成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

為替リスクは“幻想”だ。米国株に投資したいけれど、為替リスクが怖いと考えることはない。為替が円高になりにくい3つの構造的要因とは?

2025年9月17日公開
ポール・サイ
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

「米国株に投資したいけれど、為替リスクが怖い」という日本人投資家の典型的な米国株に関する悩み

 「米国株に投資したいけれど、為替リスクが怖い」

 これは多くの日本人投資家が米国株投資にためらう典型的な悩みのようです。

 私は今、日本に来ているのですが、日本人投資家に米国株投資について聞いてみると、「為替リスクが怖い」という声をよく聞きました。

 今回、たまたまそのような声が多かっただけでなく、以前からそのような話は聞くことがありましたし、いろいろ調べてみても、どうも為替リスクが日本人投資家が米国株へ投資する大きなハードルになっている面があるようです。

 米国株自体は上昇しても、為替が円高に振れた瞬間にせっかくの利益が吹き飛んでしまうのでは……と尻込みする気持ちは理解できます。しかし、本当に為替リスクは、米国株の長期投資家にとって致命的な問題なのでしょうか?

 結論から言えば、答えはノーです。

 実は、構造的にも政策的にも「円高になりにくい要素」が円相場には組み込まれているからです。

ビッグマック指数を見ると円はかなりの割安。その背景には構造的要因がある

 為替は短期的にはさまざまな要因で大きく動くことがありますが、長期的には「購買力平価(PPP)」に収束していく傾向があると一般的には言われています。

 英エコノミスト誌が発表している「ビッグマック指数」は、世界各国でマクドナルドが販売しているビッグマックの価格を元にした簡易的な購買力平価の一種です。

 このビッグマック指数で、米ドル/円の為替相場をチェックしてみましょう。

 2025年7月時点のものになりますが、ビッグマックは日本では480円、アメリカでは6.01米ドルでした。ここから計算されるビッグマック指数(=理論的な為替レート)は1ドル=79.87円になります。

 ですが、実際の米ドル/円の為替レートは今夏以降、おおよそ147円台を中心に推移しています。仮にリアルな為替レートを147.5円とすると、これは理論的な為替レートに対して、約46%も円安になっていることになりますね。

 つまり、今の円安は行き過ぎていることとなり、購買力平価の一般的な考え方を当てはめれば、長期的には円高方向へ向かう可能性があることになります。

 けれど、本当にそうでしょうか?

 ビッグマック指数から乖離してこれだけ円安が進み、それがなかなか解消していないという現実は、それ相応の円安になる構造的要因が背景にあることを示しているとも解釈できます。

 その構造的要因を考えると、私はここから持続的に円高となるシナリオはむしろ想定しにくいと考えているのです。

米ドル/円 月足 米ドル/円 月足 出所:TradingView

なぜ、円高になりにくいのか? その3つの構造的な要因とは?

 円高が起きにくい背景には、以下の3つの構造的な要因があると思います。

(1)日本の低金利政策

 日銀は世界でも突出して緩和的な金融政策を続けています。FRB(米連邦準備制度理事会)がこれから利下げに転じても、日本の政策金利が0%台のままなら、円高圧力はあったとしても限定的なものになるでしょう。

(2)資本フロー(恒常的な米ドル買い圧力)

 日本の年金基金や保険会社などは、運用効率を求めて海外資産に投資し続けています。その結果、円売り・米ドル買いフローが常に存在し、構造的に円高を抑え込む力が働いています。

(3)日本政府が円高を望んでいない

 日本政府はGDPの2倍を超える巨額の政府債務を抱えています。

 歴史的に見ても、国家の借金はインフレによって実質的に軽減されることがよくありました。円高はデフレ圧力を強め、政府債務の実質的削減を難しくします。日本政府としては、政府債務を実質的に軽減していく観点から、緩やかな円安にしておき、緩やかなインフレを維持する方が望ましいのです。

株式投資家にとって重要なことは短期的な為替変動より、米国株の成長性とイノベーション

 株式投資家にとって重要なことは、短期的な為替変動に過剰反応するのではなく、米国株式市場そのものの成長性とイノベーションに注目することでしょう。

 アメリカではイノベーションが起こりやすく、米国株は成長性が高いため、長期で見れば、米国株投資で大きなリターンを得ることが期待できます。仮に為替の変動があったとしても、それが問題にならないほど米国株の値動き自体で大きな利益が得られることでしょう。以下のS&P500の月足チャートを見ても、そのことが実感できるのではないでしょうか。

S&P500 月足S&P500 月足 出所:TradingView

 さらに、前述した円高が起きにくい3つの要因は今後もそれほど変わることがなく、これからも構造的に円高が起きにくい環境は維持されたままになると思います。

 FRBはこの9月以降、利下げしていくことが市場のコンセンサスとなっており、そのこと自体は一定の米ドル安・円高圧力になるかもしれませんが、その一方、構造的に円高が起きにくい環境は変わらないため、中期的にもそれほど円高になるとは限らないと私は考えています。

まとめ:為替リスクは米国株投資への障害にはならない

 日本人が米国株へ投資するにあたって為替リスクをどう考えたらいいのか、最後にポイントを今一度まとめておきたいと思います。

●ビッグマック指数によれば、円は約46%割安

●円高を抑える3つの要因:(1)日本の低金利政策 (2)恒常的な米ドル買いフロー (3)日本政府が円高を望んでいない

●為替の上下動は短期的なノイズに過ぎない

●株式の長期投資家なら、為替は気にせず、米国や世界の成長テーマに集中すべき

 結論として、為替リスクは米国株投資への障害にはなりません。為替リスクは“幻想”にすぎないと私は考えます。なぜなら、日本には円高になりにくい構造的要因があり、日本政府自身も円高を望んでいないと考えられるからです。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。


一番売れてる月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』の“決算入門講座”が開講!詳しくはこちら!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
マネックス証券の公式サイトはこちら 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強日本株
第1四半期絶好調株
ふるさと納税

10月号8月21日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[2025年夏の最強日本株]
◎巻頭特集
人気20銘柄の最新判断も!
初速がスゴイ!第1四半期絶好調株
●2025年後半の主役はコレ!快進撃の人気株
●配当&値上がりの両狙い!即買い高配当株
●業績好転で上昇に弾み!急騰狙いの逆襲株

◎第1特集
高利回りも大化けも!
買いの105銘柄を一挙紹介
2025年夏の最強日本株
●買い時は9~10月!日経平均は4万8000円
●強気派VS弱気派の戦い方
●安心して持てる人気株!大型優良株

1位:ソニーグループ 2位:NEC
●配当利回り4%以上がズラリ!高配当株
1位:伊藤ハム米久HD 2位:INPEX
●優待+αが狙える!株主優待株
1位:サイバーエージェント 2位:ラウンドワン
●お手ごろ価格で買え分散も!10万円未満株
1位:ソフトバンク 2位:野村不動産HD
●まだ上がっていない割安株!出遅れ株
1位:SRE HD 2位:ウエストHD
●大化け期待の中小型株!新興市場株
1位:Aiロボティクス 2位:タイミー
●リスクをとって資産増を狙え!1年で2倍株
1位:インティメート・マージャー

◎第2特集
サボったら家族がこんなに困る!
投資家のための終活大全

●「口座情報の共有」が第一歩!財産の一覧表を作ろう
●信用取引やFXは特に注意!株の相続の基本を知ろう

●子どものいない夫婦は要注意!30代でも遺言書は必要!?

◎第3特集
☆☆☆の数を見るだけでOK!
NISAで売れてる投資信託をズバ斬り!
投信格付240

●見直し!NISAで買う投資信託の選び方
●NISAで最安投信!インデックス型
●大きな利益を狙う!アクティブ型
●リスクを抑えられる!バランス型

【別冊付録】
ポイント還元終了の駆け込み直前!
ふるさと納税45品

●ポイント還元が終わる前におトクなサイトで寄附を!
●10月以降はどのサイトで寄附する?
●肉/魚介類/果物野菜/お菓子/日用品

◎連載も充実
​●NEWS:「ホームラン級の爆騰も⁉ 大谷翔平スポンサー株本命3選」 
●次の1カ月何が起きる?プロが今の株式相場のポイントを解説!
「米国の値下げ狙いで再び4万円台が定着か」
●ZAi編集部の新人・ザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人
「車は買う? 借りる?」
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年7月編
「初値4倍超の銘柄も! ただし過熱感に注意」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略
「セル・ザ・ファクトには要注意!」
●連載・おカネの本音 レンタルなんもしない人さん
「令和の新しい生存戦略。“なんもしない”で家族と生活していく!」
●マンガ恋する株式相場「100g175万円! 恋のゴールドラッシュ」
●マンガ「デメリットの回避策も! 事実婚のお金事情」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報