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【米国株・グローバル投資入門:ポール・サイの10の視点】第3回 シリコンバレー銀行破綻事例で考える金融危機の「構造」の読み方。パニックにならないために

2026年4月15日公開
ポール・サイ
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すべての金融危機は似ているが、同じではない

 2023年春、アメリカでSVB(シリコンバレー銀行)が突然経営破綻しました。その週末、SNSには「リーマンショックの再来か」という投稿があふれ、日本の投資家の間にも動揺が広がりました。しかし、私の見方は違っていました。これは「リーマン型」の危機ではない、と。

[参考記事]
SVB破綻! リーマンショック級の危機はくるのか?こないのか? 危機の中にチャンスはある! こんな時はどんな銘柄を仕込むのがいい?
シアトル在住FIRE組が、SVB破綻の生情報を語り尽くす! 銀行株が長期投資に向かないワケは? 金利上昇が落ち着き、テクノロジー株が狙い目に!

 金融危機を分析するとき、私はまず「この危機の構造はどこから来ているか」を問います。

 リーマンショックは、サブプライムローンという「価値のない資産」をパッケージ化して世界中に売りさばいたことで生じた、システム全体への毒素の蔓延でした。

 一方、SVBで起こった問題は、いわゆる「取り付け騒ぎ(bank run)」です。急激な金利上昇によって同行が大量に保有する長期国債の価格が下がって含み損が拡大し、それを不安に思った一部の預金者が預金を引き出し始め、さらにその動きが急拡大していったのです。

 このSVBの取り付け騒ぎは、比較的「古典的な」銀行危機だったと言えます。

SVB(シリコンバレー銀行)公式サイト現在のSVB(シリコンバレー銀行)公式サイト。SVBは破綻後、連邦預金保険公社(FDIC)の管轄下に置かれ、最終的にはファースト・シチズンズ・バンクシェアーズに買収された

金融危機の際、必ず考えるべき3つの問いとは?

 私が金融危機に際して、必ず考える3つの問いがあります。

●第一に問題の「震源地」はどこか。1つの機関の問題か、システム全体の問題か。

●第二に「伝染経路」は何か。毒素はどのようにして広がりうるか。

●第三に「政策対応」の余地はあるか。規制当局や中央銀行が打てる手は残っているか。

 SVBの場合、震源地はベンチャーキャピタル依存の特殊な預金構造にありました。伝染経路は預金者の心理(取付け騒ぎ)であり、感染範囲は比較的限定的でした。

 アメリカ政府当局はすぐに全預金保護を宣言し、伝染を断ち切りました。これは「消火可能な火事」だったのです。

日本の地方銀行は「日本版SVBリスク」を抱えているが、SVBのケースとは異なる点もある

 SVBの教訓は、日本にも示唆を与えるところがあります。

 日本の地方銀行の多くは、低金利時代に利回りを求めて長期国債や外国債券を大量に保有しました。もしも金利が急上昇すれば、保有債券の含み損が膨らみます。これは「日本版SVBリスク」として警戒が必要です。

 ただし、日本の場合、伝染経路と政策余地は異なります。日銀の存在と、日本の預金者の「静かな」行動特性(パニックによる取付け騒ぎが起きにくい)は、リスクの性質を変える要因です。

 「同じ構造に見えても、条件が違えば結果は違う」というのが危機分析の鉄則です。

危機の際に問うべきこと、投資家として最も避けるべきこととは?

 危機に際して問うべきは「これは怖いか」ではなく、「この危機の構造はどこから来ているか、どこまで広がりうるか」ということです。

 投資家として最も避けるべきは、「危機」という言葉に反応してパニック売りをすることです。構造を理解すれば、危機はリスクではなく、チャンスになることさえあります。

 冷静に、しかしすばやく、構造を読む力を持つこと。それが長期投資家に求められる能力です。

◆読者への問いかけ:最近起きた金融ニュースを1つ選び、「震源地・伝染経路・政策余地」の3つの視点で分析してみてください。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。

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