先週、一番驚いた出来事は2月28日(金)の会談での、トランプ政権サイドとゼレンスキー大統領の口論でした。
日本ではそこまで大きく報道されていないかもしれませんが、これは地政学的に大きな転換点となる出来事です。日本株、米国株、世界株にも影響を及ぼすでしょう。
トランプ大統領はプーチン大統領を信じ、プーチン大統領もトランプ大統領は裏切らないと考えている
2025年2月28日(金)、ホワイトハウスで行われたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談では、ウクライナの鉱物資源に関する協定の締結が期待されていましたが、激しい口論の末に両者は決裂しました。
トランプ大統領は、ウクライナへの米国の支援に対する感謝の欠如を指摘し、ゼレンスキー大統領を非難。一方、ゼレンスキー大統領は、ロシアのプーチン大統領との外交的解決策に強い不信感を示し、過去の合意が破られてきたことを指摘しました。
トランプ大統領は会談の中で、1回目の政権時にロシアとの「共謀疑惑(Collusion)」で攻撃され、プーチン大統領は自分と共に困難な時期を過ごしたと発言しました。それはまるでプーチン大統領が戦友のようなニュアンスでした。
つまり、トランプ大統領はプーチン大統領を信じ、プーチン大統領もトランプ大統領は裏切らないと考えているということです。これにより、トランプ大統領がいかにプーチン大統領に近いかが改めて明らかになりました。
トランプ大統領とゼレンスキー大統領の口論自体は夫婦喧嘩のような話。しかし、会談は決裂し、協定への署名は見送られた
トランプ大統領とゼレンスキー大統領が対立した結果、予定されていた共同記者会見はキャンセルされ、協定への署名も見送られました。
口論の内容自体は、あまり本質的なものではないように思えます。「感謝されていないから非難する」というのは、ちょっと夫婦喧嘩のような話です。通常、外交の場ではこのようなやり取りは表に出さないものです。
一方、ゼレンスキー大統領のプーチン大統領への不信感は単なる感情論ではなく、1回目のトランプ政権時にプーチン大統領がトランプ大統領を裏切ったという事実に基づいた指摘でした。

トランプ大統領は戦後、アメリカが構築してきた国際秩序を破壊しようとしている。大国が小国をいじめる可能性が高まってきた
トランプ大統領は、おそらく世界を3つの「勢力圏(Sphere)」に分けたいと考えているのでしょう。欧州はロシアの勢力圏、アジアは中国の勢力圏、アメリカ大陸はアメリカの勢力圏ということです。
このような世界観は、第二次世界大戦前の状況に近いところがあり、戦後、アメリカが構築してきた国際秩序を破壊することを意味します。
そうなれば、大国が小国をいじめる可能性が高まり、アメリカの後ろ盾がなくなった日本、韓国、台湾などは自国の防衛を自力で担わなければならず、それらの国々が核兵器を持とうとするシナリオも現実味を帯びてきます。
地政学的な不安定さを高めているのはアメリカのトランプ大統領だが、歴史的に見て、このような時に安定感があるのはアメリカ。ポートフォリオ内に米国株は不可欠
こうした背景の中、地政学的な不安定さは高まる傾向にあります。
その地政学的な不安定さを高めている中心的存在がトランプ大統領とも言えるわけですが、そのようなトランプ氏が大統領を務めるアメリカこそが実は最も変化しない国なのです。
第二次世界大戦の前後を見ても、アメリカは一貫して安定していました。戦火が直接アメリカ本土に及ぶことはなく、経済的にも強固な地位を維持してきました。
そのため、分散投資されたポートフォリオの中でも、米国株は不可欠な存在と言えるでしょう。
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●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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