「勝者のゲーム」と資産運用入門

日経平均急落で年初来安値も長期投資家に好機到来。
急落はノイズにすぎず、優良株のバーゲンセールだ。
銘柄分析力を磨いて安値で仕込めるようになろう!太田忠の勝者のポートフォリオ 第178回

2025年3月4日公開(2025年3月3日更新)
太田 忠
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日経平均は1400円安となる3万6840円まで下落し、年初来安値を更新

 2月最後の取引日となった28日の金曜日。日経平均株価はザラ場中に一時1416円安の3万6840円まで下落した。今年に入ってから日経平均は3万8000円~4万円のボックス圏で推移してきたが、それを大きく下回る3万6000円台後半の水準まで下がった。年初来から3054円安となり、2024年9月以来の安値をつけた。

 急落をもたらしたキッカケは2つある。1つが米トランプ大統領の追加関税への言及、もう1つが米エヌビディアの株価急落である。トランプ大統領は延期していたメキシコとカナダへの25%の関税を3月4日より課すと自身のSNSで表明。先行して発動していた中国への10%の追加関税をさらに追加で10%課すと述べ、欧州連合(EU)にも25%の関税を検討しているとの考えも示した。大統領就任日こそ関税引上げに関する大統領令に署名せず「貿易国に対して、不正や不公平がないかどうか調査する」という穏便な措置に留めたが、自らを「タリフマン(関税男)」と言うに相応しい派手な行動ぶりだ。

エヌビディアの決算は堅調も短期的な利益率悪化が懸念されて株価急落

 エヌビディアが発表した2024年11月~2025年1月期決算は市場予想を上回り、2025年2月~4月期の売上高は前期比65%増になるとの予想が示されてマーケットコンセンサスを上回った。文句のない決算内容だったが、短期的な利益率悪化という点のみがフォーカスされて、決算発表翌日の株価は8.5%安と急落。SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)も6.1%安と大きく下げた。

 東京市場ではこの流れを受け、特に半導体関連株の下落が激しくアドバンテストやディスコ(6146)が10%安、東京エレクトロン(8035)が5%安、スクリーンHD(7735)が7%安、そしてレーザーテック(6920)は昨年来安値更新となる7%安の壊滅的状況となった。半導体関連株は個人投資家に非常に人気で「強い成長力&大きな値動き」もあり魅力的な投資対象となっている。また、現物株以上に信用取引という仮需による売買が盛んな銘柄とも言えよう。

国内の半導体関連株も急落。追証発生による強制処分など投げ売り状態か

 損失に耐え切れなくなった現物株の見切り売り、さらには信用取引の個人投資家たちは追証発生や強制ロスカットで買いポジションを即処分しなければならず投げ売り状態となった。信用取引は「元手の資金で3倍の取引ができる」というレバレッジ取引、すなわちその実態は借金取引である。取引期限が6ヵ月と決められているのがミソであり、その期間内に利益を稼ぎ出さねばならない。信用取引をしている銘柄について「ファンダメンタルズが良い」「業績が上方修正される」「まだまだ割安だ」という地に足がついた理由があったとしても、2月28日のような個別銘柄とは関係のない要因で相場全体が売られると目も当てられない状況になる。追加保証金(追証)を差し入れねばならない事態が発生し、それに応じる余裕がなければ証券会社によって強制ロスカットが行われる。

 個別銘柄の信用取引はファンダメンタルズという視点では立ち回りにくいということだ。現物投資なら時間的制約がないため、相場全体のクラッシュ時に売る必要はないが、信用取引はそういうわけにはいかない。明らかにミスマッチ取引、分の悪い取引と言える。欲の皮が突っ張った、失敗が許されない、心理的余裕のない信用取引などやるものではない。儲かるのは証券会社だけである。投資家がどうなろうが知ったことではない。

急落の背景にはヘッジファンドの暗躍も。その手口を理解しておこう

 さて、2月28日のマーケットに話を戻す。前回のコラム『スマート投資家が知るべき日本の株式市場の実態』において「東京市場の65%の売買が値幅取りを行う投機目的」「マーケット環境や値動きで勝負しており、ファンダメンタルズを見ていない投資家が多い」と述べた。東京市場における投資家別売買の内訳は外国人投資家が70%も占めており、そのうちヘッジファンドが7割だと指摘した。

 ヘッジファンドの運用は成果主義的な報酬体系となっており、投資利益に対して20%の成功報酬が基本でマイナスなら報酬なしだ。したがって、ファンドマネジャーはあらゆる機会をとらえて利益を上げようと売買を仕掛けてくる。日経平均が大きく下がりそうな日は現物株のカラ売りのみならず、先物取引を使って大きな売りを浴びせ、現物取引の投資家や信用取引の投資家たちに売りを促す極端なトレードを行って利益を得ようとする。東京市場で跳梁跋扈しているのが先物・オプションを積極的に活用するグローバル・マクロとCTA(Commodity Trading Advisor)である。グローバル・マクロは経済指標発表や政治情勢などを材料に投資しており、CTAはアルゴリズムによるトレンドフォローを自動売買で行う。いわゆる先物主導で現物市場に大きな影響を与えている投資家たちだ。

急落は短期投資家には大ピンチも、中長期投資家には大チャンスとなる

 2月28日の急落は昨年私が皆さんに詳しく解説したシステマティックリスク(市場全体のリスク)によるものであり、個別企業のファンダメンタルズはほとんど関係もなく、単なる株価の揺らぎである。私が日頃「マーケットノイズ」と言っている現象である。

 2024年8月5日を覚えておられるだろうか。「令和のブラックマンデー」も同じ現象だった。単なる一時的な揺らぎである。私は至って泰然自若で買い増しをしてパフォーマンス向上に努め、まさに絶好のバーゲンセールであった。「チャンスはピンチの顔をしてやって来る」が私の口癖だが、まさにそれだ。信用取引やレバレッジ取引という危ない道を歩いている短期投資家には「ピンチはピンチ」でしかないが、スマート投資家には「ピンチはチャンス」。こういう時のために手元資金を準備しておくことの大切さを認識していただきたいと思う。日経平均が3万5000円程度まで下がれば「大バーゲンセール開催中」となる。

面白くなってきた日本株。3月6日セミナーでは勝機をつかむ戦略を伝授!

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。毎週のメルマガ配信による運用の指南だけではなく、2大特典として毎月のWebセミナー開催と動画によるスペシャル講義を提供している。

 次回のWebセミナーは3月6日(木)20時より開催する。テーマは『モタモタする日本株にこそ勝機あり、ボックス圏の動きはチャンス満載』を予定。昨年の9月に米連邦準備理事会(FRB)が4年半ぶりの利下げを行ったことで金融相場に入った。金融相場入り直後は急騰を演じたものの、10月以降の日経平均は3万8000円~4万円での完全なるボックス圏を推移し、金融相場の高揚感は感じられない。2月28日にはそのボックス圏を底抜けた。どういう点に着目すべきなのかについて投資戦略や個別銘柄の話をしたい。会員限定だが10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加可能である。お申し込みはセミナー当日3月6日(木)14時まで可能だ。「ザイ投資戦略メルマガ 勝者のポートフォリオ」で検索するなどしてお申し込み下さい。毎回300名を超えるビッグイベント。ぜひ一度、お気軽にご参加下さい。

 動画によるスペシャル講義ではいよいよアンシステマティックリスク、すなわち個別銘柄リスクに関する詳細な講義をスタートした。2月は『大型株・中型株・小型株の定義と株価属性』『グロース株 vs バリュー株』の2本立てである。皆さんは「きちんと決算短信を読めますか?」「財務分析できますか?」「業績予想に込められた企業の思惑を推測できますか?」。そして「個別銘柄にまつわる信用取引の状況を解読できますか?」。おそらく、そういう力が圧倒的に不足していると思う。そうした力をつけるための講義を3月以降に行っていきたい。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

 

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