成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

トランプが大統領になったら、ハイパーインフレを引き起こす可能性はあるか? トランプ政権になったら3つの経路からインフレ再燃の可能性大!

2024年6月19日公開(2024年6月18日更新)
ポール・サイ
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

英エコノミスト誌はトランプ当選の可能性は3分の2と報じた。トランプ大統領誕生が現実的なものに

 英エコノミスト誌は先週、トランプ当選の可能性は3分の2と報じました。各州の選挙人の票数とスイング・ステートを考慮した3つのシナリオのうち、トランプが勝つのは2つのシナリオということでした。

 また、賭け市場の平均では、トランプ当選の可能性は45.5%、バイデン当選の可能性は33.3%です(以下は賭け市場の一例で、数値は「賭け市場の平均」とは異なっています)

Polymarketでの2024年米大統領選の賭け賭け市場の一例。分散型予測マーケットのPolymarketではトランプ当選の可能性が56%、バイデン当選の可能性が34%となっている。 出所:Polymarket

 アメリカのビジネスリーダーは、すでにトランプ当選を見越して方向転換と準備を始めています。

 以前はトランプを批判していたJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOも、トランプを評価する方向へコメントを変えつつあります。

大統領選はまだ数ヵ月先で、討論会もこれからなので、状況は十分変わる可能性がありますが、トランプ大統領の誕生は現実味を帯びてきました。

[トランプに関する参考記事]
トランプ有罪の評決は、実はトランプに有利!?次期米大統領はトランプと見てビジネス界は動き出した。ここで投資家はどう動くべきか?
なぜ多くのアメリカ人がトランプのような人物に票を入れるのか? その背後には理由がある。宗教がアメリカの政治に及ぼしている影響とは?

トランプ政権はインフレを引き起こす可能性が高い

 ここで、トランプが大統領になった場合、マクロ経済がどう変わるかについてコメントしたいと思います。

 ドナルド・トランプは多くの世論調査で依然としてリードしており、先ほど述べたとおり、賭け市場でも彼が11月の選挙で勝つ可能性が高いと見られています。

 したがって、彼の実際の政策がどのようなものであり、それがアメリカ国民が関心を持つ事柄にどのような影響を与えるかを考えることが重要です。

 現在、アメリカ国民が最も関心を持っているのはインフレです。したがって、トランプの政策が物価にどのように影響するかを考えておく必要があります。

 結論から言うと、私はトランプ政権がインフレを引き起こす可能性が高いと考えています。

 トランプがアメリカでインフレを引き起こす可能性のある3つの主要な経路があります。それは、関税強化、財政赤字、そしてFRB(米連邦準備制度理事会)に金利を引き下げるよう、圧力をかけることです。

関税強化はインフレ率にどう影響を与えるか?

 トランプはすべての国からのすべての輸入品に10%の関税、中国製品に60%の関税、中国企業が製造したすべての車に200%の関税をかけると公約しています。

 関税強化は消費者物価を引き上げます。これは供給ショックの一種です。供給ショックは成長を衰えさせ、失業率を上昇させ、インフレ率を引き上げます。

 ただし、関税強化が実際に価格をどれだけ押し上げるかには多くの不確実性もあります。

 たとえば、米ドルの世界の基軸通貨としての存在感を薄れさせるような措置がなければ、関税は米ドルを強くする可能性があり、通貨高になった分、アメリカ人は輸入品を安く購入できるようになります。そうなれば、関税そのものによって価格が押し上げられる影響は一部相殺されることになります。

 米国内のインフレ率が上昇すると、中央銀行は政策金利を引き上げるか、政策金利を高く保ち続けるので、通貨は強くなりがちであり、そうなればインフレはその分、抑制されるでしょう。

 トランプがある程度、自国通貨高を嫌がることはあるかもしれません。トランプが米ドルの価値を下げるために劇的な行動を取ることまでは考えにくいものの、もし、そのようなことを実行したら、アメリカのインフレ率はさらに高まるでしょう。

関税強化によって物価が上昇したとしても、それは一時的なもの

 2018年に起こった米ドル高は、トランプの最初の任期中の関税強化がアメリカの消費者物価をそれほど押し上げなかった理由の1つになっているかもしれません。

 また、もし関税強化によって物価が上昇したとしても、それは一時的な物価上昇であり、長期的なインフレ率の上昇ではありません。

 しかし、2021~22年に見られたように、一時的なインフレ率の急上昇でも有権者を非常に不満にさせることがあり、消費者物価が6~7%も上がるようなことがあれば、それは軽視できません。

 関税の件についてまとめると、トランプの関税強化によってインフレ再燃となるリスクは現実的なものとしてありますが、その効果は一時的なものであり、規模は控えめである可能性もあります。

 しかし、次に述べるとおり、他のトランプの政策は、インフレ率に対してより大きく、より持続的な影響を与える可能性があります。

トランプは緊縮財政を嫌悪し、財政赤字に無関心だ

 私たちはトランプとインフレをあまり結びつけませんが、それは彼の最初の任期中(2017年1月20日~2021年1月20日)にインフレ率が低かったからです。

 米国のインフレ率はトランプ任期中の2020~2021年始めにかけて低いままでしたが、その理由は新型コロナにあると思います。アメリカのインフレは新型コロナ禍後に表面化しました。

米消費者物価指数(前年比)の推移出所:米労働省データより編集部が作成

 しかし、新型コロナ禍の経験から、以下の2つのことが観察できました。

(1)財政支出は需要側のインフレに大きく寄与することがある

(2)トランプは緊縮財政を嫌悪している

 トランプの緊縮財政への嫌悪と財政赤字に対する無関心はパンデミック以前から存在していました。

 一般的にポピュリストの指導者は、長期的に国民に苦痛をもたらす可能性があっても、短期的な利益を提供して、自分自身の人気を保つ傾向があります。

 2期目のトランプ政権では、この財政赤字政策が続くでしょう。

財政赤字はインフレ率にどう影響を与えるか?

 理論的には、財政赤字はインフレを引き起こす可能性があります。

 ただし、マクロ経済学の理論が現実のガイドとして常に優れているとは限りません。たとえば、日本のように、政府が巨額の債務を抱えていてもインフレを引き起こさなかった例もあります。

 しかし、トランプ政権下での財政赤字の拡大がインフレ率を引き上げる懸念は依然として存在します。

トランプはFRBの独立性を脅かし、それがインフレにつながる可能性

 理論的には、FRBは米政府から独立しているはずで、FRBは最大限の雇用と物価の安定のバランスを取るために金利を管理することになっています。

 インフレ率が上昇した場合、FRBは金利を引き上げて、それに対抗する必要があります。ただ、金利の引き上げは短期的には経済的苦痛を引き起こす可能性があります。

 たとえば、1980年代初頭にFRB議長のポール・ボルカーが金利を引き上げた時、アメリカは短期間に2回の景気後退に陥りました。つまり、FRBの役割は「悪役」を演じることであり、そのためにFRBには独立性が与えられているのです。

 トランプは最初の任期中に繰り返しFRBを攻撃し、金利をさらに引き下げるよう要求しました。これにより、多くの人がトランプはFRBの独立性を損なおうとしていると感じました。

 現在、トランプの側近たちはFRBの独立性をさらに損なうための提案を静かに準備しているようです。また、2026年にパウエルFRB議長の任期が終了します。次期大統領は次のFRB議長を指名することになるので、大統領の影響力は従来より大きくなるでしょう。

トランプはハイパーインフレを引き起こす可能性があるか?

 トランプ政権になると、ハイパーインフレがアメリカで発生する可能性はあるでしょうか?

 その可能性は低いです。

 アメリカは非常に豊かで、その経済圏は巨大です。米ドルは非常に重要な通貨であるため、トランプ政権による相当な経済への干渉がなければ、アルゼンチンやベネズエラのようなハイパーインフレになることはないでしょう。

 しかし、ハイパーまではいかないにしても、ある程度の高いインフレになる可能性はメインシナリオになると私は考えています。

トランプ政権によってアメリカのインフレが再燃すれば、日本へはどんな影響があるのか?

 日本の国内経済の大きな変化や円安は、海外のインフレ、そして海外の金利上昇がきっかけとなって起こりました。

 トランプ政権によって今の少し高いレベルのインフレが続く場合、日本も円安と国内のインフレが続くでしょう。そのペースが上がる可能性もあります。

 ですから、日本人も従来の低インフレ・低金利向けの投資戦略を再考する必要があるでしょう。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言し、ポートフォリオ(直近1年70%以上の上昇)の提案するメルマガを配信中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。


【ザイ投信グランプリ2024】を発表!本当にいい投資信託だけを表彰
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

「株」全予測
人気株500激辛診断
優待年末年始

2月号12月20日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[「株」全予測/人気株500激辛診断]
◎新春特別企画
2024年に儲けた株&損した株も大公開!
桐谷さんのゆく年くる年

2025年も全力優待ライフ
◎第1特集
2年目NISAの必勝法!
112人のプロに聞いた!
2025年「株」全予測&儲け方

●日経平均は5万円へ!日本株の高値・安値予測
●生成AIブームも半導体は苦戦!
上がる株・下がる株
●国内利上げで銀行・金融が有望!
上がる業種&テーマ
●中央銀行の買いが継続!金(ゴールド)
●トランプ政権下でも下落傾向!原油
●ドル円は年後半に140円台に!為替
●オルカンの次に買う1本も!投資信託

◎第2特集
買っていい10万円株は97銘柄!
<2025新春>人気の株500+
Jリート14激辛診断

●投資判断に異変アリ!
買いに躍進!》トヨタ自動車、ホンダ…など
強気に転換!》ソニーグループ…など
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
通期で上ブレ期待/AI関連で恩恵他
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
PBRが低く改善に期待の株/アナリストが強気な株/配当利回りが高い株
●2025年新春のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株/Jリート
●気になる人気株
大型株/新興株/Jリート

【別冊付録】
増益割安株は1178銘柄
上場全3916社の最新理論株価

◎第3特集
トランプ政権下でどうなる!?
人気の米国株150診断
●S&P500指数をプロが大予測

●Big8を定点観測!GAFAM+αを分析!
●買いのオススメ株
トランプ株/高配当株
●人気の124銘柄を徹底診断
ナスダック/ニューヨーク証券取引所

◎第4特集
ザイクラブ拡大版!2024年はどうだった?
ザイ読者の悲喜こもごも&2025年の投資戦略
ザイ編集部員のプチ反省&自慢大会も!


◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年10月編
◆おカネの本音!VOL.29兒玉遥さん
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報