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不動産はいつ投機資産になり、いつ安全資産になるのか? 金(ゴールド)を超える「生産性のある希少資産」──不動産・農地・森林の特徴とは?

2025年10月22日公開
ポール・サイ
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金(ゴールド)は最も基本的な形のマネーである

 世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツを率いたレイ・ダリオ氏は、「金(ゴールド)は最も基本的な形のマネーである」と繰り返し語っています。

 確かに金は信用リスクがなく、政府による通貨発行の影響も受けない「最終決済手段」として長い歴史を持っています。

 しかし、私は金と同じ「希少性」と「実物価値」を備えながら、生産性を併せ持つ資産──すなわち不動産・農地・森林──の方が優れていると考えています。

不動産は「生産性を持つ金(ゴールド)」

 金の最大の魅力は希少性と信用の独立性にありますが、現実には保管や保険にコストがかかるため、金は「持つだけで資産価値が減る」ものと言えます。

 では、不動産はどうでしょうか。まず、不動産の供給量について他のものと比較しながら考えてみましょう。

 国家が発行する紙幣は、印刷するだけでいくらでも量が増えていく可能性があります。実際、紙幣を大量に発行した結果、ハイパーインフレに陥り、紙幣が著しく価値を失ってしまった国家は過去にも現在にも存在しています。

 一方、金の供給量は採掘すれば増えますが、採掘には限度があり、全体的な金の量は有限です。そして、このことが金に希少性をもたらしています。

 不動産は、建物を建設すれば供給量は増えるものの、それには限度があり、急速に無限に増えていく可能性はありません。この点で不動産は金と似たような希少性を持っていると言えます。

 このように不動産は、供給量が制限される特徴が金と似ている一方、所有して、それを貸しているだけで賃料や収益を生むという特徴もあり、この点については金と特徴が異なっています。

 つまり、不動産は「生産性を持つ金」なのです。

不動産がリスク資産と見なされやすいのは、ほとんどの投資家がレバレッジをかけて購入しているため

 不動産がリスク資産と見なされやすいのは、ほとんどの投資家が借入を前提にして、つまり、レバレッジをかけて購入するためです。

 レバレッジをかけて不動産を購入した場合、空室や金利上昇で資金繰りが悪化して借入金が返せなくなり、銀行に物件を取られてしまうリスクがあります。

 けれど、ある程度、借入の割合を抑えて不動産を保有すれば、不動産は本質的には金と同じように「価値保存の器」になります。

 むしろ土地や建物は、日常生活や経済活動に不可欠な実需がある分、金よりも強いファンダメンタルズを持っているとも言えます。

不動産はいつ投機資産になり、いつ安全資産になるのか?

 多くの不動産投資家が当然のようにレバレッジを用いるのは、好況期に銀行が積極的に融資するためです。

 しかし、不動産投資家が銀行の言うがままにレバレッジを拡大させることは、次の重要な事柄を意識しないまま行動していることになります。すなわち、景気は循環するものであり、好況と不況は順番に入れ替わってやってくるということです。

 そして、こうしてレバレッジを拡大させて不動産を購入することが、不動産から資産としての安全性を奪ってしまうのです。

 本当の「安全資産」としての不動産の価値は、むしろ誰も融資しないような危機のあとにこそあります。

 たとえば、リーマンショック後、2010~2011年の米国不動産市場はその典型でした。

[不動産投資に関する参考記事]
「一戸建て vs 集合住宅」「大都市 vs 地方都市」…複数の軸でアメリカと日本の不動産投資を比較! グロース株に近いのは? 高配当株に近いのは?

農地・森林は生産性は低いもののインフレに強い実物資産

 農地や森林も金と同じく有限のものであり、インフレに強い実物資産です。

 しかも、農地や森林は、食料や木材など人類が絶対に必要とするものを生み出す生産性を持っています。

 ただし、実際の農業経営は極めて厳しいものがあります。

 私が調べたアメリカの肉牛生産では、1頭あたり数百ドルしか利益が出ないことが多いようでした。なぜなら、米国の牛肉産業はタイソン・フーズ、JBS USA、カーギル・ビーフ、ナショナルビーフの主要4社が支配しており、これら4社が屠畜用肥育牛のおよそ85%を購入しているからです。

 つまり、生産者(牧場主)はこの“ビッグ4”に対して価格交渉力をほとんど持っておらず、事実上の「価格受け入れ者」となっているのです。

 さらに、「肉/牛肉/家禽類の加工業」を扱う事業体は2024年時点でアメリカ国内に約6100社も存在している一方、実質的にはその中のごく少数の大手企業が業界を支配しているという構造があります。

 つまり、上流の生産者は価格決定力を持たず、利益を多く確保できない形になっているということです。加工業者がブランド化・流通支配を通じて、利益の大半を吸収してしまうのです。

 この構造は、アメリカでは農家がどれほど生産性を向上させても、そこには限界があり、土地保有こそが真の富の源泉であることを示しています。農家の富は農業生産で増えるのではなく、農地の価値上昇で積み上がっていくのです。

不動産直接保有の代替として、ネットリース系REITという選択肢がある

 個人がレバレッジなしで不動産を直接保有するのは難しいですが、ネットリース系REITはその良い代替となるでしょう。

 ネットリース系REITは、トリプルネット・リースという契約をテナント側と締結して、保有物件を貸しているREITです。

 トリプルネット・リースでは、テナント側が固定資産税・保険・維持費を負担します。そのため、ネットリース系REITは運用側のリスクが低く、「債券に近い不動産」として安定した分配金を得られます。

 米国市場に上場しているネットリース系REITには、National Retail Properties(ティッカー:NNN)、W.P. Carey, Inc.(ティッカー:WPC)などがあります。

National Retail Properties(NNN) 週足National Retail Properties(NNN) 週足 出所:TradingView
W.P. Carey, Inc.(WPC) 週足W.P. Carey, Inc.(WPC) 週足 出所:TradingView

 このようなネットリース系REITを持っていれば、金のように「持っているだけでコストがかかる」資産とは対照的に、持っているだけでキャッシュフローを生んでくれるのです。

心理的要因は無視できない。金が特別な存在であり続ける理由とは?

 ただし、心理的要因を無視することはできません。

 金には、人類の歴史を通じて積み重ねられた「安全資産としての記憶」があり、危機が起こるたびにその信頼性は再確認されてきました。

 土地や森林、不動産、REITがいくら経済合理性があるように見えても、投資家の潜在意識に刻まれた「最後に頼れるもの=金」というイメージは強いままと言えるでしょう。

 金はキャッシュフローを生みませんが、危機時に最も早く、最も心理的に買われる資産です。

 これは投資の世界で「流動性の心理的プレミアム」と呼べる現象であり、この“心理的即時性”こそが、金を他の実物資産と区別する本質的な特徴です。

結論:希少性 × 生産性 × 価格支配力 × 心理的流動性

 ここまで述べてきた金、農地・森林、不動産、ネットリース系REITの特徴を下表にまとめました。

 希少性だけではなく、生産性、価格支配力、心理的流動性を兼ね備えた資産こそが、長期的に富を守る「真の価値貯蔵機能」を持った資産と言えます。

 金は「究極の資産」であり、心理的な防衛本能の象徴です。

 その一方で、不動産・農地・森林は「収益を生む資産」であり、経済合理性の観点からはより優れた“実物資産”と言えるでしょう。

 そして、これからのポートフォリオ設計では、心理と実利のバランスこそが最大のテーマになるでしょう。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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