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FP(ファイナンシャル・プランナー)は日米で大きく違う。保険に重点を置いてきた日本のFPから突如、いい投資のアドバイスを受けることは難しい

2023年10月4日公開(2023年9月29日更新)
ポール・サイ
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 金融の潮目が変わってきた今、保険・税務に重きを置く日本のファイナンシャル・プランナー(FP)は時代遅れの存在です。

アメリカではファイナンシャル・プランナーへ相談し、金融全般にわたるアドバイスを受けるのは一般的なこと

 私がエクソン(現エクソンモービル)でエンジニアとして働いていた当時、同僚が定期的にファイナンシャル・プランナーに相談していると聞いたことがあります。

 エクソンには多くの社員をクライアントとして持つファイナンシャル・プランナーがいて、社員は一定の勤続年数を経ると、セミナーやパーティーに招待され、そのファイナンシャル・プランナーを紹介されるという流れがありました。

 日本ではサラリーマンがファイナンシャル・プランナーに相談することはあまり聞きませんが、アメリカではよく見られます。たとえば、私の地元ではエドワード・ジョーンズというファイナンシャル・プランナーの会社が人気です。数万ドルの投資資産があれば、同社のクライントになることができます。

 アメリカのファイナンシャル・プランナーは、クライアントの全体的な財務状況、将来の目標、リスク許容度などを詳しく聞き、それに合ったファイナンシャル・プランを作成します。そのプランは、主に投資戦略や資産配分のアドバイスが中心となりますが、株式投資だけでなく、債券投資、不動産の管理(自宅を含む)、ローンに対する考え方、保険、そして金融全般にわたるアドバイスが提供されます。

 アメリカのファイナンシャル・プランナーは報酬として、コミッション(商品販売手数料)を得ることがかつては主流でしたが、最近ではクライアントの利益を最優先する(フィデューシャリー・デューティー)ために、管理資産に対して定額・定率の手数料を取ることが主流となりつつあります。

資産運用・投資にあまり重きを置いていない日本のファイナンシャル・プランナーの実態

 一方、日本のファイナンシャル・プランナーですが、その仕事内容を日本FP協会は次のように定義しています:

「人生の夢や目標を達成するために総合的な資金計画を立て、経済的な側面からその実現をサポートすることを『ファイナンシャル・プランニング』と呼んでいます。家計に関連する金融、税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度など幅広い知識が必要となります。これらの知識を持ち、相談者の夢や目標を達成するために一緒に考え、サポートする専門家が、FP(ファイナンシャル・プランナー)です」
日本FP協会公式サイト日本FP協会公式サイト

 この定義を見ると、アメリカのファイナンシャル・プランナーとの違いはほとんど感じられませんが、日本のFP試験の内容や実務を見ると、資産運用・投資にはあまり重きが置かれず、税制・保険・相続・制度などに焦点が当てられていることがわかります。

 日本のFP試験では、投資に関しては基本的な知識以外はあまり求められていません。

 しかし、終身雇用の崩壊など労働形態は変化しています。また、企業年金は確定給付型から確定拠出型へ移行しつつあり、確定拠出型では自分自身が運用しなくてはいけません。退職までにどう資産を形成していけばいいのか、会社に頼りっぱなしにはできなくなっており、個人が責任を持つ時代になってきています。

 2~3億円の生涯年収と考えれば、厚生年金などの先行きが不透明な中、投資なしでは老後生活をうまく送れるかどうか、危ういと思います。

これまで保険に重点を置いてきたファイナンシャル・プランナーから突如としていい投資のアドバイスを得ることは難しい

 金融がグローバル化している現代では、どこにいてもインターネットさえあれば世界中へ投資が可能です。これにより、誰もが同じスタートラインに立つことが可能となりました。

 デフレの時代には、投資に重きを置く必要はありませんでした。現預金を持つだけで安全でした。

 しかし、今は世界的にインフレ率が高まり、日本もデフレ時代からインフレ時代に転換しつつあります。さらに日本政府の借金も増大する中、現金、特に円だけを資産とすることのリスクは高まり、ファイナンシャル・ゴールを達成できなくなる可能性があるのです。

 これまで保険に重点を置いてきたファイナンシャル・プランナーから突如として投資のいいアドバイスを得ることは難しいでしょう。自己啓発が必須となります。いずれ日本のファイナンシャル・プランナーの協会も進化するでしょうが、その動きは遅そうなので、待っていられないです。

アメリカ人向けのファイナンシャル・プランは日本人にも通用する

 日本に住んでいるからといって、ファイナンシャル・プランがアメリカ人と大きく異なっている必要はないと考えます。大金持ちの場合、相続や税務などが重要になりますが、一般的なサラリーマンにとってはそれほど大きな違いは生じません。

 したがって、アメリカ人向けのファイナンシャル・プランは日本人にも通用するということです。日本のみなさんには、アメリカのファイナンシャル・プラニングの考え方や知識を身につけることをお勧めします。

 日本では自分のファイナンシャル・プランに関するすべてのアドバイスを1人のファイナンシャル・プランナーから得ることは難しいため、自身で学ぶことが重要です。

 必要な知識は、個々の専門家から得るべきです。投資については証券会社の営業マンではなく、投資の専門家、または利害関係の少ない情報源(たとえば書籍や雑誌など)から得るべきでしょう。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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