアニュアルレポートでストイックな表情をしますが、ドンキの社長は笑顔がすばらしかったことも話しました。このプレゼンで、フィデリティから内定がもらえました。
普通のサラリーマンが投資せず、貯蓄だけでFIREするのは無理
コンサル時代は自分で投資もしていましたが、貯蓄にも力を入れていました。その頃、読んでいたのは“年収300万円生活”など、貯蓄のコツが書かれた本です。
しかし、もう少しあとになって気がつきました。貯蓄は重要ではあるものの、普通のサラリーマンが投資をせず、貯蓄だけでFIREするのは最初から無理ということにです。生涯年収が数億円しかないサラリーマンがそれではダメなのです。
このことは普通のサラリーマンだけに当てはまることだと最初は思っていましたが、あとでわかったのは、意外に年収数千万円の金融マンにもこれが当てはまることがあるということでした。高収入だけれど投資をあまりしない人で、それほど資産を築けなかった人は金融業界でもある程度はいるのです。
投資が重要ということです。
アメリカという国が破綻することさえなければ、米国株は暴落してもいつか値を戻す
ここまでの話のポイントをまとめると…
(1)株価指数が暴落するときはたいてい買い時です。特に安定して成長しているアメリカの場合はそうです。逆に言うと、アメリカという国が破綻することさえなければ、米国株は暴落してもいつか値を戻します。100年以上のスパンでアメリカは私たちの世界をリードしてきました。アメリカの衰退はまだ見えていません。今のところ、アメリカの衰退=世界の衰退に近いです。中国がアメリカを越えるかどうか、まだはっきりしません。9・11の経験で初めてこういったことに気がつきました。
(2)証券会社は証券を売る、売買させるのが仕事で、投資は仕事ではありません。証券会社に入社したとしても、投資の仕方について、いい勉強をすることはできないのです。証券会社は客に売買してもらう、証券を買ってもらうために情報を流すことがありますから、証券会社からの情報に完全に頼りきることはできません。ただし、証券会社が提供してくれる情報にはいいものもあります。結局、情報を取捨選択して、投資判断することは自分でやらないといけないということです。
(3)企業業績を予想するのに、いろいろなフレームワークが自分のツールボックスにあった方がいいです。たとえば、今回紹介した需要×流通のフレームワークです。
(4)貯蓄だけでは富は築けません。高収入の人でも意外にそうなのです。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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