米国の債務上限問題は意外にあっさり解決。マーケットは混乱もなく好転
米国政府の債務上限を2025年1月まで停止する法案が5月31日に米連邦議会の下院で可決され、翌日の6月1日には上院でも可決された。その後、6月3日にバイデン米大統領が法案に署名し、法律が成立。懸念されていた米国のデフォルト(債務不履行)は回避された。
私は第84回のコラム「米国の債務上限問題、株式市場への影響をどう見るか?」で次のようにコメントした。「米国の債務上限問題はいつも最終的には解決されており、議員たちは“米国破綻”の道は選ばない」「議員たちはあくまで政争の具、すなわち政治の駆け引きとしてこの問題を扱っている」「ギリギリまで戦うポーズを見せながら、最後は妥協点を見出す形になる」と。私の予想では最後までもつれてタイムリミットまでに解決できず、トランプ前大統領やオバマ元大統領の時代に起こった政府機関の一部閉鎖に至る可能性もあると考えていたが、意外にあっさりと決着したという印象である。
今回の政府債務が現行ルールの上限に達したのは今年1月である。バイデン大統領は無条件の債務上限引き上げを共和党に求めてきたが、最終的には共和党の主張する歳出削減にも応じる形となった。すなわち、2024年度の社会保障や国防費などを除いた支出を2023年度並みにし、2025年度も支出の増加を1%に留める。
一時は格付け機関が米国債の格付けを引き下げようという動きも出ていたようだが、マーケットはきわめて冷静だった。金利が急上昇したり、米ドルが大きく売られたり、株式市場が先回りして急落したりすることは全く見られず、慌てふためく気配もなかった。
残念な個人投資家の狼狽売り。市場好転時の反対行動は痛い目に遭う
第85回コラムで書いたように「ごちゃごちゃトレードは厳禁、安値売りの高値買戻しを招くだけ」である。このところ私宛てに「金融不安だからいったん売って、安くなってから買い戻したい」とか「米国の債務上限問題でマーケットが下がると思うので、いったん売ってから安く買いたい」という質問が多数寄せられたが、自分の思い通り都合のいいことは起こってくれない。結局、安値で売ってしまい、高くなって買い戻せないという結果を招いてしまう。これは非常に重要なことなので、ぜひ覚えておいていただきたい投資姿勢である。マーケットが良い方向に向かおうとしているのに、反対の行動を取ると痛い目に遭う。軽率な投資行動である。
さて、5月第4週の投資部門別売買動向が発表された。海外投資家の買い越し額は3186億円となり9週連続の買い越しである。買い越し総額は3.95兆円。買い越しが始まる直前の3月24日の日経平均は2万7385円だったため、ちょうど4000円の上昇を演出したのが海外投資家だ。買いの主体は日本株に特化したファンドによる資金流入である。例えば英国エディンバラに拠点を置くベイリー・ギフォードは3.2兆円もの日本株を運用している超大手であるが、日本株ファンドへの問い合わせが急増しているそうだ。3月31日に東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に資本効率改善要請を出したが、ちょうどこの週から海外投資家の買い越しが始まっており、大きなムーブメントになっていることがわかる。大量報告書でもノルウェー銀行、ブラックロックグループ、オアシス・マネジメントなど長期投資マネーのビックネームが続々と出ている。ノルウェー銀行と言えば、傘下の投資管理部門において世界最大規模の年金基金を運用していることで知られる。
海外投資家の本気の日本株買い。5月のパフォーマンスは日経平均が突出
5月のパフォーマンスが出揃ったが、世界市場において日経平均株価の伸びが際立っている。7%高という上昇率で首位となった。単月のパフォーマンスで首位になるのは1年8カ月ぶりである。ところで、私が注目していた日本の個人投資家の動きはどうなっただろうか?
日経平均が2万8000円を超え始めた4月14日の週から売り越していたが、5月第4週は442億円の売り越しとなり7週連続の売り超である。総額は2.33兆円。5月第3週が9273億円と飛び抜けて多くそこからは急速に縮小しているが、「3万円超えは利益確定売りのチャンス」「あるいはカラ売りで儲けるチャンス」という認識を改めてきているのではないかと思う。そもそもグローバルで割安な日本株、世界でも珍しい金融緩和策、日本企業の今後の資本効率改善努力、本格的な海外投資家の買い、そして来年からの新NISAによる本格的な日本人の資産形成作り…となれば売る理由などどこにもなく、買う理由ばかりが目立つことに気が付き始めたのだ。大きな流れが日本株にやって来ているのを実感しつつあると思う。
「日経平均3万円は通過点に過ぎないだろう」「今はまだ逆業績相場であるが、来たるべき金融相場になれば過去最高値の日経平均3万8957円も超える可能性がある」と私は言ったが、このシナリオの実現に向けてやはり動き出していると思う。
明日開催のWebセミナーでは上昇トレンドに乗るための投資戦略を公開!
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は日々&週間&月間(5月)ベースでの過去最高値を更新し、年初来高値も6銘柄と好調だった。日本株に大きな上昇トレンドが来ていることを実感しつつ、得意のロング戦略が奏功している。
6月7日(水)20時より毎月恒例のWebセミナーを開催する。テーマは『日経平均3万円後の投資戦略』。今後大きな上昇が期待される注目銘柄も詳しく解説。セミナー後半では皆さまからのすべてのご質問にお答えする形で進めていく。会員限定だが、10日間無料お試し期間中でも参加可能。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。毎回大きな盛り上がりを見せているが、今回も多くの皆さまのご参加をお待ちしております。誰でも参加できるので、興味のある方はぜひ一度顔を出していただきたいと思う。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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