1年前に自民党総裁選の決選投票で石破氏が当選し、日経平均先物は急落
決選投票の結果は215票対194票、よって石破茂君を新総裁に選出する―。
今から約1年前の9月27日の出来事だった。自民党総裁選の決選投票において石破氏が選ばれた瞬間から「石破禍」が始まった。9月27日は金曜日でザラバ中の取引で日経平均株価はグングン上昇して908円高の3万9829円で高値引けとなった。午後からの総裁選の投開票で安倍政権のアベノミクス継承を掲げる高市早苗氏が得票数でトップとなり、初の女性新総裁が誕生する可能性が高まったからだ。金利低下、円安、株高の「高市トレード」が先物主導の買いで活発化した。1回目の投票で高市氏が1位、石破氏が2位となり決選投票に入るところでマーケットが終了した。
ところが、土壇場の逆転劇による決選投票の結果を受けて金融市場は見る見るうちに激変した。ドル円は146円台から142円台へと一気に円高となり、日経平均先物は夜間取引で3万9840円から2400円安の3万7440円まで垂直落下。5度目の挑戦で悲願の新総裁の座を射止めた石破氏に対する評価だった。石破首相の誕生で「早期利上げ、法人増税、金融所得課税強化」というタカ派的緊縮政策を懸念した「石破トレード」が起こった。株式市場での石破氏の評判は悪く「高市総裁誕生」のシナリオがほぼ形成されていたため失望感は大きかった。遡ること3年前の岸田文雄首相選出後に見られた「岸田ショック」を彷彿とさせられる。
週明け東京市場で日経平均1910円安。総裁選後初日の下落率で堂々トップ
週明けの東京市場における日経平均は4.8%下落の1910円安でスタートした。自民党総裁選後の初日における下落率で堂々のトップ。通常なら、新総裁が決まると「ご祝儀相場」と言って誕生を歓迎するように株式市場は上昇するが「逆・ご祝儀相場」となった。
昨年10月8日のコラム『ちゃぶ台返しの石破政権に翻弄されるマーケット』で、私が指摘したように金融所得課税強化に対する懸念は杞憂だった。なぜなら、2025年からミニマムタックス導入が既に決定(2023年12月に税制改正成立)しており「1億円の壁」問題は解決済みだったからだ。高額所得者には22.5%の最低税率が適用(ミニマムタックス)を適用。株式関連税率は15%(国税)のため差し引き分が増税だ。総裁選挙中に石破氏が金融所得課税強化の話を持ち出したのは岸田派からの票の取り込みを狙ったものであり、戦略はまんまと成功して決選投票で勝利した。このようなカラクリが存在していたのである。「メディア報道やマーケット関係者による“金融課税強化懸念で株式市場は急落”との解説は的外れである」「石破内閣では金融所得課税強化は行われないと考えるべきである」と述べた通りだ。
ちゃぶ台返しを連発し、衆参ダブルでの大惨敗。続投こだわるも辞任表明
だが、ちゃぶ台返しは連発した。まずは早期解散。公開討論会では明確に否定していた解散を撤回して9月30日に「10月9日解散、27日投開票」の方針を示した。10月1日の首相就任前に衆院選の実施を明言した言動が「憲法に違反する疑いがある」との批判が出た。そして、金融正常化の推進。石破首相は金融緩和を重視するアベノミクスに対して批判的であり距離を置いていた。ところが、日銀の植田和男総裁との会談後のインタビューで「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と答えて態度を変えた。さらに所信表明演説では従来の持論はほぼ封印される形となり、北大西洋条約機構(NATO)のアジア版構想や日米地位協定の改定などについての言及はなかった。衆議院選挙で勝利することを重視する短期志向の考えが透けて見えた。
その選挙。石破内閣を自ら「納得と共感」内閣と位置付けていたにもかかわらず、裏金議員を原則公認、比例重複も容認したことで国民からは「不信と反感」内閣との評価で過半数割れ。小泉進次郎氏だけが選挙の責任を取って選対委員長を辞任する形で幕引きとなった。そして、先頃行われた参院選でも過半数割れ。衆参ともに過半数割れとなるのは自民党が始まって初めてのことだ。だが責任回避を続けた。2007年の参院選で自民党が惨敗した際、当時の安倍晋三首相に「どうして選挙結果の責任を取らないのか」と猛烈にまくし立てていた石破氏。自身の惨敗ぶりについては棚上げして続投意思を示し続けた。しかし、9月7日(日)の午後6時の記者会見で辞任を表明。辞任せざるを得ない立場に追い込まれた。
辞任表明後、日経平均は最高値を連発。石破禍の呪縛から解き放たれる?
これを受けて翌日の月曜日の日経平均は625円高となり、9月10日水曜日には4万3837円と最高値を更新。さらに木曜日は534円高、金曜日も14時現在で420円高と連日ガンガン上昇する展開になっている。ちょうど1年間の石破政権が終わることへの評価だ。コロナ禍ならぬ「石破禍」。ようやく重苦しい呪縛から解き放たれようとしている。
「選挙で負けたのを石破首相の責任にするのは間違っている」との論調があるが、マーケット関係者としての私はそう思わない。もちろん自民党は国民生活を積極的に良くしようとの理念が著しく欠けている政党だと思うが、衆参ダブルでの大惨敗は石破首相に対する国民の「No」の突き付けである。要するにリーダーになってはいけない人間がリーダーになってしまうと、このようなことが起こるという教訓である。それほどリーダー、リーダーシップは重要なのだ。トランプ関税交渉で本来ならば自ら全面的に出ていくはずの立場にあるのに、完全に人任せにしてしまう姿勢など私には信じがたい行動である。
9月の米FOMCで利下げ再開が確実視。本格的金融相場入りを期待
さて、自民党総裁選が10月4日(土)にフルスペックにておこなわれることとなった。次々と候補者が名乗り出ている。誰が次の総裁、首相になるのかは現時点で予想できないが、石破氏より劣るリーダーにはならない確信をマーケットは持っている。それが連日での最高値更新だ。新たなリーダーシップに期待したい。
昨今の米国の労働環境を取り巻く弱い指標で9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げ再開が確実となった。今年初の利下げとなる。本格的金融相場入りで私はワクワクしている。金融相場こそ運用資産が最も大きく増える時だ。これまで積み上げてきた努力が報われる。あなたはどうだろうか?
マーケット分析力と銘柄選択力で「勝者のポートフォリオ」は大きく躍動
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」はおかげさまで快進撃を続けている。2021年10月のサービス開始以来、9月11日時点で累計パフォーマンスは+118.6%、昨年来+71.1%、年初来+29.6%とすべての期間においてマーケット指標を圧倒。マーケット分析力と個別銘柄選択力で「市場に打ち克つ」を実践している成果が大きく出ているものと自負している。

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