投資の世界では、日常生活の観察を活かすことが強力な戦略となります。
日々の経験や気づきを投資のヒントとして利用することで、他の投資家が見逃しているチャンスをつかむことができます。今回はどのようにして、日常の観察から投資アイデアを見つければよいか、説明したいと思います。
私の娘がコストコ株を買いたいと思った理由は…
私の子どもたちが13歳になった時、株式投資を学ばせようと、証券口座を開いてあげました。
子どもたちは株式投資初心者ですから、やっぱり日常生活の観察を活かして、株式の分析に取り組んでいます。
娘は最近、コストコ(ティッカー:COST)の株を買いたいと言いました。理由を聞いたら、私たちはよくコストコに行くし、駐車場がいつも満杯で、いいビジネスだと観察したからだそうです。
以上は手始めとして、私の娘が行った、日常生活の観察を株式投資につなげた例をご紹介しましたが、ここからは株式投資に役立つような日常生活の観察のやり方をパターン化して、5つほど挙げてみましょう。
(1)日常の消費行動を観察する
まず、自分自身の消費行動を振り返ってみましょう。
あなたは最近よく行く店や、頻繁に購入する商品がありますか?
たとえば、新しいカフェチェーンが急速に広がっていることに気づいたり、特定のブランドの服が周りで人気になっていることに気づいた場合、その会社の株式は調べてみる価値があります。
たとえば、私は日本株で、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、パンパシHD、7532)に投資しています。同社は総合ディスカウントストアのドン・キホーテを運営していて、日本人にも、インバウンドの外国人にも大人気です。
私はパンパシHDが海外展開する方針を発表した頃に、その株を買いました。日本国内の店舗を観察した結果、海外でもうまくいくと思ったのです。
[パンパシHDに関する参考記事]
●私の歩んできた道(2) 9・11同時多発テロで株の暴落を経験し、株の絶好の買い時を学んだ。フィデリティ投信の入社試験でドン・キホーテを分析して合格!
●信越化学やパンパシHDには独自の強みがあり、日本株全体が上昇していなくても買っていい! トランプはバイデンよりインフレにアクセルを踏む経済政策を取る
(2)周りの人々の行動を観察する
家族や友人、同僚など周りの人々が何にお金を使っているかに注目しましょう。
たとえば、新しいスマートフォンが発売された時、多くの人がその製品を購入しているのを見かけたら、そのスマートフォンを製造している企業に注目するのも1つの方法です。
(3)トレンドを見極める
日常生活の中で見えてくるトレンドも重要です。
たとえば、健康志向の高まりや環境意識の向上など、大きな社会的トレンドを観察することで、将来的に成長が期待できるセクターや企業を見つけることができます。
(4)製品やサービスの質を評価する
実際に使ってみた製品やサービスの質も投資判断に役立ちます。
自分が良いと感じたものは他の人も同様に感じる可能性が高く、その企業が成功する確率も高まります。逆に、満足できない製品やサービスを提供している企業は、業績が低迷するリスクがあるため、注意が必要です。
(5)市場調査を補完する
日常生活の観察は、公式な市場調査を補完するものとして活用できます。
自分の観察結果と企業の業績報告やアナリストの意見を照らし合わせることで、より確実な投資判断が可能となります。
では、米国株投資をしようとする時、日本にいて、どんなふうに米国内のトレンドを観察できるのでしょうか?
それはグローバルなトレンド、日本でも日常的に見えるトレンドに注目することです。
たとえば、AIは日本でも浸透し始めているので、AIの浸透具合は観察できます。それと、日本の上場企業にはグローバル企業が割と多いので、その会社の国内の動向から、グローバルなトレンドを推測することもできます。
もし、グローバル企業で働いていたら、自分の在籍する会社の状況や業界動向などが自然とわかるでしょうから、それを投資に活用できるでしょう。競合先の動向も、自分の会社の状況から推測できます。
自分自身の経験──パソコンでゲームをした時、エヌビディアを知った
私が初めてエヌビディア(NVIDIA、ティッカー:NVDA)を知ったのは、パソコンでゲームをした時でした。エヌビディアは優れたGPUを作っており、小さな会社から業界のトップまで成長しました。
しかし当初、GPUはゲーム中心に使われていたため、市場はそこまで大きくありませんでした。
その後、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)が登場したことにより、エヌビディア株はビットコインの価格変動に影響を受けるようになりました。この時点で私はエヌビディアに注目し、投資したり、売却したりしていました。
しかし、本当にエヌビディアに関する知識が活かせるようになったのはAIの登場時でした。
2022年9月に買い推奨したエヌビディア株はテンバガーに!
私はかつてカーネギーメロン大学のビジネススクールで学びましたが、その同窓会で、コンピューターサイエンス学部によるAIに関する講義を聞く機会がありました。カーネギーメロン大学はコンピューターサイエンスの分野で世界トップ3に入る大学です。
[カーネギーメロン大学に関する参考記事]
●私の歩んできた道(2) 9・11同時多発テロで株の暴落を経験し、株の絶好の買い時を学んだ。フィデリティ投信の入社試験でドン・キホーテを分析して合格!
私は以前、AIをただの統計手法の延長と考えていましたが、その講義を通じて、これは単なる統計手法の延長ではないと気づきました。「今回は違う」と気づくことができたのです。
そして、GPUはAIにとって重要なことがよく理解できました。
この知識を持っていたので、エヌビディアの株価がさまざまな要因で下がっていた2022年9月に私が配信しているザイ投資戦略メルマガで買い推奨できたのです。
[筆者(ポール・サイ)によるエヌビディア株買い推奨に関する参考記事]
●1年間で米国株でS&P500に50%超の大差圧勝! エヌビディア株を底値近くで買っていた投資家が語る「悪いニュースはいいニュース」ってどういうこと?
●株式市場は詐欺的!? ハイテク株の女王、キャッシー・ウッド率いるアークの旗艦ファンドはなぜ悲惨な成績なのか?
●2023年、60%近いリターンを叩き出したポール・サイ氏が語る2024年相場見通し。ポートフォリオに必ず米国株を入れるべき理由とは?
私自身もエヌビディア株に投資しています。私が投資してから、エヌビディア株はほぼ10倍に上昇しました。
株価が10倍になった銘柄のことを「テンバガー(ten bagger)」といいます。この言葉はフィデリティの伝説的ファンドマネージャーだったピーター・リンチが名付けたのですが、エヌビディアはそのテンバガーになったのです。
そして、この投資は、私が自分の周りのことに注意を払っていたからこそできた投資でした。
まとめ──日常生活の中にも他の投資家が見逃しているチャンスは潜んでいる
日常生活の中で得られる情報を活用することで、他の投資家が見逃しているチャンスを見つけることができます。
自分の周りの変化に敏感になり、それを投資のヒントとして活用することで、成功する投資家になる道が開けるでしょう。
観察力を磨き、日常生活から学び続けることが、賢い投資の第一歩です。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。推奨ポートフォリオは直近1年で70%以上の上昇。
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