「勝者のゲーム」と資産運用入門

自社株買いなどで上場企業の現預金が6年ぶりに減少。
賃上げ、研究開発や設備投資などの使途拡大を望む太田忠の勝者のポートフォリオ 第205回

2025年9月9日公開(2025年9月12日更新)
太田 忠
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トランプ関税ショック時に買い出動した投資家は大きな果実を勝ち取った

 8月18日に日経平均株価は4万3714円、TOPIXは3120ポイントと過去最高値を更新し、トランプ関税ショックによる急落がウソのような展開となっている。4月7日に日経平均は3万1136円、TOPIXは2288ポイントと年初来安値を付けたが、そこからそれぞれ40%高、36%高の急騰劇を演じた。「チャンスはピンチの顔をしてやって来る」というのが私の口癖であるが、金融相場の最中にこれほど大きなシステマティックリスクはまさに「ピンチはチャンス」。個人投資家向けの投資助言において私は積極的に買い出動を発信していたが、この局面を絶好の買い場と認識して立ち向かった個人投資家たちは大きな果実を勝ち取ったことになる。

 実は4月は投資主体別売買動向においても大きな起点となった。海外投資家による日本株買いが凄まじい勢いで始まる一方、個人投資家は大幅売り越しという対照的な状況が起きている。そして、もうひとつの大きな買い手が事業法人である。「えっ、太田先生、どうして企業が株を買っているんですか? もう財テクなどやっていないはずなのに」。もちろん財テクではない。財テクというは他社の株を買うことだが、自分の会社の株をせっせと買っている。すなわち、自社株買いである。

割安感、経営改革、自社株買いを評価して海外投資家は日本株を爆買い

 「上場企業が保有する現預金が6年ぶりに減少」との報道がなされている。積み上がった使い道のない巨大な「現金の山」。「こんなにお金を持っていてどうするのか?」「使わなければ経営効率が悪化する」と海外投資家から揶揄されてきた日本的経営の象徴の風向きは変わったのだ。日本株の割安感、ガバナンス・経営改革、自社株買い。これらが三位一体となって海外投資家から評価され猛烈な日本株買いが起きている。

 3月期決算の東証プライム上場企業における2025年3月末の現預金は115.7兆円で1年前と比較して1.4兆円減少した。2008年に起こったリーマン・ブラザーズ破綻という世界金融危機以降は企業の防衛意識の高まりからほぼ右肩上がりで増え続けてきたが、ピークアウトの兆しが出てきている。この現預金減少をもたらした大きな要因が自社株買いだ。2024年度の自社株買いは18兆円と前年度の2倍弱に膨らんだ。2023年に東京証券取引所が株価や資本コストを意識した経営を求めて「PBR1倍割れは上場企業失格」とのメッセージを出したのがきっかけだ。

2024年度の自社株買いは東証時価総額2%に相当し、S&P500と同水準に

 2025年度に入っても自社株買いの勢いは加速している。トランプ関税政策に翻弄され、業績予想を見通すことが難しかった4月。三菱商事(8058)が1兆円、日立製作所(6501)が3000億円と過去最大の自社株買いを発表。株価の急落に歩調をあわせた機動的な自社株買いが次々と発表された。今年度の自社株買いは20兆円に膨らみ、配当総額予想の25兆円に迫る水準になると見られている。45兆円もの株主還元は海外投資家から見ても魅力的に映る。現在の経済環境が不透明な中、現金を貯め込まずに自社株買いを意思表示するのはバランスシートへの自信を深めている、と前向きに捉えることができる。

 2024年度の日本企業の自社株買い18兆円は東証時価総額全体の2%に相当し、S&P500の構成企業の2%に並んだ。機動的な財務戦略の先進国である米国に追いついた。2025年度は米国を上回る可能性がある。グローバル投資戦略で日本株への投資戦略を「強気」に引き上げる証券会社や運用会社が増えているのも納得だ。日本株の保有比率が低いグローバル投資家はまだまだ多く、FOMO(Fear of Missing Out:取り残される恐怖、買い遅れるな!)の状態が続いているのも頷ける。

日本企業の内部留保は636兆円と過去最高記録も、労働分配率は低水準

 これまで述べてきたのは、あくまでも上場企業の姿。日本全体で見ればまだまだ不十分である。7月22日のコラム『内部留保最高、労働分配率低下、賃上げでも個人消費は向かい風』で解説したように日本企業の内部留保は過去最高を記録。2024年度は636兆円となり前年度の601兆円から6%増えた。今から25年前の2000年前後は200兆円程度だったため3倍以上に急増。企業の貯蓄が凄まじい勢いで増えている。一方、企業の稼ぎから人件費に回す割合を示す労働分配率は2024年度は53.9%で1973年度以来51年ぶりの低水準だった。デフレから脱してインフレ局面に入った日本経済。労働者に報いる方策として企業は賃上げに舵を切ったが、稼ぐスピードに見合ったほど十分に還元していない。その結果、内部留保がまだ増え続ける構図だ。

 規模が大きい企業ほど労働分配率は低下しており、資本金10億円以上の大企業では36.8%と前年度から1.3ポイント下落、資本金1億~10億円未満の中堅企業は59.9%で前年度から0.7ポイント低下した。一方、1000万~1億円未満の中小企業は70.2%で前年度から0.1ポイント上昇。中小企業では人手不足を背景に利益が増えるスピードを上回って人件費が上昇していることがうかがえる。2025年の春季労使交渉における賃上げ率は5.25%。前年の2024年も5%を超える1991年以来の賃上げ率であったが、社会全体での労働分配率を引き上げるほどのインパクトはなかった。2025年の春季労使交渉はもっと高い賃上げができたはずである。

お金を貯め込んでも何も生まない。個人消費や先行投資の拡大施策が必要

 上場企業においても日本全体においても、真剣に取り組んで欲しいのが日本のGDP(国内総生産)の約6割を占める個人消費を活性化させる施策である。日本の経済力を表すGDPを成長させるためには、個人消費が伸びなければ話にならない。だが、個人消費が増える企業努力や政策が全く行われず、逆行することばかり行われてきた。米国のGDPは7割が個人消費だが、個人消費が年々増えることで経済成長しているのとは対照的である。米国民の消費を刺激する賃金増や減税も機動的に行われている。

 そして大事なのが設備投資や研究開発だ。お金を貯め込んでも何も生み出さない。更なる収益を伸ばすためには先行投資が欠かせない。先行投資あってこそ将来大きな果実となる。貯め込まれたお金は「死蔵金」であり、経済不活性の元凶だと私は考える。

推奨ポートフォリオの設定来推移は+115%。日経平均の2倍の成績を達成

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行う「勝者のポートフォリオ」。おかげさまで快進撃が続いている。2021年10月のサービス開始以来、8月末時点で累計パフォーマンスは+115.2%、昨年来+68.3%、年初来+27.5%とすべての期間においてマーケット指標を圧倒。マーケット分析力と個別銘柄選択力で「市場に打ち克つ」を実践している成果が大きく出ているものと自負している。

「勝者のポートフォリオ」の設定来パフォーマンスの推移と主要指数との比較

 Webセミナーは9月10日開催。本格的な金融相場の波に乗ろう!

 「勝者のポートフォリオ」は日本株を中心とした個人投資家向けの投資助言サービスであり、毎週のマーケット解説・投資戦略のメルマガ配信に加えて、毎月恒例のWebセミナーと投資のスキルアップを目的とするスペシャル講義を提供している。

 Webセミナーでは米連邦準備理事会(FRB)や日銀の金融政策、日米の景気動向、あるいは最近ではトランプ関税政策といったホットな話題を取り上げながら現状の投資戦略や今後株価上昇が期待できる個別銘柄、さらには参加者からのすべての質問に答えるQ&Aコーナーを設けて毎回2時間半ものロングランセミナーを行っている。毎回300名を超える参加者で盛り上がり、投資のヒントが満載である。

 次回は9月10日(水)20時より開催予定である。テーマは『FRBの利下げ再開で本格的な金融相場到来へ』である。株式市場は上昇しているのに資産運用がうまくいっていない個人投資家が多いとの印象を受ける。「どのように運用すれば資産形成できるのか」を知りたい人はぜひご参加いただきたい、10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能。有料会員はアーカイブ動画でいつでも視聴できる。

 スペシャル講義は投資スキルを身につける場として62本もの講義動画をリリースしている。個人投資家にとって必須のリスク管理、運用力を上げるためのマーケットサイクル投資法、恐怖指数の活用、システマティックリスクの対処法、ヘッジファンドの実態…など詳しく解説している。ぜひとも参考にしていただきたい。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。

 

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