アメリカのテック企業では、ソフトウェアエンジニアの給与水準が日本と比較にならないほど高い
アメリカのテック企業では、ソフトウェアエンジニア(SWE)が企業価値そのものを生み出す存在として扱われ、その給与は日本とは比較にならないほど高くなっています。
【アメリカのエンジニアの年収に関する参考記事】
●エヌビディアを底値で買ったポール・サイ氏が初の著書を出版! マグニフィセントセブンはなぜアメリカにしか存在しない? 現在のAIブームはバブルか否か?
●アメリカのエンジニアの平均年収は約1500万円で日本の約3倍! 海外へ行った方がお金が稼げるのに、なぜ日本人はあまり海外へ出て行かないのか?
その象徴的存在がグーグル(※)とメタ(ティッカー:META)でしょう。
(※グーグルの上場持ち株会社はアルファベット。ティッカー:GOOGLおよびGOOG)
本記事で紹介する給与データは「Levels.fyi」というサイトのものを参照しています。Levels.fyiは実際の社員からの投稿に基づいた給与データを掲載しており、求職者が次の仕事を探すことなどに利用されているサイトです。
Levels.fyiのウェブサイト
グーグルとメタのエンジニアは新卒でも年収約3000万円、上位層なら年収2~3億円!
まず、グーグルのデータを見てみましょう(円換算の年収は1ドル=160円の為替レートで計算。以下同)。
| レベル | 年収(米ドル) | 年収(円) |
| L3(新卒) | 18万ドル | 約2880万円 |
| L4 | 26万ドル | 約4160万円 |
| L5(シニア) | 38万ドル | 約6080万円 |
| L6 | 55万ドル | 約8800万円 |
| L7 | 85万ドル | 約1億3600万円 |
| L8(上級職) | 140万ドル | 約2億2400万円 |
年収は新卒で約3000万円、上位層のエンジニアだと2億円以上です。
では、メタはどうでしょうか?
| レベル | 年収(米ドル) | 年収(円) |
| E3(新卒) | 18万5000ドル | 約2960万円 |
| E4 | 26万ドル | 約4160万円 |
| E5(シニア) | 43万ドル | 約6880万円 |
| E6 | 70万ドル | 約1億1200万円 |
| E7 | 115万ドル | 約1億8400万円 |
| E8(最高位) | 180万ドル | 約2億8800万円 |
やはり新卒の年収は約3000万円。そして、上位層のエンジニアは3億円近い年収になっています。
つまり、両社とも新卒なら年収は約3000万円、上位層のエンジニアだと年収2~3億円程度ということになります。
これは日本の労働市場では想像できない金額でしょう。
エンジニアに高給を与えることができる背景には、1人当たり売上げの高さがある
では、なぜ、グーグルやメタはエンジニアにこれほどの高い給与を支払うことが可能なのでしょうか?
ここで、グーグルとメタの1人当たり売上げを見てみたいと思います。
| 企業 | 年間売上げ | 従業員数 |
1人当たり |
1人当たり 年間売上げ (円) |
| グーグル | 約3070億ドル | 約18万人 | 約170万ドル | 約2.7億円 |
| メタ | 約1340億ドル | 約6.7万人 | 約200万ドル | 約3.2億円 |
両社の1人当たり売上げは2~3億円程度に達しています。つまり、グーグルとメタの社員は1人当たり年間2~3億円の価値を生み出す存在と言えるのです。
だから、こうした企業は1億円、2億円、あるいはそれ以上といった高い年収をエンジニアに支払うことが合理的になるのです。
アメリカのテック企業の高い給与は“世界中のトップ人材”を吸い寄せる磁力になっている
この破格の報酬体系は、アメリカ企業が“世界中の最高人材”を集める強力な磁力となっています。
●インド、中国、東欧、イスラエル
●日本、韓国、台湾
●カナダ、南米、アフリカ
上記のような世界のさまざまな場所にエンジニアはいるわけですが、その中にはとても優秀なエンジニアもいます。こういった人たちは最終的には「グーグルやメタで働く」という目標に向かって動きます。
アメリカに移住し、永住権を取り、高給を得ることは、技術者にとって最大のキャリアアップと言えます。
高い給与水準そのものが、“世界中の優秀な頭脳”を引きつけるというアメリカの国家戦略を遂行する役割を果たしていると言えるでしょう。
その結果、アメリカ企業には世界のトップ1~5%のエンジニアが集中し、生産性はさらに高まり、それによってまた高給を支払える──という強固な成功循環が形成されているのです。
日本の中では高水準の給与をもらっているエンジニアでも、アメリカの代表的企業では新卒や中堅エンジニアにすら届かない金額
では、日本のエンジニアの給与はどうなっているでしょうか? そちらも確認してみましょう。
| 区分 | 年収(円) |
| 日本の平均的エンジニア | 450万~600万円 |
| メガベンチャー上位層 | 800万~1200万円 |
| 日本拠点の外資系企業 | 1200万~1500万円程度 |
上表を見ると、日本の中では高水準の給与をもらっているエンジニアであっても、それはアメリカのグーグルやメタにおいては新卒や中堅エンジニアにすら届かない金額であることがわかります。
これは日米間でのビジネスモデル・文化・生産性の構造差が、そのまま給与の差に表れているとみることができるでしょう。
まとめ:グーグルやメタのエンジニアの高年収の背景には生産性の高さがある。日本企業には企業文化とビジネス構造の根本的変革が必要
ここまでグーグル、メタ、日本のソフトウェアエンジニアの年収を比べてみるとともに、その背景にあることなどについて考察してきました。最後にその要点をまとめておきます。
・グーグルやメタのソフトウェアエンジニアの年収は新卒で約3000万円、上位層は2~3億円。
・その背景にあるのは、社員1人当たり売上げが2~3億円にのぼるという圧倒的な生産性の高さ。
・この高給は、世界中のトップ人材を米国に吸い寄せる磁力となっている。
・今の日本は給与水準をアップさせようという動きが以前より強く見られるものの、それだけではダメで、日本の企業文化とビジネス構造を根本的に変えなければ、日米間の格差は拡大し続けるだろう。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。初の著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』(ダイヤモンド社刊)が絶賛発売中。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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