私の弟がAIツールを使いこなし、プロ顔負けのスポーツアナリストになった日
私の弟は金融や投資とは縁のない仕事をしています。弟はコンピュータサイエンスに関連する分野で仕事をしてきました。
そんな弟がある日、AIツールを使いこなすことで、プロのスポーツアナリストも驚くようなスポーツの試合に関する分析モデルを独力で構築したという話をしてくれました。
選手のパフォーマンスデータ、チームの戦術傾向、試合会場の気候条件などなど──弟はこのような膨大な変数をAIに学習させ、スポーツの試合結果の予測精度を高めていったのです。
この出来事が私に示唆したのは、「専門家だけが持っていた分析能力が、AIによって民主化されつつある」という事実です。
[参考記事]
●AIとインフレが同時加速する一見複雑な時代。しかし、構造さえ理解すればチャンス大! 資産価値を決める3つの軸とは? AI時代の投資家の最大の武器は?
●ネットフリックスは割安かも! ワーナーブラザーズ争奪戦でパラマウントに勝つと見込み、「配信力×コンテンツ」の長期戦略が正しいなら株価は戻るはず
投資の世界においても同じことが起きています。
かつてはゴールドマン・サックスのアナリストチームが数週間かけてまとめていたような調査レポートが、今や個人がAIツールを使い、数時間で似たようなものを作ることができてしまいます。
私自身もAIと協力して、200ページにもおよぶガイドブックをわずか6時間で完成させることができた
私自身もAIの力を実感した経験があります。
あるテーマについてのガイドブックをAIと協力して作成したのですが、約200ページ分もある詳細なコンテンツをわずか6時間ほどで仕上げることができたのです。
構成の立案から各セクションの執筆まで、AIは強力な私の共同作業者として機能しました。従来なら、書籍編集の専門家やデザイナー、場合によってはプログラマーまで必要とした作業が、私一人でできてしまったのです。
[参考記事]
●AI活用で約2000時間の作業がわずか6時間に。約200ページの日本沿岸ヨットクルージングガイドが完成! AIがコンテンツ産業に与える大きな地殻変動とは?
AI時代の今は、深いドメイン知識を持っていることこそが新しい競争優位性となる
ここで強調しておきたい重要なことがあります。
AIが飛躍的に台頭する前の世界では、アイデアを形にするためには技術的な実装力が不可欠でした。
医師が医療アプリを作りたければ、エンジニアを雇わなければなりませんでした。投資家が独自の分析ツールを作りたければ、プログラマーに依頼するしかなかったのです。専門知識と実際のアウトプットの間には、常に「技術の壁」が存在していました。
AIはその壁を取り払いつつあります。
深いドメイン知識を持つ人間が、AIを通訳として使うことで、直接、アウトプットを生み出せる時代がやってきたのです。
[参考記事]
●AI時代に大学受験する我が子へ伝えたいこと──もはやコーディングは高年収への切符ではない。AI時代の主権を握るのは「データ」と「専門知」だ
長年、市場を見てきた投資家の洞察、現場で積み上げた実務経験、業界を知り抜いたプロフェッショナルな判断力──こうした「何を知っているか」という知識こそが、今やAI時代の最も価値ある資産となっています。AIはその知識を形にする道具に過ぎません。
裏を返せば、ドメイン知識なしにAIだけを使っても、本物の価値は生まれない、と言えます。
AIが生成するコンテンツの質を見極め、正確さを判断し、深みを加えることができるのは、その分野を知り抜いた人間だけです。
私の弟がスポーツ分析モデルを作れたのも、選手やチームのデータをどう解釈すべきかを深く理解していたからでした。
投資においても同じことが言えます。
AIは決算説明会のトランスクリプト(文字起こし)を要約し、複数のレポートの論点を整理できます。しかし、AIができることはそこまで。「そこに見られる変化が企業のストーリーを変えるか否か」を判断するのは、市場を長年見てきた投資家の目なのです。
AGI(汎用人工知能)誕生へのタイムラインは?
グーグル・ディープマインドのデミス・ハサビスCEOは、「2030年までに50%の確率でAGI(汎用人工知能)が誕生する」と発言したことがあります。
AGIとは人間と同等、あるいはそれ以上の知的能力を持つAIのことです。これが実現した場合、社会・経済・投資のあり方は大きく変わることでしょう。
[参考記事]
●2030年までの実現可能性50%。人間と同じかそれ以上の知的能力を持つAGI(汎用人工知能)の登場迫る。知的労働がAIで代替可能になる時、社会はどうなる?
●トランプは任期内のAGI登場を確信し、製造業を国内回帰へ。知的産業で稼ぎづらくなる前に、本物のテック株を安く買えるチャンスが到来!
グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)の公式サイト
将来的にAGIが完成すれば大きな出来事だが、それよりAIが私たちの情報処理能力を今すでに変え始めていることに注目!
しかし、私がより一層注目しているのは、AGI実現までのタイムラインを正確に予測することよりも、「AIが私たちの情報処理能力を今すでに変え始めている」という現在進行形の事実の方です。
今、この瞬間にも、自分の専門知識とAIを組み合わせることで、かつてはチームが必要だった仕事を1人でこなせるようになっている人がいます。
個人投資家がこの環境で優位に立つためには、AIを恐れるのではなく、自分のドメイン知識と組み合わせて使いこなすことです。
AIは「作る力の民主化」をもたらしました。AI時代の主役になるのは、ソフトウェアエンジニアリングのスキルよりも、深いドメイン知識を持つ人になるでしょう。
ただし、注意も必要です。
AIは「情報の整理・生成」は得意ですが、「本質的な判断」は人間がしなければなりません。AIが出した結論を盲目的に信じるのではなく、「なぜそう言えるのか」を問い返す批判的思考力──これこそが、AI時代の投資家に求められる最重要スキルだと私は考えています。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株の分析が毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。























