フィデリティの新入社員が最初に学ぶ「会社探偵ゲーム」とは?
私がかつて資産運用の業務に携わっていたフィデリティ・グループでは、新入社員のアナリスト研修に「会社探偵ゲーム(Company Detective Game)」と呼ばれるプログラムが組み込まれていました。
会社探偵ゲームでは、新入社員に会社の財務諸表だけが手渡されます。そして、会社名を伏せた状態で「これはどんな会社か?」と推理させるのです。
このゲームの目的は単純な財務分析ではありません。数字の羅列から、その企業のビジネスモデル・競争優位性・成長の源泉を「読み解く力」を養うことを目的としているのです。
売上成長率の内訳は? 利益率の変化は何を意味するか? キャッシュフローは本物か?──こういった問いに答えていくことで、財務諸表は単なる「数字の表」から「企業のストーリー」へと変わります。
[参考記事]
●10年以上の財務諸表を読み、その会社はどこか当てるゲーム。コロナ禍で大儲けも過剰設備投資していないK社とは?
テスラの財務諸表から読み取れる企業のストーリーの大きな変化
企業のストーリーの変化を説明する際、私がよく使う例の1つがテスラです。
テスラの株価は長年、従来の自動車メーカーの評価基準ではまったく説明のつかない水準にありました。PER(株価収益率)が数百倍という時期もあったのです。
しかし、「テスラはEV会社ではなく、テクノロジー会社だ」「ソフトウェアで継続的に収益を上げるプラットフォームだ」という「ストーリー」が市場に受け入れられていた間は、その株価が正当化されていました。
問題はストーリーが変わる時です。
競合EVメーカーの台頭、中国市場でのシェア低下、イーロン・マスクの政治的活動に対する反発──これらが積み重なると、「テスラはテクノロジー会社だ」というストーリーは揺らぎ始めました。
こういったストーリーの変化を数字の中から早期に察知すること。それこそが財務諸表を読む本当の力なのです。
[参考記事]
●テスラの株価はどんなときに動くのか? 長期チャート&ファンダメンタルズ分析で株価の動きを分析する方法を公開!
テスラ(TSLA) 月足 出所:TradingView
一般的な日本の個人投資家が、アメリカの個人投資家との情報格差を埋める方法とは?
一般的な日本の個人投資家とアメリカの個人投資家の間には、アクセスできる情報の「質と量」に大きな格差があります。
アメリカでは企業の決算説明会(アーニングスコール)の録音・トランスクリプト(文字起こし)が無料で公開され、CFO(最高財務責任者)が直接アナリストの厳しい質問に答えます。ESG報告書から特許出願数まで、英語で検索すれば膨大な情報が手に入ります。
一方、日本企業は米国企業ほど情報開示が充実していません。
[参考記事]
●スターバックス株が株主資本がマイナスでも買われる理由とは? 米国株と日本株はどこが違う?
一般的な日本の個人投資家は、日本語だけで情報収集することが多いと思いますが、これは特に米国株への投資において大きなハンデになり得ます。
しかし、逆に考えれば、英語情報にアクセスする努力をすれば、日本の個人投資家でも「情報の非対称性」を武器にできる可能性があるのです。財務諸表を読む力はその入口です。
財務諸表は暗号ではなく、企業が語るストーリーの原文です。数字の変化を追うことで、ストーリーの変節点をいち早く捉えることができます。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株の分析が毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。























