60/40ポートフォリオの「安全性」には大きな代償が伴う
「株式60%・債券40%」のポートフォリオは、長年に渡って「バランス型」の代名詞として語られてきました。「株が下がれば債券は上がる」という逆相関の性質を利用したこの配分は、理論的には美しいものです。
しかし、数字を見ると、その「安全性」には大きな代償が伴うことがわかります。
過去10年間のデータを比較すると、米国株式インデックスの累積リターンは約206%でした(S&P500連動ETF「SPY」のデータを使用)。一方、60/40ポートフォリオのリターンは同期間で約66%にとどまりました。
シャープレシオ(リスク1単位あたりのリターン)で見ても、SPYが0.79であるのに対し、60/40ポートフォリオは0.47と低いものになっています。絶対的なリターンの数字だけでなく、リスク調整後で見たリターンでもSPY優位の結果になっているということです。
[参考記事]
●投資初心者にオススメ! 低コストで簡単に実践できる「60・40ポートフォリオ」の今後10年がこれまでよりも魅力的なものになる理由とは?
インフレ時代に露わになった60/40ポートフォリオの脆弱性
60/40モデルが最も有効に機能したのは、1980年代から2020年代初頭まで続いた「低金利・低インフレ」の時代でした。この時代は株と債券が逆行することが多く、逆相関の関係がおおむね成立していました。
しかし、2022年以降、状況が変わったのです。
インフレ対応のためにFRB(米連邦準備制度理事会)が急速に利上げを行うと、株と債券がともに下落するという「逆相関の崩壊」が起きたのでした。60/40ポートフォリオの投資家は株でも債券でも損失を被るという、最悪のシナリオを経験しました。
「安全」だと思っていた配分が、インフレという環境変化に脆弱だったのです。
2022年頃のS&P500連動ETF「SPY」(ローソク足、右軸)日足と米国債先物日足(ラインチャート、左軸) 両者は逆に動くのではなく、同じように動いている 出所:TradingView
最適なポートフォリオは、それぞれの投資家によって異なっている
だからポートフォリオを「全部株式にすべきだ」と単純に結論づけるつもりはありません。さまざまな投資家には、それぞれ異なる年齢・収入・支出の時間軸があり、異なる心理的なリスク許容度があります。
もう退職しており、退職後に毎年一定額を取り崩す必要がある人と、これから30年間積み立てを続けていこうとしている人では、最適なポートフォリオは異なります。
大切なのは「なんとなく安心だから」という理由でポートフォリオを選ぶのではなく、「自分はどのようなリスクを取り、どのようなリターンを求めるのか」を数字で考えることです。
債券や現金を持つ理由が「心理的安定のため」であれば、それは正当な理由です。ただし、その「安心料」として、長期的に見て大きなリターンを諦めているという事実は認識する必要があります。
60/40ポートフォリオは万能ではありません。インフレ環境下での実績、シャープレシオの比較、自分のライフステージ――これら3つの視点でポートフォリオを評価しましょう。
長期投資では株式中心のポートフォリオが有利だが、その戦略をとるためには必要なことがある
私自身は、長期投資においては株式中心のポートフォリオが有利だと考えています。
[参考記事]
●「オールウェザー・ポートフォリオ」など従来からある4つのポートフォリオ戦略を検討する。しかし結局、お奨めなのは株式オンリーのポートフォリオだ
ただし、「株式一本」にするためには、下落局面でも売らずにいられるだけの理解と心理的準備が必要です。
データを知ることは、その準備の第一歩になります。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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