3月10日にアメリカのシリコンバレー銀行(SVB)が破綻したあと、金融システムがかなり不安定になっています。このことに関する私の解釈と今後、私が想定している展開について今回は述べたいと思います。
物事は猛スピードで変化していますが、できる限り、起こっていることを理解するための考え方・フレームワークを紹介したいと思います。フレームワークを使ってニュースを解釈して、読者が自分で結論に辿り着けるようになってほしいという趣旨です。
[参考記事]
●シアトル在住FIRE組が、SVB破綻の生情報を語り尽くす! 銀行株が長期投資に向かないワケは?金利上昇が落ち着き、テクノロジー株が狙い目に!
金融危機はすべて似ているが、同じではない
金融危機はすべて似ています。ですが、同じであることはあまりないです。
今回もそうです。今回は金利上昇を背景に、流動性リスクが顕在化して起きた銀行危機と言えます。
そもそも銀行はどうやって稼いでいるのでしょうか?
銀行は預金を預かり、それを長期で貸し出します。預金者は預金をいつでも引き出せますが、みんなが一気にすぐ引き出すことは普通はないので、銀行は一部のお金を長期で貸し出しても大丈夫です。
大まかに言えば、貸し出し先は個人、企業、そして国です。個人と企業の場合、銀行は金利リスクと与信リスクを両方取ります。国については国債を購入するという形で銀行はお金を貸し出しています。財政状況が危うい新興国などでない一般的な国家ならば、国債購入で銀行が取るリスクは金利リスクだけになります。
銀行のもう1つの稼ぎ手は手数料になります。今回の銀行危機は手数料とは関係ありません。
どんな銀行でも、もしもみんなが一気に預金を引き出せば破綻する
今回はすべての預金者が一気に預金を引き出そうとしたから危機になりました。
なぜ、みんなはシリコンバレー銀行から一斉に預金を引き出そうとしたのでしょうか? それは銀行が金利リスクを取っており、金利が上がったので、保有している国債の価格が下がったからです。国債は途中で価格が下がったとしても、満期まで持ち続けていれば、元本と利子が返ってきます。だから、通常は問題ないのですが、預金者が一気に預金を引き出そうとすると、銀行は手元の現金が足りず、対応できなくなってしまいます。
結論としては、どんな銀行でも、もしもみんなが一気に預金を引き出せば破綻します。預金者みんなが一気に預金を引き出そうとするかどうかは人の心理の問題になるので、今回のような危機が起こることは事前には予想しづらいです。
そして、人間はパニックに陥るスピードは速いですが、落ち着くのには時間がかかるとも言えます。
欧州ではクレディ・スイスの問題も注目を集めていますが、こちらは前からの問題の続きであり、SVB破綻はそれとはまた別の問題です。
米国の当局・政府は預金者を安心させるためのいろいろな対策を打ち出しています。たとえば、SVBの場合、預金保険の上限である25万ドルを超えた部分についても預金全額を保護するということです。
ファースト・リパブリック銀行に対して行なわれたように、大手銀行に頼んで、危ういとされる地銀に大量の預金を預けてもらうのも1つの対策です。
しかし、まだ足りないです。パニックは完全には治まっていません。けれど、パニックはいつか治まるはずです。
こんな時、投資家はどうすればいいでしょうか?
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