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ネットフリックス(NFLX)やメタ(META)を総悲観の中で果敢に買いに出られたワケとは?S&P500に28%もの差をつけたヒミツに迫る!

2023年3月2日公開(2023年3月3日更新)
ポール・サイ
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今の北朝鮮に近いかも!? ポール氏が生まれ育った当時の台湾に言論の自由はそんなになかった

 ポール氏は「チャンスは悲観視されているところにこそある」と言う。ネットフリックスがそうだったし、本記事シリーズではこのあともいくつか事例を紹介していく予定だが、ポール氏の投資スタイルはまさに「人の行く裏に道あり花の山」という投資格言を思い起こさせるものなのだ。

 そして、ポール氏がそのような投資スタイルになった背景には、ポール氏の生い立ちも関係あるのではないか。ポール氏の話を聞いていると、筆者はそんな気がしてきたのだった。

 ポール・サイ氏は1975年、台湾の中心都市、台北で生まれた。父は自転車部品の会社を経営、母は看護婦をしていた。3人兄弟の一番上だった。

現在の台北の街並み現在の台北の街並み

 母の仕事の関係で、一家はセキュリティのしっかりした医療関係者専用の寮に住んでいた。住居の周りは自然の豊かな場所で、幼い頃は昆虫や植物と触れ合う機会が多かった。

 気候は温暖、穏やかな環境。そんなところで、ポール氏はのびのびと育ったのではないかと思えるが…

 「当時の台湾は今の北朝鮮に近いかもしれません」

 北朝鮮……!? ポール氏は平穏ならざることを言った。

 現在、中華人民共和国で習近平国家主席の独裁色が強まる中、台湾は中華圏における民主化の砦のような印象がある。

 しかし、以前の台湾は長らく民主化にはほど遠い状況にあった。

 台湾は非常に長く中国国民党(国民党)の一党独裁体制にあり、1949年から1987年まで実に40年近くに渡って戒厳令がずっと敷かれているような状況だった。民主化が進んでいくのは1987年に戒厳令が解除されて以降のことであり、現在、蔡英文総統の元で政権の座にある民主進歩党(民進党)が初めて政権を取ったのは、ようやく2000年に入ってからのことである。

 そして、ポール氏が生まれ育った時代の台湾は、国民党一党独裁体制にあった。

 「子どもの頃、台湾に言論の自由はそんなにありませんでした。たとえば作文を書くときは『大陸を取り戻す』と書いたらAの評価をもらえるのです」

 中国大陸での内戦に敗れ、1949年に台湾に逃げ込んだ国民党。1950年代には中台間で実際に局地的な戦闘が行われ、国民党は大陸反攻をスローガンに掲げていた。ただ、中国大陸を実効支配する中華人民共和国の存在感が増していったのはご存じのとおり。ポール氏が生まれる前の1971年という段階で、すでに台湾は国連の代表権を失い、国連から追放されてしまっていた。

 そんな状況で、台湾が大陸を取り戻すというのは無理な話。しかし、表向きはそう言わなくてはいけない。それが当時の台湾だった。当時の台湾について「今の北朝鮮に近いかも…」とポール氏は冗談めかして話していたのだが、これは半分ぐらいは真顔で聞くべき言葉なのかもしれない。

言論の自由があまりない台湾から、自由があり、チャンスがあるアメリカへ移住

 1984年、ポール氏が小学校4年生の時、一家はアメリカへの移住を決断した。

 それは言論の自由があまりない社会に住む逆境がもたらした決断だった。アメリカには自由がある。チャンスもある。叔母が早くにアメリカへ移住していた関係で、ポール氏もアメリカの永住権を取れたということもあった。

 一家はアメリカのコネチカット州に移り住み、ポール氏は小学校5年生のときから、20歳台半ばぐらいまでアメリカで過ごすことになる。

コネチカット州 公式サイトコネチカット州 公式サイト

 一家はやがてコネチカット州からロサンゼルスへ転居した。

 ポール氏はそれまで英語が話せたわけではなかったが、アメリカへ移ってから一生懸命勉強し、2年もすると会話に不自由しないようになっていた。

 ポール氏はのちに日本語もマスターし、中国語、英語、日本語と3カ国語を操って、アメリカ、日本、中国、マレーシアとグローバルに活躍する存在となる。そのような世界を自由に行き来するキャリアの出発点は台湾からアメリカへの移住にあった。自由に恵まれない地で生まれ育ったからこそ、ドラスティックな変化を経験し、それがその後のキャリア形成につながった面もあったのではないだろうか。

 チャンスは悲観の中にあったのだ。

[参考記事]
私の歩んできた道(1) ネットバブルに乗り、バブル崩壊前に株を売り切った! バブルを若いうちに実感できた方がいい理由とは?

直近は1日で30%近くの株価急上昇! でも、少し前までメタメタと思われていたメタを絶妙なタイミングで買いに出た

 ポール氏が悲観の中でチャンスをとらえた大型テクノロジー株をもう1つ紹介したい。

 メタ プラットフォームズ(META)である。

2日の米株市場でフェイスブック親会社、メタ・プラットフォームズの株価が一時28.8%上昇し、約10年ぶりの大幅高となった。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が示したスリム化や効率化に向けた計画が好感された。(2023年2月2日、ブルームバーグ)

 2023年2月、マーク・ザッカーバーグCEOの経営スリム化方針などの発表を受け、メタの株価は1日のうちに最大30%近くも跳ね上がった。これは悲観ではなく、歓喜のニュースである。

メタ・プラットフォームズ 1時間足メタ・プラットフォームズ 1時間足(2023年2月2日近辺) 出所:TradingView

 ただ、ポール氏は歓喜のニュースでメタが急上昇したところを飛びつき買いしたのではなかった。もっと前、悲観の中でメタをポートフォリオに組み入れていたのだ。

 ポール氏がメルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」でメタを推奨したのは2022年11月18日のことだった。まだまだメタが安いときである。

 しかし、安いということは、株価が大きく下落していたということ。直近でメタの株価が跳ね上がったといっても、その直近高値は、2021年の高値と比べてまだ半値程度というレベルである。

 このように大きく下落した銘柄を買いに出るのに怖いことはないのだろうか。

 前回の記事では、FANGやGAFAといった米国の大型テクノロジー株を表す略語の変遷について述べたが、変遷がある中でもメタはFANGにもGAFAにも入っていた。つまり、主要大型テクノロジー株の一角を一応ずっと占めてきたわけだ。ただし、その中での存在感は段々薄れてきてはいなかっただろうか。

[参考記事]
米国株なら何でも儲かると聞き2022年の下落で損した投資家必見! S&P500に28%もの差をつけたポール・サイ氏のポートフォリオ、好成績のヒミツとは?

 2021年10月、巨大SNSとして君臨してきたフェイスブックは、仮想空間「メタバース」の構築に精力を傾けることを発表。その覚悟を示すかのように社名をメタに変えるという大胆な策に出た。

 しかし、その後、しばしば漏れ伝わってきたのは、メタのメタバース開発が思うように進んでいないとの報道だった。

 2022年8月には、ザッカーバーグCEOがメタバース上で使う自身のアバターをフェイスブックに投稿したところ、ダサいとの反応がたくさん寄せられたということが話題になったこともあった。

マーク・ザッカーバーグCEOのフェイスブックへの投稿(2022年8月16日)マーク・ザッカーバーグCEOのフェイスブックへの投稿(2022年8月16日)

 ITmedia NEWSは「ダサいメタバース アバターを嘲笑されたザッカーバーグCEO、改良版でリベンジ」という記事で、その模様をこんなふうに報じている。

エッフェル塔とサグラダ・ファミリアらしきものの前で目を見開くザッカーバーグ氏らしきアバターを表現するこの画像に対しては、「90年代のゲームキャラのようだ」「目を見張るほど醜い」「本人と同じくらい無表情だ」などというツイートが多数投稿された。(2022年8月21日、ITmedia NEWS)

 メタはメタメタだ。

 コテコテのダジャレになってしまうが、それがメタに対する筆者の印象だった。

 そんなメタをポール氏は2022年11月という絶妙なタイミングで買いに出たのだ。大きく下がっている途中で「落ちるナイフをつかむ」ようなこともなく、大きく上がってしまったところを飛びつくのでもない、絶妙なタイミングで。

 どうして、そんなにいいタイミングで参入できるのだろう?

メタ プラットフォームズ 週足メタ プラットフォームズ 週足 出所:TradingView

悲観視されて、一番下がっていた銘柄から上がり出す

 ただ、タイミングの話の前に、メタという銘柄の強みがそれほどは失われていないことを確認することがまず重要だ。

 「メタはメタメタ」などと筆者は軽々しく表現してしまったが、2022年11月18日のポール氏のメルマガでは、メタの強みがそれほどは失われていないことが十二分にいろいろと解説されていた。ここでそれらを引用することは省略するが、ポール氏のメルマガに会員登録すれば、会員専用サイトでバックナンバーは閲覧することができる。

 メタの強みがそれほどは失われていないことを確認した上で、次にタイミングの話になるのだが…。

 ここで誤解のないように書き添えておくと、ポール氏のメルマガは中長期投資を基本としている。買ってから仮に下がったとしても、中長期で持てば、いずれ報われるという強みを持った銘柄に投資するスタンスなのだ。

 だから、メタの短期的な買いタイミングがうまくいったことは「たまたま」だとポール氏は謙遜する。

 そうは言いつつも、ポール氏は短期的なタイミングも十分検討しているように感じられるのだ。ポール氏の話を聞いてみよう。

 「テクノロジー株は金利に敏感です。そして、アメリカは金利のピークアウトが見えてきました。株価はそれを半年前に織り込みにいくので、私はそれよりも少し早めに動かないといけません。そして、悲観視されて、一番下がっていた銘柄から上がり出すという傾向もあるので、ネットフリックスやメタを組み入れたのです。

 メタの株価は2016年と同じぐらいのレベルまで下がっており、かなり安くなっているなと思いました」

メタ プラットフォームズ 月足メタ プラットフォームズ 月足 出所:TradingView

 「また、メタのPERは十数倍程度ですが、テクノロジー企業はある年に結構費用を計上して、利益を調整することがあるのです。普通の製造業なら、機械を購入して、何年かかけてそれを減価償却していきます。その一方、メタのような会社はエンジニアへ支払う給料が大半で、それをある年にドンと支払ってしまうことがある。そういうことなどを少し調整して考えると、メタの実質的なPERは1ケタ台という計算になります。

 今の利益水準が今後も最低限は続けられると考えられる企業なら、だいたいPER10倍以下なら割安な水準です。そういうこともメタが安いと考えた理由です」

(つづく)

(取材・文/フリーライター・井口稔)

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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