2025年5月20日(火)、米国・シアトルからザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。

今回の放送では、50歳を迎えたポールさんが長期投資の有効性を改めて語り、DeepSeekや関税、格付け会社ムーディーズによる米国債の格下げがあっても、米国株を買わない理由にはならないと教えてくれたので、さっそくチェックしていこう。
人生100年と考えたとき、残りの時間が短いことに惑わされて短期投資してしまうと、負ける確率が高くなる
番組は、ポールさんが最近50歳の誕生日を迎え、人生や投資の時間軸に関する話を当コラム「成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)」に書いていたことを、アシスタントの新宮志保さんが紹介するところから始まった。
【※関連記事はこちら!】
⇒1万ドルが5億ドルに! 1965年にバークシャー株を買い、持ち続けたパフォーマンスから実感する長期投資のスゴさ。50歳過ぎてもお奨めは長期的な視点の投資
「50歳になり、人生100歳までと考えると後半に入るため、いったん止まっていろいろ考える時期にもなります」とポールさん。
20歳のころは時間の流れが遅かったけれど、年を取ると1年1年早く感じることから、2つ言えるのは、1つは残りの時間が制限されているため、毎日有意義に楽しく生きなければいけないこと。もう1つは、残りの時間が少ないからと焦って無理をしてはいけないことだそう。
投資においても、短期投資は個人投資家に向いていないのに、残りの時間が短いことに惑わされて短期投資してしまうと、負ける確率が高くなってしまうため、無理をしてはいけないようだ。
すると、番組MCの渡部一実さんが、アメリカ株の長期投資をポールさんがずっとおすすめしてきたことに触れ、「50歳を超えたからといって、突然デイトレーダーになるというわけではないんですよね?」と改めて確認した。
これに対してポールさんは「50歳の次の日に大きく変化したわけでもないし、自分のやり方を変えないのは1つの結論かもしれない」と答えた。
トランプ関税で、中国は絶対的に弱い立場に見られがちだが、実はそうではない
次は、トランプ(大統領、以下略)関税の話題に。
特に中国について、トランプは関税を百何十%かけると言ったのに、急に100%ほどに引き下げたところを見ると、トランプがやっていることは結局ディール(取引)という見方で合っているのか、渡部さんがポールさんに質問した。
トランプは、最初に強気で大胆なディールを出し、相手を注目させた後、自分にとって有利なところに持っていくやり方をしたとポールさん。
このやり方は、トランプが出版した『Trump: The Art of the Deal』という本や、『The Apprentice』というテレビ番組で紹介されていて、今回もこれに沿って関税が展開されたようだ。
【※関連記事はこちら!】
⇒対中国の高関税を大幅引下げ! それはトランプの著書やTV番組に示されていた交渉戦略の通りだった。バフェットの格言「アメリカに逆らうな」はやはり正しい
続けて渡部さんは、中国経済に詳しいポールさんに、米中関税交渉を見て気づいたことがあったかたずねると、中国が絶対的に弱い立場に見られがちだけれど、実はそうではないということを話し始めた。
中国製のものが身の回りにある印象から、中国経済は輸出で成り立っていると思っている人が多いけれど、数字で見ると、中国経済における輸出の割合は14%くらいで、これは大きいわけでもないが、小さいわけでもないとのこと。
一方、アメリカ経済における輸出の割合は11%くらいで、中国と同程度なのだそう。
中国は今、不動産バブルがはじけて不景気になっているから、アメリカより少し立場的に弱かっただけで、中国とアメリカの輸出の割合で考えると、中国はある程度強気に交渉することができて、中国にとってそんなに悪くないディールに落ち着いたようだ。
米国市場は長期では効率的で、短期では効率的でないからこそ儲けられる
続いては、米国株の話題に。
昨年の終わりに、中国のDeepSeekの登場で米国のAI株が売られ、今年の4月はトランプ関税で米国株が売られたけれど、今は関税発表前よりも高い水準にいることを考えると、「アメリカに逆らうな」というバフェットの教訓が合っているのか、渡部さんがポールさんに質問した。

1つ、頭の中に入れておかなければならないこととして、ポールさんが挙げたのが「私たちはアメリカのシステムの下に入っている」ことだった。
米国株が下がると、他の国の株はもっと下がる傾向があるため、逃げるために他の国の株を買ったり、米国株を買わなかったりする理由にならないのだという。
また、米国には絶対的な強みがあり、それは、関税で中国との取引を止める力や、DeepSeekのような継続できないAIではなく、継続性のあるAIがあることだそう。
そして、大事なのは、米国市場は長期では効率的で、短期では効率的でないからこそ儲けられることだとポールさんは力説した。
【※関連記事はこちら!】
⇒なぜ私は日本株より米国株に投資するのか? 世界で最も効率的かつチャンスに満ちているのは間違いなく米国株式市場。投資先は「勝てる場所」を選ぶべきだ
長期も短期も効率的であれば、株価は理論上動かないはずだが、DeepSeekや関税を受けて短期で効率的でない動きをした後、結果的に効率的な動きへ収斂していくからこそ、長期の目線で投資すれば儲けられるということのようだ。
米国格下げはインフレに強い資産を絶対に持った方がいいというメッセージ
格付け会社ムーディーズによる米国債格下げについても、ポールさんに言わせれば「これによってアメリカ株を売るわけにはいかない」とのこと。
世界で一番安全で、他の資産のベンチマークにもなっている米国債が格下げされれば、他の資産も同じくらいの影響を受けるため、相対的に米国債の立場は変わっていないそう。
ただ、格下げによって改めて認識させられるのは、インフレリスクが高まったことだとポールさん。国がお金をたくさん作り、インフレ率が高くなるとデフォルトするため、格下げはインフレに強い資産を絶対に持った方がいいというメッセージとして受け取れるようだ。
これを受けて「インフレに強い資産は土地や株などで合っていますか?」と渡部さんが確認すると、「それは種類による」とポールさんは返した。
まず、個別会社を除くと、格下げで気を付けなければならないのは、格下げ自体よりも金利上昇するかどうか。金利が上昇するとAI関係の成長株は短期で下落しがちだけれど、成長が本当に強ければ向かい風を乗り燃えて上昇することも考えられるようだ。
また、インフレに強い銘柄として不動産やコモディティなどもあるが、不動産の場合、金利上昇で資金調達の問題が出てきたり、個別会社の借入構成を気にしなければならないとのこと。
コモディティについては、コモディティ自体よりも生産性がある商社のほうがよくて、ウォーレン・バフェットもそう考えて日本の商社を買ったことは、以前の放送でもポールさんが紹介していた。
【※関連記事はこちら!】
⇒バフェットの8回目の円債発行は、円高にならない自信を深めている証拠! 資源そのものより資源会社を買おう。バフェットは円を売って日本の商社を買っている
ここまで、5月22日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年半で140%上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。また、動画配信も予定しているので、こちらも注目だ。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。