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割高・割安を考えず、機械的に売買するインデックスファンドの勢力拡大に批判の声。けれど株価と企業価値の乖離が拡大すれば長期投資家にはチャンス!

2026年1月28日公開
ポール・サイ
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インデックスファンドが普及しすぎて、ファンダメンタルズは株価形成において意味を失いつつあるのか?

 近年の株式市場を語るうえで、インデックス(パッシブ)投資の存在感は無視できなくなっています。

 アメリカでは年金や401(k)の自動積立、低コスト商品の普及、ファイナンシャル・アドバイザー側のインセンティブ構造などを背景に、パッシブ投資が市場全体で大きな比重を占めるようになりました。

出所:米国投資信託協会(ICI)のデータから編集部が作成

 その結果、「株価は企業価値ではなく、資金フローで決まっているのではないか」という問題意識が広がっています。

 この文脈で、パッシブ投資の“支配”がもたらすリスクを強く警告している人物の1人がストラテジストのマイケル・グリーンです。

 彼はインデックスファンドの拡大によって市場の価格弾力性が低下し、わずかな資金移動でも株価が大きく振れる不安定な構造になっていると主張しています。そして、インデックスファンドは割高・割安を考慮せず、機械的に売買するため、ファンダメンタルズは株価形成において意味を失いつつある、という見立てです。

「株は一斉に同じ方向へ動いている」という客観的な事実は確認できない

 こうした指摘は、短期的な市場の動きを説明する1つの視点としては理解できます。

 しかし、この議論をそのまま受け入れ、「ファンダメンタルズは恒久的に壊れた」「市場はいずれ機能不全に陥る」と結論づけるには、決定的に欠けているものがあります。それは実証的な裏付けです。

 もし、本当にパッシブ投資が市場を完全に支配し、価格形成がフローだけで決まっているのであれば、株式市場には明確な特徴が現れるはずです。

 具体的には、個別銘柄の動きが互いに強く連動し、企業ごとの差が縮小し、株価が“同時に”“同じ方向へ”動く傾向が顕著になるはずです。

 しかし、現実の市場はそうなっていません。

 決算、業績予想、競争環境、規制、技術変化といった要因によって、各企業の株価の明暗は今もはっきり分かれています。銘柄間の値動きの違いは依然として存在し、「株は一斉に同じ方向へ動いている」という客観的な事実は確認できません。

パッシブ投資にもさまざまなタイプがあり、資金フローも分散している

 また、「パッシブ=一枚岩」という前提自体が現実を単純化しすぎています。

 パッシブ投資の中のETFだけで考えても、S&P500のような広範な株価指数に連動するETFだけでなく、セクター別、スタイル別、ファクター型、スマートベータ、さらにはレバレッジ型やインバース型など、数多くの異なったタイプのETFが存在しています。

 これらのETFは同じ方向に同時に動くわけでなく、資金フローも分散しています。パッシブ投資が拡大しているからといって、市場参加者の行動が単一化しているわけではありません。

パッシブ投資のフロー主導で歪みが拡大したら、そこに収益チャンスを見いだす投資家が出てくるし、企業も行動を変える

 さらに、仮にフロー主導による歪みが拡大したとしても、それがそのまま持続するとは限りません。

 価格乖離が大きくなればなるほど、裁定取引やイベントドリブン、ボラティリティを収益化する戦略が魅力を増し、流動性を供給する投資主体が市場に戻ってきます。

 企業自身も受動的ではありません。株価が割高な局面では増資や株式を使ったM&Aが行われやすく、割安な局面では自社株買いが増えます。市場は一方向に壊れていくのではなく、歪みと適応を繰り返す構造を持っているのです。

米国最大級のアクティブファンドを運用してきたウィル・ダノフの投資哲学は示唆に富む

 こうした環境を考える上で、今なお示唆に富むのが、長期にわたり実績を残してきたアクティブ運用者の思考法です。その代表例が米国最大級のアクティブファンドを数十年にわたって運用してきたウィル・ダノフです。

 彼は短期的な市場ノイズや資金フローではなく、企業の成長軌道と利益の変化に焦点を当てる投資で知られています。

 ダノフの投資哲学の中核は非常に明快です。

「株価は最終的に1株利益(EPS)に従う」

 彼が最も重視するのは、利益予想が上方修正されている企業です。将来の利益曲線が上向いている限り、短期的な株価変動に過度に振り回される必要はないという考え方です。

 また、価格よりも企業の質を重視する姿勢も特徴的です。

「値段は忘れられるが、クオリティは残る」

 一時的に割高に見えても、競争優位と長期的な成長力を備えた企業であれば、その価格は時間とともに正当化されます。逆に安さだけを理由に投資しても、成長力が伴わなければ長期では報われにくい、という示唆です。

 さらに重要なのが投資判断の規律です。

「あなたは保有している株を毎日、改めて買っているのだ」

 過去の取得価格や含み損益に縛られず、「今、この株を新規に買うか」という視点で考え続ける。前提が崩れたら売る。この姿勢は、フロー主導で価格が歪みやすい時代だからこそ、より重要になります。

パッシブ投資の拡大は市場の性質を変えているが、長期視点の投資家にとっては投資チャンスが生まれている

 パッシブ投資の拡大は、市場の性質を変えています。短期の変動は大きくなり、モメンタムは強まり、バリュエーションの修正には時間がかかる局面が増えるでしょう。

 しかしそれは、ファンダメンタルズが無意味になったことを意味しません。むしろ、株価と企業価値の乖離が拡大するからこそ、長期視点の投資家にとっては投資チャンスが生まれるのです。

 投資家に求められるのは、センセーショナルな終末論に引きずられることでも、構造変化を無視することでもありません。フローの影響を冷静に理解しつつ、実証的に観察できる現実――企業の利益成長、質、そして銘柄ごとの値動きの違い――をよりどころに投資を続けることです。

 パッシブとアクティブ、フローとファンダメンタルズ。その両方を見据えたバランス感覚を持つことこそが、現在の市場環境で最も現実的な投資スタンスだと言えるでしょう。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。

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